おやすみ。そしてまた明日
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
皆、疲れていると思うんですよ。
それでも身を脅かす程ではないから、愚痴とか不平不満で満ちてしまうと思うんですよ。
「おかえり、遅かったね」
その言葉が聞こえる度に、私はこの家に帰ってきたのだと実感する。おかしな事を言っている様な、いないような。兎にも角にも今の私に思考する様な脳領域は残されて居らず、ただ黙って頷く他なかった。
「お疲れかな?」
……どうなんだろう。ただ各駅で容赦なく電車が止まって、電波が全く入らなくて、苛苛していた事は覚えている。でもそれ以上の感情が何一つ沸かなくて、私はただ呆然と鉄の塊と向かい合っていた事は覚えている。
今日、何をしたっけ? どんな事があったけ? 何を願ったっけ? どんなに懸命に思い出そうとしても、モヤが掛かって思い出せない。
虚ろな私を気遣ってか、彼は徐に私の体を抱き寄せた。
「うーん……やっぱりお疲れか」
彼の言葉に何が返したいのに、声帯は死んだ様に、舌は乾いたように、音は枯れたように、何一つ言葉にならなかった。抱き締め返す事も出来なくて、ただされるがままになっていた。
帰ってきた彼女は、まるで人形の様だった。虚ろな瞳に光はなく、此方の声掛けにも応答しない。他の人が見たら、『なんて傲慢な』と怒りそうだが、何も出来ないのが今の彼女だった。
腕の中で大人しくなっていた彼女が僅かに身動ぎする。肩口に顔を埋めたかと思えば、そこから湿気った温度が流れ込んで来る。泣いているのだと思った。
「あのね。焦っちゃ駄目だよ。絶対に焦っちゃ駄目だ。明日君は、這ってでも会社に行くんだから。だからこれ以上今日の自分に何かを課すのは駄目だ」
そう言うと、漸く僕の背中に手が回る。其れから離れない様にと、強く強く服を握り締めた。
言葉にはしないし、出来ないけれど、それが彼女の肯定である事は分かった。おやすみ。また明日。明日はちゃんと、話せると良いね。
最近ね、SNSを見る度に思うんですよ。
みんな、みんな、死なない程度に苦しいって。
本当に死なないだけの程度に。
だから些細な言葉一つで争いになるし、炎上だってします。
昔はもっと誰かに寄り添う為にあったはずなのに。
そう思うと、苦しくて、この話になりました。
皆が皆、彼の様な人を求めているんだと思います。
何も出来なくても、何もしなくても、『今は休んで良いんだよ』って言ってくれる人を求めてるんだと思います。
だからこのタイトル。
『おやすみ。そしてまた明日』
私は昼職なので、眠りにつくまでの間は自分で自分を補う事が出来ます。
明日何があるか分からないけど、話せる事が出来るくらい元気だと良いね。という意味を込めて。
話せるってそれだけ元気な証拠なので。