設定2
よろしくお願いします。
「パジャマで来ちゃった」
歩道沿いの店の鏡に映る、パジャマ姿の少女はこっちを見ながらそう言った。
俺はしばし固まってしまった。とんでもなく綺麗な彼女の容姿もそうだが、大勢の人の中に紛れ込んだパジャマ姿で学校のバッグを背負った異様な光景に。
「こんにちは。私は如月アリア、よろしく」
パジャマ姿のアリアさんは無表情のまま握手を求めてきた。これがドレスや高価な服なら豪邸のお嬢様に見えるが、アリアさんは今パジャマである。違和感がとんでもない。そして多分、この子が朝父さんが言ってた子だろう。俺の名前を知ってるのは、父さんが教えたんだろう。俺は緊張しながらも手をとった。
「ど、どうも。ゆうめです。よろしくアリアさん」
「……」
なんかアリアさんが静かにこっちを見てくる。顔になんかついてるかな。やっぱり綺麗な顔してんなぁ。なんて思いながら互いに見つめ合う事数十秒、アリアさんがついに口をひらいた。
「……どうしよう話すことがないわ」
そんなことかーい。っと手を振り上げてツッコミたくなったが、そこでいまだに手を繋いだままな事に気づいた。慌てて手を離す。
「ご、ごめん!」
アリアさんもずっと手を繋いだままだった事に気づき、手を離した。ちょっと顔が赤くなってる。この子照れれたのか!テレ顔はめっちゃかわいかった。真っ白な肌なのでてれてるのが丸わかりである。かわいい。
「ゆうめも今から学校だよね?一緒に行こ?」
いきなり呼び捨てである。俺は一応さん付けのままにしとこうと思う。アリアさんは如月家のお嬢様だからね。
「そうだよ。じゃ、一緒に行こっか。アリアさん」
「うん」
と言ってアリアさんが隣に来た。背が高い方ではないアリアさん。動きがちょこちょこしててかわいい。しかし、そこで俺は重大なことに気づいた。忘れそうになってたが、アリアさん、パジャマである!
「ちょ、まってアリアさん!パジャマで高校デビューはまずいよ!」
なんで?って思ってそうな顔でこちらを見上げてくる。
「なんで?」
言葉に出てた。
「高校は制服着てかなきゃいけないんだよ」
「……パジャマあったかかったのに」
すごい残念そうな顔してるアリアさん。ていうか、ほんとに学校についてなにも知らないようだ。するとアリアさんがバッグの中を漁り出した。中から制服が出てきた。あるならなぜ着なかったんだ……。
アリアさんは、着替えてくる、と言ってトイレに向かって行った。人だかりの中を水色のもっこもっこなパジャマで背中に黒いバッグを背負いながら行くアリアさんの後ろ姿は、めっちゃめだっていた。
「ただいま」
後ろから声がして振り向くと、制服姿のアリアさんがいた。アリアさん、制服も似合う。かわいい。
「行こう?」
袖を引っ張られた。うーん小動物感!かわいい。
「うん。行こっか」
やっと学校に向かって歩き出したのだった。
どんどん周りに同じ制服を着た人たちが増えてきた。自転車でくる人、車で来る人、俺らと同じで歩いてくる人。たくさんいる。てか高級車が多い。車には詳しくないが、明らかに普通じゃない真っ黒のやつとか、めっちゃ長いやつとか乗ってる。帝王高校すげぇな。
歩いて20分くらいで学校に着いた。でっかい。建物のはじが見えない。どんだけ広いんだよ。
「おっきい」
アリアさんも同じ感想のようだ。
しかし、なぜか視線を感じる。なんでだ?ああ、アリアさんがかわいいからか。そりゃ見たくなるよな。こんなかわいい子がいたら。俺は横のアリアさんを見る。美しい銀髪、ちっちゃくて綺麗な顔、白い肌、ちっちゃめなお胸、そしてスカートから覗くふとも、も?俺の目がアリアさんの足に釘付けになる。アリアさん、制服の下にパジャマのズボンを履いていらっしゃる!なぜ気づかなかった!
「ちょいちょいちょい!アリアさん!?こっち、とりあえずこっちきて!」
「?」
何もわかっていないようなアリアさんの手を引いて、いったん誰もいない建物の裏に避難する。
「どうしたの?」
アリアさんが聞いてくる。
「なんでパジャマの下履いてんの!?」
「あ、脱ぎわすれてた」
うそやーん。こんなもっこもっこなのに忘れるか普通?
「暖かくて最後に脱ごうと思ってたら、忘れてたわ」
なんやこの子あほかわいいな!
「とりあえず脱がなきゃ!アリアさん脱いで!」
え〜。って顔してる。
「え〜」
やっぱり声に出てんだよなぁ。かわいい。しかしパジャマはぬがなきゃ学校には入れない。ぜんぜん脱ごうとしないアリアさん。
「ああもう、俺が脱がせるから!」
この高校は制服の下に体操服の着用が許可されているため、パジャマを脱がしても下は短パンを履いてるはずだ。短パンがあるとはいえズボンを俺が脱がして言い訳ではないが、本人が脱ごうとしないのだから仕方ない。
「あ、待って…」
時間もないのでパジャマのズボンを下に下ろす。手が引っかかってスカートが捲れ上がる。大丈夫短パンがある。と思ったのだが
「…あ」
しかし、短パンはなかった。
めくれたスカートの下から、アリアさんの白いぱんつがコンニチワ。水色のリボンが真中についた白いぱんつだった。アリアさん、水色が好きなのかぁ。現実逃避気味にそんなことを考えてると、バッ!とアリアさんがスカートを押さえた。顔が赤い。そりゃあね。俺に見られちゃったからね。ほんとにごめんなさい。許てぇ。
「………エッチ」
赤い顔で言うアリアさんのこの一言が心に刺さった。ゴッファ!!
「ごごごごごごごごめんなさいぃぃ!」
土下座した。地面に顔の形ができるくらい思いっきり。風でめくれて偶然なら、見てませんよ?ですむが、今回は自分で見にいったようなものである。白いぱんつは頭の中に焼き付いてしまった。きっともう忘れる事もないだろう。
ありがとう。アリアさん。
全力で謝りまくり、許してもらえた。アリアさんが優しくって良かった。ホッ。
しかし、このような事は二度と起きないようにしようと心に誓うゆうめであった。そして、今度こそ2人は学校に向かうのだった。
ちなみに怒って頬を膨らませるアリアさんもかわいかった。
ゆうめはかわいいって何回言ったかな?