冒険者ギルドにて2
「この【剣姫】ってすごいんですか?」
ナディアが僕に聞く。僕は頷いた。
「力の【剣聖】、技の【剣姫】と名高いものだ。剣士なら喉から手が出るほど欲しい固有スキルだな。大切に育てていきなよ」
「……そうなのですね。レーンさんがそういうなら、大切に育ててみます!」
少し心配そうだったが、ナディアはコクリと頷く。
続いて、パーティ申請をしようとしたときだった。
背の高い男と筋肉質な男が、僕を押し退けるようにしてナディアへ近付く。
「お嬢ちゃん、【剣姫】なんだって? 俺たちのパーティに入らないか?」
「こんな、勇者パーティの元荷物持ちとパーティを組むことはないぜ!」
「ちげーよ、バカ。勇者パーティのお荷物だろ? ギャハハ」
二人は僕を馬鹿にして笑う。
「はぁ?」
ナディアはとても不快そうな顔をし、温度の低い声色で男たちに返す。
「なぁ、いいだろ? 飯を奢ってやるから行こうぜ!」
「ほらほら! こんな足でまといなんて早く見切っちゃいなよ」
二人はナディアの肩に手をまわすと、僕に背を向けて酒場の方へ行こうとした。
「おい、嫌がってるだろ、やめろ」
僕は筋肉質の男の肩に手を乗せて、行動を静止する。背の高い男が舌打ちをした。
「黙れよ、お荷物が。俺は前から気に入らなかったんだ! 荷物持ちの分際で、勇者パーティを名乗りやがって!」
「そうそう。勇者パーティの後ろ盾が無くなりゃ、テメェなんて俺の拳で一発だ!」
筋肉質の男は、僕の手を払うと同時に振り返り、握りこんだ拳の大ぶりな一発を、僕に向けて放つ。ぶお! っと風切り音をたて、拳は僕の顔面近くをとおりすぎた。
ーーどす!
がら空きになった筋肉質の男のわき腹へ、僕はカウンターの一発をお見舞いする。筋肉質の男は「ぐぇ」と面白い声を漏らしうずくまる。
「テメェ! なにすんだ!」
「おいおい、一発でダウンかよ……。その筋肉は見せかけか?」
僕はにっこりと笑い、背の高い男を挑発する。背の高い男は腰に帯びている剣を抜こうとするが、それより早く、僕の拳が背の高い男の顎にヒットした。
背の高い男は、すとんと腰を抜かし、転んだ。
「勇者パーティのお荷物だったけど、お前らにナメられるほど……僕は弱くないんだ。まだやるかい?」
僕は腹ばいになった背の高い男の腹に、足を乗せつつ尋ねた。
「ひ、ヒィィィ……」
「覚えてろ!」
二人は悔しさと羞恥に顔を歪め、捨て台詞を残してギルドから出て行ってしまった。
僕は手を叩きため息つく。
「あ……騒がしくしてすみません」
僕は一部始終を黙って見ていたオリガさんに頭を下げた。
「いえ。実力を勘違いしている冒険者はすぐに亡くなってしまうので、ちょうどよい教育になりました。ありがとうございます。……では、パーティ脱退と新パーティ結成の申請用紙に記入お願いします」
オリガさんはニコリと笑った。さすが、弱肉強食を旨とする冒険者ギルドの受付嬢だ。暴力沙汰が起きても平然としている。
「あ、あのレーンさん」
ナディアが声をかける。
「うん?」
「ありがとうございます! 本当にレーンさんはかっこういいですね! 尊敬しちゃいます」
ナディアは目を輝かせて言った。尊敬のまなざしが眩しい!
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