アルバム
あの日、わたしは、アルバムに、一枚の写真を見た。
たくさんの人に、賞賛されるあの人の姿。
その写真には、自信に満ちた、あの人の姿があった。
あの人の周りには、たくさんの人がいた。
あの日見た写真の前のページには、一人寂しく机に向かうあの人の姿があった。
わたしは、その2枚の写真を見て、焦燥感に襲われた。
ああ、この写真を、本物の写真にするためには。
わたしも参加しなければならない。
急がないと。間に合わなくなる。
わたしは、急いで、できる事をした。
できる限りの事をして、あの写真を現実にしようと、躍起になった。
わたしは今日、アルバムを見た。
見てしまった。
あの日見たアルバムの写真は、違うものに貼りかえられていた。
わたしは、間に合わなかったのだ。
間に合わなかった。
賞賛される写真は、そこにはなかった。
一人ではないが、少人数で、机を囲む、姿が写っている。
前のページには、たくさんの人に囲まれて、笑っている写真が貼ってある。
もう、貼りかえることが、できない。
もう、確定してしまった。
わたしができることは、何もない。
わたしができることがあるとすれば。
あの人が自分で選んだ道を、自信を持って歩いていけることを祈るだけ。
間に合わなかったわたしを、許して欲しい。
誰かの道筋に介入することは、とても難しい。
どれほど努力しても、簡単に道筋がずれてしまう。
人の人生を、思い通りにすることなんて、できはしないのだな。
わたしは改めて、自分の犯した、無謀な賭けに、負けたことを悟った。