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想いは雪よりも白く  作者: 椎名美雪
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第十九話

 グイ!

 牧村の顔が急接近。視線が重なると同時に、二人の唇が触れ合う。触れるだけから、2人の想いを確かめるような熱いキスに変わる。 


 美緒にとっては、初めてのキスなのだ。以前、大学で“彼氏のような存在の人”が出来たが、彼女にとっては最後まで“男友達”でしかなかった。だから、今のこの状況が、唇が離れた後も、恥ずかしくて……。


 牧村は、美緒が愛しくてたまらずに、胸へと引き寄せる。一度だけ抱きしめたあの頃のように、強く閉じ込めた。

 安心する彼の腕の中で、目を閉じる。シャツ一枚を隔てた、牧村の鼓動を確かめるように、そっと凭れている。


「美緒ちゃんが頷いてくれるなら、もう一度、父に会わせたい。母と、真也にも。そして、君のご両親のお墓へ行こう」

「――! そんなこと、出来ない。私は、真一さんのお父さんに、嫌われているもの」

「以前はそうでも、今は違うよ。美緒ちゃんに辛く当たったことを後悔している。小切手、送りつけたんだろう? 『金に目がくらまない、大した子だ』って笑っていたよ」


 この笑顔だ。いつも、不安を和らげてくれる不思議な力を持つ、優しい笑顔。

 信じても、大丈夫だろうか。また急に会えなくなるなんて、嫌だから。


「また真一さんの近くにいられるの?」

「勿論さ」


 美緒を真っ直ぐに見つめる真剣な眼差し。彼がどれだけ自分を強く思っていてくれるのかが伝わってくる。


「3年前の俺は、高校生の女の子さえ守れなかった。でも、今は違う」


 暖かい手のひらが、美緒の頬に触れる。


 ――と。


 丁度、目に付いたと言うべきか、牧村の視界に、キラキラと輝く何かが映った。動かした視線の先には、やや大きめのスノードーム。もみの木とログハウス風の小屋を包むように白く輝く粒子が舞っている。


「……あれ、綺麗だね」


 ちょっぴり良いムードだったところに、変化球。彼の目に留まったスノードームは、自動で動く仕掛けの電池式だった。あまりそういう物に触れてこなかったせいか、物珍しくて、つい話題に出してしまった。


 でも、これも美緒の好きなものに通じているのだろう。どんなに些細な事でも、彼女について知りたい。友達から、旅行のお土産に貰った物というが、初めて聞く事ばかりだった。


「私、雪とか、白い世界が好きなの。オーロラとか、とても憧れてて……」

「オーロラ?」

「うん。ずっと憧れているの。見渡す限りの銀世界に、空は七色に輝くオーロラだなんて、本当に素敵だろうな、って」


 瞳の輝きは、たった今思いついたものではないようだ。


「父と母はね、結婚した頃に釧路で流氷を見たんだって」

「そうか。北海道でも、条件が揃えばオーロラが見えるらしいね」

「そうなの!?」

「もしかしたら、ご両親の頭上にもオーロラが輝いていたかもしれない」


 なんてロマンティックなのだろう。

 そんな柄でもないのだが、美緒はその美しい光景に想いを馳せる。


「じゃあ、決まりだな。新婚旅行は、フィンランドに行こう」

「……新婚――?!」

「そのつもりで、君を迎えに来たんだから」


 コクリと、恥ずかしそうに頷いた。


 今でも、牧村には不釣り合いでは――と思う気持ちは消えないけれど、彼のためなら、きっと頑張れる。


「君を、愛している」

「ホントに、本当に、あなたを愛してもいいの?」

「ああ。もう二度と、寂しい思いはさせないから。俺だけの傍にいて欲しい」

「ずっと、私の傍にいて。離さないでね」


 再び重なり合うふたつの陰が、離れることはなかった。



〈 お わ り 〉

 最後までお読みくださり、ありがとうございます。

 この作品は、処女作でして……。本当は、なんとなくメモに書きなぐるようにしていた物を、どうにか纏めて仕上げてみました。


 内容もベタというか、稚拙でお恥ずかしい作品ですが、折角書いたのですし、良い機会だと思い公開をしました。


 読後の感想や評価を頂けると、励みになります。

 お時間がありましたら、ぜひお願いいたします。


椎名美雪

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