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想いは雪よりも白く  作者: 椎名美雪
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第四話

 「キャー! 片山先輩!!」


 練習着姿で出てきた片山に、大きな歓声が上がる。他の部員、監督も慣れたものだが、頭の天辺から突き抜けるような、何度耳にしてもすごい声だ。


 「あれ?」


 軽くドリブルをしながら、大きく開いた体育館口に目を向けていた。漏らした呟きに、片山と同じ2年生でクラスメイトの高野が声を掛ける。


 「どうした?」

 「んー、いや、さっきの子がさ……」

 「さっきの?」


 高野も一緒に同じ方に目を向けるが、見慣れた常連の女子の顔ばかりで、目新しい子は誰もいない。


 「いや。何でもないよ」


 見た事のない顔だったから、何となく気になっているのだろう。


 「速攻行くぞ!」


 瞬時に切り替え、高野にパス。流れるような速攻で、あっという間にゴールを決める。片山が動くたびに黄色い悲鳴。日常の光景に戻っていた。



 学校帰りに、そのまま行っていたアルバイトを終えて帰宅。首を回して疲れを取る。


 「お父さん、お母さん、ただいま」


 両親の位牌と写真が置かれている、チェストの上の小さな手作りの仏壇に手を合わせた。

 そういえば、大家が今日改めて来るとか言っていた。もう来てしまったのか、これから来るのか。どちらにせよ、美緒には気が重いことには違いない。


 この部屋を追い出されたら、施設に入る以外は無いのだろう。父方の親戚とは絶縁状態だし、母には姉が一人いるけれど、葬儀やお墓のことでお世話になったばかりで、これ以上迷惑はかけられないし…。

 その時、電話が鳴った。


 (どうしよう……)


 大家さんに決まっている。本当は、電話に出たくない。また怒鳴られるかもしれない怖さがこみ上げる。


 「はい。川村です」


 緊張しながら上げた受話器の向こうの声は、やはり大家さん。相変わらずの、不機嫌な声だった。何を言われても覚悟の上で、大家の話に耳を傾けるが――。


 「……えっ? いえ、でも―――」


 大家の言っている言葉が理解出来ない。「だから」と、同じ言葉を繰り返す声に美緒は呆然としていた。

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