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きゃーっ!神様御免なさい

 なのにおじいちゃん牧師様は、若牧師様の横に立っている。

おじいちゃん牧師様は、口をパクパクさせて若牧師様の方を指差した。

「話してごらん」て言ってるみたい。


「あのね若牧師様、あたしのおばあちゃんね……」


 話し出すと止まらなくなった。家出したダニエルおじさんの事、二十四年ものおばあちゃんのお祈りの事、おばあちゃんとした約束の事を必死に話した。

 若牧師様は黙って聞いてくれた。


「ねェ若牧師様、どうしておばあちゃんの祈りは神様に届かなかったの?」

 若牧師様はしばらく考えた後で言った。


「確かに神様は、正しくないお願いを退けることもある。僕がそうだったからね。

 でも、よく考えてごらん。

 アガサさんのお願いは

『ダニエルおじさんともう一度会えますように』

じゃなくて、

『おじさんが帰ってきておじいちゃんと仲直りをしてくれますように』

だったはずだ。

 それはアガサさんが亡くなっていたとしても、叶えてあげられる願いだよ」


「あ!」

 初めて気がついた。おばあちゃんは、祈りの中で

『ダニエルおじさんと、もう一度会いたい』

とは一度も言わなかったんだ。


「だって、初めおじさんはパパに『連絡をする』とは言ったけど、帰ってくるとは言わなかったよね。

 でも『おばあちゃんが倒れた』と聞いたら、実の息子なら心配であわてて帰ってくるはずだ。

 帰ってくるはずのなかった人が、帰ってくる気になった。

それこそ“奇跡”じゃないか。


 でも、何しろおじさんのいる遺跡は携帯の電波も届かないほどの奥地だろう? 

 伝言をもらって急いで出発して、遺跡から一番近くの空港に向かったとしても、モンゴルじゃ飛行機の便もそう多くない。

 乗り継ぎがうまくいったにしても、まだおじさんはこちらに向かっている途中なんだと思う。

 だから、おばあちゃんの祈りは神様に届いて、ちゃんと正しく動き出しているんだよ」


 あたしは開いた口が塞がらなかった。

だっておばあちゃんの祈りの正しい言葉も、モンゴルはとても遠い外国で、簡単に帰ってこれるところじゃないのも忘れていたのだ。 


「ど、どうしよう。あたし、神様に嘘つきの詐欺師って言っちゃった。

そのうえ一発殴らせろって。きゃー! ごめんなさい」


 真っ赤になって頭を抱えたあたしを見て、おじいちゃん牧師様は腹を抱えて笑ってる。幽霊って笑うんだ……。


 でもよかった、おばあちゃんの願いは叶うんだ。いや叶えるんだ、あたしが頑張んなきゃいけないんだ。 


 ――では手伝っておくれ。私が死者の願いを叶えるのを――


頭の中に響いたあの声は、本物の神様の声だったんだから。


 あれ? おじいちゃん牧師様ったら、今度は耳を引っ張って指差してる。

今度は聞けってこと? 幽霊って喋れないんだ、不便だなぁ。

 でも何を聞けばいいんだろう?


 そうしたらまた頭の中に声が響いた。


『神様は正しくないお願いを退けることもある。僕がそうだったからね』

さっきの若牧師様の言葉だ。


「若牧師様は正しくないお願いをしたことがあるの? どんなお願いだったの」


 あたしがそう聞くと、若牧師様は固まっちゃった。ビンゴ! 

そしてため息を一つ吐いた。


「これが祈りの答えか、今がその時なんだろう。アナ、よかったら僕の話を聞いてくれるかい」


 そう言って若牧師様は語りだした。


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