アパートから洞窟へ
こんにちは、シバです。本作品を読んでくださりありがとうございます!所々失踪しますが、続く限り面白いと思ってくださるならば良ければ読んでください!
意識が飛びそうな中、片手にブリーフケース、もう片手によれよれのジャケットを持ちながら俺は真っ暗な夜道をとぼとぼと歩く。当たり前ながら、既にあたりは静まっている。
「あのクソ上司…いつか絶対呪う。」
普段から俺や同僚達はあのハゲにはパワハラされているが、今日は特に酷かった。自分の確認不足で起こした発注ミス、その後始末を全部部下の俺たちに押しかけて定時上がりしやがって。勿論その場で帰るのもありだったが、この失敗を放っておいたら会社が倒産する未来が手に取るように見えた。故に朝四時まで特大残業サービスをするはめに。
おぼつかない足取りでしばらく歩いていると、いつの間にか見慣れた扉の前に立っていた。半分無意識にポケットから鍵を取り出し、少し苦戦しながらも扉を開ける。ブリーフケースとジャケットは玄関に放り出し、台所の流しに溜まっている食器には目をくれず、暗闇の中居間に敷いてある布団に倒れこむ。
「疲れた…」
ポツリと一言呟くと、俺の意識は遠のいていった。
どれくらいの時間が経ったのだろうか、目が覚めると周りは真っ暗だった。
「…まさか丸一日寝てたのか?」
そこでおかしなことに気がつく、下に敷いてあった筈の布団がない。それどころか、床は土で出来ているかのように感じる。というか土だった。
「え?」
あるはずの布団、ないはずの土、そして明かりが全くない。何この状況としか言えない。心拍数が徐々に上がるに連れ、息がしづらくなってくる。パニックに陥らないように深呼吸をし、自分を宥めようとするが、手の震えやうるさく鳴る心臓音は落ち着かない。四つん這いになり、携帯を探そうと必死に暗闇の中を手触りで探すが、全く見つからない。近くに散らばってあったはずの空き缶も無く、ここが自分の部屋の中ではないことはもう否定できない事実だ。
「待て、待て、落ち着け。大丈夫だ、どうせなんかのドッキリだろ?おーい!誰かー!」
ドッキリだと思うと少しだけ落ち着き、助けを呼ぶが返事がこない。というより、妙に声が響いている。まるで洞窟の中にいるかのように。
「にしてもドッキリにしちゃ性根が悪すぎるぞ、しかも一般人に。絶対後でクレーム入れてやる。」
そう決心し、ゆっくりと立ち上がり、両手を前に出しながら歩き始める。すると、冷たい岩のようなものに手が触れ、ビクッとしながらも少さな安心感を覚える。
「この壁を伝って行ったらいずれ出口に着くよな。」
不安さを抱えながらも、俺は早足で先にあるはずの出口へと向かう。




