〝狂気〟と〝狂器〟
…ハァ、ハァ、ハァ、、
くそが。
……ハァ、ハァ、
弾丸によって穴が空いた左手を押さえながら
全速力で走った。
……流石に、ここまでなら…
荒廃した街の更に荒れた裏路地へと
逃げ帰り、打たれたように腰を下ろした。
…チッ
盗られたもの盗り返して何が悪いんだよ。
自分のご都合最優先の絶対王政政府は
相変わらずクソだな。
「よし、そろそろ」
穴の空いてない方の手で
先程盗り返したものに手をつけた。
「ああ、これだよこれ…!」
まだ使ってもないのに興奮が抑えられねぇ
ああ、はやくはやくはやくはやく…!!
その時、不協和音が辺りに響いた。
「…あ?」
嘘だろおい
「逃さねぇぞ、暴走泥棒」
そこには手…とゆうか本来手がある部分に
緑の雷を放電している大砲のような鉄塊がある
放電された緑の雷は時間と共に荒ぶっていく。
「いやさ、これは元々俺のなんだよな」
フン、と鼻を鳴らし綺麗な金髪のイキリ野郎が
俺を嘲笑った。クソが、金髪に泥を塗るぞ
「それがお前のものだったなんて関係ねぇ。
大体、それは今や大問題の〝狂器〟。
爆弾と同じ。いや、それ以上に警戒されてる違法器具だぞ? お前のものだったのならそれはそれで処罰対象だよ」
「あー、はいはい文字数が多い。」
頭をかきながら飽きたように言った。
「抵抗しないでくれ、はっきり言ってだるい」
「あ?勝った気か?
お前も言った通り、これは〝狂器〟だぞ?」
俺はそう言い、〝狂器〟を起動した。
「ああ、お前のそれを使うとどれだけ強いか、知りたかったからな。確か、〝聞いている音楽によって能力が付与される狂気〟だったか?」
すぐさま、伸びているイヤホンを耳につけ、
スピードコアの曲を再生した。bpmは180。
「あ、ああ…」
「どうした、体が動かんか?
〝狂器〟を使うにはそれなりの器じゃないと
ただの拷問となるぞ?」
「あ、あああ…」
たまんねぇ…
体全身が歓喜により細胞一つ一つが躍る感覚…
血液の流れが極端に早くなり、アドレナリンが
噴水のように出てくる感覚…
穴の空いた左手の痛みはもうない
耳から摂取する薬物。
「は、ははは…」
「ハハハハハ!
これだよこれ!もう我慢できねぇ!
どっからでもかかってこいクソ金髪!」
「そう、なら」
溜まりに溜まった緑の雷が俺を的として発射される。大体200kmか。今の状態なら蝶が止まるくらい遅い。だが
「イヤッッッハー!!!」
緑の雷を飛び蹴りで消す。
痛い。だが
「hooooooo!」
今やそんなん関係ないわ。
ああ、たのしい
「チッ」
金髪は右手もどきからビームのように
雷を放電する。
「きかねぇきかねぇ!」
電流を浴びながら、
まるで川の流れを逆らう鯉のように
走り抜ける。鯉と違うのはその速さ。
瞬きした次には俺が目の前にいる。
「オラァ!」
耳から流れる曲のbpmに合わせて、
金髪のイケメン顔をボコボコにする。
「ヒャッハー!
あとは逃げるぜさながらサスケ。
伸びてるお前は待ちぼうけ!」
上手くない韻を踏み、bpmを聴きながら
風のように走る。
裏路地を抜け、窓ガラスは割れ埃、人はいない。
そんな街を駆け抜ける。
「流石だな、〝狂器〟の使い手」
声が聞こえてきたすぐに
空から何かが頭上へと落ちてきた。
間一髪避けることができたが、当たっていたら死んでたぜ、あぶねい。
「…いや、マジか?」
今、何か落とされたと思っていたが、
違った。
「自分で落ちてきたのか?」
俺が先程までいた場所に
金属でできた服のようなものを着た人間がいた。
「ふうむ、避けたか。雷少年も倒したしやはりなかなか強いな」
ヘルメット越しから声が聞こえる。
「…よし。」
少し間が空いてからヘルメットを取ったスーツ野郎が少し微笑んでから
「お前、我が軍に入らないか?」