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第20魔:究極

「な、なんで、師匠が……」

「ウェッフェッフェッ、今から1年位前かねぇ? どうやって調べたのか、このばあさんがある日突然ワタシの前に現れたのさぁ」


 お前のほうが師匠よりよっぽどババァだろうがッ!

 ……いや、そんなことよりも、1年前だと?

 それって師匠がアタシを置いて旅に出たのと同じ頃……。

 ……そういうことか。

 師匠は何かしらの方法で【酷屍夢想(デッドチート)】の居場所を突き止め、一人で討伐に向かったんだ。

 だが、万が一返り討ちに遭っちまった時アタシに心配をかけないために、旅に出るなんて噓をついたってことか……。

 ――とはいえ。


「……とても師匠がテメェに負けるとは思えねぇ。こう言っちゃなんだが、師匠はアタシよりもよっぽど強かったんだぞ」

「ウェッフェッフェッ、確かにねぇ。流石は【無限の魔女】と呼ばれていただけはあるよぉ。その文字通りの無限の魔力には、危うくワタシもあと一歩のところまで追い詰められたものさぁ」


 ……じゃあ、なんで。


「だがそこで役に立ったのが、お嬢さんの母親ってワケさぁ!」

「――!」


 母さんが!?

 ま、まさか――!!


「お嬢さんの母親がお嬢さんを逃がす際、『師匠のところにあなたを送る』って言ってたのを咄嗟に思い出してねぇ。試しに目の前にお嬢さんの母親を立たせてみたら、目に見えて狼狽えたから、その隙に腹を貫いてやったのさぁ! いやぁ、あの時の【無限の魔女】の苦渋に満ちた顔も、何度思い出しても笑っちまうねぇ、ウェッフェッフェッ!! お前もそう思うだろぉ、ウォーレンッ!?」


 醜悪ババァはまたボンクラ王子をビンタした。


「ありがとうございます、【酷屍夢想(デッドチート)】様!」


 ……もうそのネタは飽きたよ。


「……本当にアタシは、アンタの師匠として情けないよ、マリィ」

「……師匠」


 師匠は拳をギュッと握り、奥歯を嚙み締めながら眉間に皺を寄せる。


「そんなこと言わないでくれよ師匠。つまり醜悪ババァは、卑怯な手を使わなきゃ師匠には勝てなかったって認めたようなもんなんだぜ? 師匠は実力じゃ、醜悪ババァに圧勝してたんだ。――それでこそ、アタシが尊敬する師匠だよ」

「……マリィ」

「ウェッフェッフェッ、何とでも言うがいいさぁ。この世は所詮、結果だけが全てなんだからねぇ」


 まあな。

 悔しいが、その点だけはテメェに同感だ。


「つーわけだからさ。師匠の尻拭いは、愛弟子であるアタシがやっとくから、心配すんなよ!」

「……ふふふ、あの泣き虫だったひよっこが、頼もしくなったねぇ」


 なっ!?

 いつの話してんだよ、師匠!


「……いや、残念だけどマリィ、事はそう簡単にはいかなそうだよ」

「え?」


 ルギウス?


「ウェッフェッフェッ、【金色(こんじき)の奸雄】くんはよく状況がわかってるねぇ。本物の聖女と【無限の魔女】がワタシの支配下にあるってことが、どんなことかわかってるのかぁい?」

「――!!」


 ――あっ!


「つまりアタシは聖女と【無限の魔女】の魔力を自在に操れる、究極の存在になったってことさぁ! 見せてあげるよぉ! その究極の力の顕現をねぇ!」

「「「――!!」」」


 醜悪ババァがパチンと指を鳴らすと、辺り一面を覆い尽くすほどの、夥しい数の歩屍(ゾンビ)が這い出て来た。

 その歩屍(ゾンビ)たちは醜悪ババァの身体に集まり、聖女メルアや師匠、それにボンクラ王子や宰相のオッサンたちも巻き込みながら、まるで一人の巨人みたいな姿形になり、アタシたちの前にそびえ立った。

 その巨人は左右に三本ずつ腕があり、背中にも三対の翼のようなものが生えていた――。


「ウェッフェッフェッ、これこそがワタシの真の姿、【惰輾屍(デッドリールシフェル)】さぁ!」


 巨人の額の位置に上半身だけが生えている醜悪ババァが、いやらしく嗤った。



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