第6話
「あのな、サーニャ」
俺は佇まいを直して、冷静を装って告げる。
「うわっ、さっきまでお風呂にいたのに! そしていつの間にかバスタオルを身に着けてる! というかエニシ君もう服着てるし!?」
「今は細かいことはどうでもいい。さっき部屋に戻ったはずだろ? それともお前は俺のストーカーなのか?」
「失敬な! 部屋のことで聞きたいことがあるから戻ってきたんだよ! そしたらちょうどエニシ君がお風呂に入ろうとしてたから」
「それで俺の後を付けて風呂場に入ってきたのか? 妖精族には羞恥心ってものがないのか?」
「あるよ!」
元気良いお返事だ。だからといって罪が許される訳ではないが。
「でも、急いでたしエニシ君の助けになることだったら何でもしてあげたかったから……。キミが望むのなら今からもう一度お風呂に入ってあげても良いし」
「結構だ!」
おお神よ。異世界の人とはこんなにも価値観が合わないものなのですか。冷静に考えたらあの女神もなんだかんだ適当そうな雰囲気があったし、もしかするとこの世界の住民みんながこの少女と同じような価値観を持ってたりするのか?
ほかに妙なスキルを持ってないかチェックしとこう。
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名前:サーニャ・パンヤ
年齢:20歳
レベル:5
種族:妖精族
職業:郵便屋、巫女
体力:2 魔力:15 筋力:3 素早さ:40 防御:1 知力:40 幸運:100
スキル
縄抜け
祈祷術
交渉術
ユニークスキル
肉体改造
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ふむ、このユニークスキル肉体改造っていうので、さっき身体の大きさを変化させてたんだな。職業・巫女は気になるがこれは追々聞いてみるとするか。
俺はサーニャに向き直り、告げる。
「……今後、無理に恩を返すようなことは禁止だ。俺が大家でサーニャはその住民、それ以上でも以下でもない関係だ。現状、困ってることも俺には……ない……わけ……だし?」
「あ、その顔は何か心当たりがある時の顔だ。あるんだろう? お困りなことが!」
そりゃないと言えば嘘になる。明日からの生活を考えると当面の金を稼いだりだとか住民の募集を行う必要がある。
果たしてそれを自分一人でこなすことが出来るのか、この右も左も分からない異世界で。
「なあサーニャはこの町の事については詳しかったりするのか?」
「キミよりはね。ボクだってここの住民だからさ、どんな人が住んでいてどんなお仕事があるか、どこに人が集まるのかくらいは知っているよ。……友達はいないけど」
と、そこまで答えたところで、俺の言わんとしていることが分かったらしく、にやり、彼女は笑顔を見せた。
「あはは、やっぱり必要みたいだねえボクの力が」
「いや、やっぱりだめだ。大家が入居者の力を借りるなんておかしい」
「それってエニシ君のいた世界での話だろう? それにボクは友人としてキミのお手伝いをしてあげたいんだよ」
友人か。悪くない響きだ。
「……まあ無理のない範囲で手伝って貰えると嬉しい」
「やった!」
喜びの声をあげると共にサーニャが俺に抱きついてくる。もちろんバスタオル姿のままだ! うおおおおおおおおおおお柔肌の感触が!
「と、とりあえず離れて服を着てくれ~!」
色々あった結果、今後についての詳しい話はまた明日するということで、今夜はお開きとなった。
そしてこれが俺の長いようで短い、短いようで長い異世界生活の記念すべき一日目の夜の出来事であった。




