表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビになったと追放された俺は人類を救えるかもしれないけど人類は救いようがない  作者: しゃぼてん
3章 ゾンビ禍における出会いの形

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/88

22 地下の地獄絵

閲覧注意:この話以降3回は、特に不快な描写、残酷な描写が出てきます。

 俺は地下鉄の駅に向かって歩きながら考えた。

 どうやって駅に入るかが問題かもしれない。きっと駅の入り口は閉まっているはずだ。


 だけど、行ってみると、地下鉄入り口のシャッターは、完全に閉まってはいなかった。半分閉まりかけた中途半端なところでとまっていて、そこに、支柱のようにゾンビがはまっていた。

 ゾンビは瞑想でもしているかのように、あぐらをかいて座っている。ゾンビが障害物になって障害物検知センサーが作動、シャッターはそこでとまったようだ。

 シャッターにはまったゾンビは、いつでも移動できるはずなのに、そのままだ。なんだか修行僧みたいな風格を醸し出している。


「こんにちは。通りますよ」


「う」


 俺は四つん這いになってシャッターをくぐり、駅の中に入った。ゾンビは返事はしたけど微動だにしなかった。


 駅の中に入ったのは、パンデミック後、初めてだった。

 シャッターをくぐると中は暗い。

 俺はサングラスを外し、懐中電灯のスイッチをいれた。

 強力なLED懐中電灯なので、明るさは十分だ。

 俺は地下鉄の構内に続く階段をおりていった。

 駅の構内はガランとしている。


 懐中電灯の光円の端に壁の黒い染みが見えている。と思ったら、その黒い影がのそりと動きだした。

 よく見れば黒い服のゾンビだった。

 懐中電灯のあかりが眩しかったらしく、ゾンビは不機嫌そうに唸って腕で顔を隠していた。

 駅の売店の中にも人影があった。

 売店のおばさんが、ぼーっと立っていて、懐中電灯の光で、売店のおばさんの目が不気味に光っていた。

 売店おばさんゾンビは、無表情に顔だけ俺の方に向け、俺が歩くのに合わせて顔を動かした。

 ゾンビは俺を襲ってこないとわかっていても、普段見慣れないゾンビだと、少し怖い。


 俺は駅のホームに降りていった。

 階段をおりながら、俺は顔をしかめた。

 なんだか嫌な臭いがする。生ごみの強烈な匂いと便所の臭いを混ぜたような。それと、不快な音。

 俺は懐中電灯であたりを照らした。

 ざっと見たところ、ホーム上には何もない。

 ホームの下。線路内には、ホームから落ちてしまったらしい、薄汚れた服装のサラリーマン、OL、学生のゾンビがうろついていた。それから、無数の蠅。

 OLゾンビのブラウスは前がはだけ、大きな乳房があらわになっていた。でも、ゾンビマークのあざが浮かび蠅がたかる乳房は、ただひたすら気色悪い。

 ゾンビたちは、俺には興味をしめさず、歩き回っていた。蠅はゾンビの周囲をふくめ、至る所で飛び交っていた。

 不気味な光景だ。


(ここはまるで地獄みたいだ)


 見たところ、線路内に危険はなさそうだ。

 だけど、強烈な臭いと不快な音に、俺は怖気づいた。

 それでも、ここを進むしかない。

 俺は、ホームの端にいったん懐中電灯を置き、ホームの下に降りた。

 

 ホームの下に降りると、嫌な臭いがますます強烈になった。マスクをしているのに、頭が痛くなるほどの強烈な臭いだ。

 それから、もの凄い数の虫の羽音と何かを咀嚼するような音。

 蠅は俺にもまとわりついてきた。皮膚が出ないように帽子・マスク・ネックウォーマー・手袋の完全装備だからちょうど良かったけど。それでも帽子やマスクにぶつかってくる音は不快で、それに目の中に入ってきそうで嫌だった。

 俺は蠅を振り払いながら、懐中電灯で歩き回るゾンビ達を照らした。

 周囲のゾンビ達も、やたらと蠅にたかられている。

 よく見るとゾンビの顔、特に口のまわりに蠅が群がっている。

 ゾンビは、たまに舌をのばして、その蠅を食べている。ゾンビの口の周りには血液が付着しているように見える。


 俺は、線路上をゆっくりと、懐中電灯で照らしていった。

 あちこちに蠅がたかっている。

 でも、線路わき、ホームの下には他より大きな蠅の大群があって、なにか大きな塊があった。

 衣服の端が見える。

 あの塊は、かつて人間だったもののようだ。

 よく見えないし見たくないけど、たぶん今は腐敗した肉と骨の塊。

 蠅の他にネズミもたかっている。

 そこに、ゾンビも一匹たかっていた。懐中電灯の光に反応して、ゾンビはゆっくりふりかえった。口にネズミを咥えたまま。口のわきから、蛆虫も滴り落ちていた。


 俺は急いで懐中電灯の向きをかえた。

 吐き気をこらえながら、俺は冷静に考えようとした。

 駅の構内には売店があるから、食料がある。でも、ここにはない。

 ホームの下に落ちて上がれなくなったゾンビにとって、食べるものは、蠅と蛆虫とネズミ以外にない。だから、仕方がない。

 腐敗する前にはあの死体も食べ物だったかもしれない。だとしても、仕方がない。

 地上にいれば、このゾンビ達も、もっとまともな物を食べてのんびり暮らしていたはずだ。


(帰ってきたら、ここに食料を運ぼう。それか、ゾンビがホーム上に上がれるようにスロープを作るか……)


 もう二度と来たくないけど、この惨状は放置できない。

 とはいえ、今は先を急がないといけない。


 俺は、蠅にたかられた塊からなるべく距離を取って、通過した。

 足もとを無数のネズミが行き交い、蠅が煙幕のようになっていて、通過する俺の全身にぶつかってくる。その中を通り過ぎた直後。

 俺は突然あることを思い出して、慌てて自分の足もとを確認した。


 俺の足は、線路わきのサードレールの防護板を踏んでいた。サードレールは電車に電気を送るためのレールだ。たしか、触れれば死ぬこともある高電圧が流れている。


(危なかった。こんなところで、さっそくうっかり感電死するところだった)


 どんな死に方でも死ぬのは嫌だけど、こんなところでネズミと蛆とゾンビの食料になるのは勘弁だ。

 俺は足元に気をつけながら、ふたたび歩きだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ここのゾンビたちハエとかネズミ食べれば餓死しないよね? 無限に食料調達できるという笑 ゾンビって地球にやさしい生物だね。。。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ