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ゾンビになったと追放された俺は人類を救えるかもしれないけど人類は救いようがない  作者: しゃぼてん
6章 終焉前夜の無法地帯

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61 ペッポー君、がんばる

 俺はもごもごと、俺に話しかけてきたペッポー君に返事をした。


「できたら、あのチンピラ男達を倒して、結生を、女の子を、探したいんだけど。でも、ペッポー君には無理だから気にしないで……」


「ボク、がんばるよ」


 ペッポー君は前向きに言って、がんばるポーズをとった。

 こんな状況だけど、ペッポー君のがんばるポーズで俺の心は癒された。

 ペッポー君が俺の言ったことを理解しているとは思えないけど、そこがまた癒しポイントだ。


「ペッポー君。ありがとう。でも、ペッポー君は受付に戻って……」


 俺がそう言っている間に、ペッポー君はボールラックに近づき、ボウリングのボールを取り出した。


「ペッポー君? ボウリングするの?」


 ペッポー君はサッカーのスローイングのように、ボールを頭上に持ち上げて、ぽーんと投げた。

「えーい!」というかわいい掛け声とともに。


(ペッポー君、意外と力持ち!)


 感心しながら見ていると、大砲の砲弾のように飛んでいったボウリングのボールは、拳銃を拾おうとしていた金髪蛇タトゥー男の頭にぶつかった。

 たぶん、5キロはあるボールの直撃を受け、男は床に崩れ落ちた。


(ペッポー君!? 本当にがんばっちゃった!)


「なにが起こったんだ?」

「ボウリングボール? マルパンの奴か!?」


 チンピラ達がざわつく一方、俺の横でペッポー君はうれしそうに両手をあげて跳びはねていた。


「ストラーイク!」


 かわいいけど、ペッポー君はちょっと、だけじゃなく、ボウリングのルールを間違えている気がする。

 俺はボウリングをやったことがないけど、こういうゲームじゃないはず……。


「すごい! ……けど。ペッポー君って、こういうロボット? 癒し系コミュニケーションロボットのはずだよな……」


 俺の疑問には誰も答えず、ペッポー君はラックから次のボールを取り出そうとしている。

 突然、俺の後ろから声が聞こえた。


「さすがペッポー君だ」


 俺の後ろにもう一体、ペッポー君が立っていた。

 そのペッポー君から聞こえた声は、ペッポー君の声ではない。

 中林先生の声だ。

 中林先生は満足げに語りだした。


「ペッポー君はああ見えて、汎用性が高くてな。民間のコミュニケーションロボットでありながら、プログラムを書き換えたり、別のAIをのせれば色々なことができる。以前から気になっていて、ペッポー君改造プログラムを用意しておいたんだ」


 どうやら、中林先生がペッポー君に何かしたらしい。

 俺の横のペッポー君は、先生がしゃべっている間にも、またボウリングのボールを持ち上げて、「えーい!」と投げていた。


「誰かあのクソロボットをとめろ!」


 金髪蛇タトゥー男が叫んだ。

 チンピラ達がこっちに来るかもしれない。

 だけどその時、ボウリング場の入り口から続々とペッポー君達と、それから、ルンルン、ブラブラという名前の床お掃除ロボットたちが入ってきた。


 ペッポー君の中にはラケットを持っているものも、バットを持っているものも、ゴルフクラブを持っているものもいる。

 スポーツをするペッポー君、って感じだけど、なんかちょっと不気味だ。

 なぜなら、ペッポー君たちは俺の横を通過しながら、口々におしゃべりをしていたから。


「イジメはダメ! ぜったい! めっさつ!」

「みんなで仲よく遊びましょう。できない子は、ペンペンです」

「許さーん。虫けらどもめ」


 なんだか、先生の改造プログラム注入によって、癒し系コミュニケーションロボットだったはずのペッポー君達が妙なことになっている。

 ペッポー君とお掃除ロボの一団は、チンピラ達の元へと直行していった。


「なんだ、あいつら!?」

「くるな! あっちにいってろ!」


 チンピラ男達はペッポー君達を相手に、持っている武器をふりかぶった。

 でも、ペッポー君達は負けていない。 


「フルスイーング!」

「フルスイーング!」


 ペッポー君達は元気な掛け声とともに、手に持つバット、ゴルフクラブ、ラケットとかをフルスイングして、チンピラ男達を襲いだした。

 どのペッポー君も明らかにスポーツのルールをまちがえている。

 それかボールと人間をまちがえちゃっているのか。


「先生、この改造プログラム、いいんですか? ロボットが人を襲ってますけど?」


 ペッポー君達の言動は明らかに普通だったら故障とか不具合とか呼ぶタイプのやつだ。

 だけど、中林先生は不思議そうに言った。


「なにを言っている。ロボット三原則はアシモフの創作だ。現時点で絶対に人に危害を加えないプログラムを作ることは不可能だ」


「そういう問題じゃなくて。俺は、フレンドリーな癒し系ペッポー君を、人を襲うロボットに変えちゃまずいんじゃないですか? って言いたいんですけど。これじゃ、まるでウイルス感染で狂暴化した恐怖のロボット集団じゃないですか」


「問題ない。ペッポー君達は私の攻撃命令に従っているだけだ。いつでもとめられる。それに、ペッポー君に成人男性を殺すほどの力はない。よっぽど当たり所が悪くなければな」


 俺と先生が話をしている間にも、ペッポー君たちは「フルスイーング」と言いながら、チンピラの頭を打ったりしていた。

 たしかに、致命傷は与えてなさそうだ。


 それに、チンピラ達はボールじゃないから、ペッポー君にただ殴られてはいない。

 チンピラ達はペッポー君達相手に反撃を始めた。

 ペッポー君達は、チンピラ男達に蹴られてバランスを崩したり、バールや鉄パイプで殴られてボディの一部を破損したりしながら、健気にしゃべっている。


「おっとっと。転びそうになっちゃった」

「乱暴はやめて。痛いよ~。なかよくあそぼうね」


(ペッポー君……)

 

 俺は思わずペッポー君を助けに行きたくなったけど、俺が行っても足手まといなので、やめておいた。

 それに、ちょっとピンチなペッポー君がいる一方、好調なペッポー君達もいる。


「バッター、打ちました!」

「ナイスヒット!」


 バッターのペッポー君がヒットしたのは、ツーブロック・パンチパーマな髪型のチンピラの、手だ。

 パンチパーマが手に持っていたナイフがクリーンヒットされて、鋭い打球のように飛んでいき、ボウリングのピンの間に消えていった。


 すぐに別の場所でも、ペッポー君達の声が上がった。


「ナイススイング!」

「ナイスショット!」


 たしかにペッポー君のゴルフのスイングはとてもきれいなフォームだった。ゴルフクラブで打たれたのは蛇タトゥー男の股間のボールだったけど。


「今日は調子がいいですね。その調子です!」

「がんばれ。がんばれ」


 ペッポー君達はお互いを応援、かわいらしく喜びながら、人を襲っている。

 かなり混沌とした乱戦だ。

 ちなみに、ペッポー君達が打っちゃいけないものを打っている間、お掃除ロボ達も地味に足もとで動いていた。

 お掃除ロボの戦闘力はゼロだけど、チンピラ達が拳銃を掴もうとするたびにお掃除ロボが拳銃を移動していたから、役には立っていた。

 あと、ペッポー君が一体、お掃除ロボットの上に乗って格好よく移動していたから、移動速度をあげるのに使えるのかもしれない。


「チクショウ! こいつら、ずっとおとなしかったのに!」

「なんで突然、バグってんだよ!」


 劣勢のチンピラ達が悔しそうに嘆いた。


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[一言] レート先生のペッ○ー君が居るぞ…
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