ハズレスキル【重力】3
ワイバーンの巣がある森まで行って助けるという方法があるも、ワイバーンが群れをなしていればナディアが啄まれ、ボロ雑巾のようにされてしまうだろう。
ということは、巣がある森の中へ入る前に、なんとかしてワイバーンの首をはねたい。
僕にある武器はなんだ? 剣、肉体強化の支援魔法、近距離特化の攻撃魔法……そしてスキル【重力】。
どれも、遠距離の敵には効果が薄い。どうやって、空を飛ぶワイバーンの首をはねればいい?
……はは。わかってる。わかっているんだ。ナディアが言っていたじゃないか。
やってみるしかないよなぁ。失敗したら空のお星様だぜ? ウケる。
「支援魔法、身体強化!」
僕は自分に支援魔法をかけて肉体を強化する。しかし、この支援魔法を使ってジャンプしても、空中高く飛び上がってしまったワイバーンには届かない。
だから……。
手のひらを自分の胸に押し当て、スキル【重力】の対象を選択する。つまり、自分にスキル【重力】の効果を及ぼす。
「アンチ・グラビティ・レベルゼロ」
スキル【重力】の詠唱をした。
体が感じていた重力というものが、徐々になくなって行く。体が軽い。
僕は飛び去るワイバーンへ狙いを定め、地面を蹴った。
ズオ!!
信じられないスピードだった。昔見た大砲の弾のように僕はワイバーンへと一直線に飛んで行く。
空気の壁をぶち破り、音よりも速い速度だったのだろう。
ただ、このまま行くと軽くなっている僕はワイバーンにぶつかった瞬間に当たり負けをして、跳ね返ってしまうはず。
それじゃナディアは助けられない!
だから、僕は初めて自分に荷重の重力操作をすることにした。
僕のスキルが【重力】なら、逆に重くすることだって可能なはず!
アンチの反対は……プロ……か?
「ぐぐぐぅ……プロ・グラビティ・レベルセブン」
今まで感じなかった重力が全身を覆う。剣が、毎日振って手足の延長線上にあった剣が異常に重たく感じる。いや、実際重たくなっているのか?
ええい、細かいことは気にすんな!
「い、いい今はナディアを助けるんだ! 上がれぇええええ!」
僕は剣を振り上げて、ワイバーンの首めがけて振り下ろした。
ズブ!
凶悪な高質量となった剣は、ワイバーンの硬い皮膚をあっさり切り裂き、骨を断ち割り、首と胴体を切り分けた。
僕はすれ違いざまに、重力を失っているナディアへ、スキル【重力】で重さを与えた。
ここまでは計算どおりだ。
ただ、着地のことをいっさい考えていなかった僕は空中でバランスを崩して、派手に地面に激突したのだった。身体強化の支援魔法をかけていなかったら、肉体は激突の衝撃に耐えられずおそらくは四散していただろう。
「ナディア!」
僕はすぐに起き上がり、首から上を失い、きりもみ状に落下したナディアの元に駆けて行く。
「はぁ、はぁ……無事かい? ナディア」
「は、はい……。無事です。死ぬかと……思いました……」
ナディアは恐怖ですっかり腰が抜けて、へたり込んでいる。
「よかった。本当によかった」
「本当に、本当に……助かりました。レーンさん、格好良かったです。ありがとうございます……」
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