死んだ僕と栗拾い
〜〜〜〜9月上旬〜〜〜〜
舞子に誘われて、とある山に来ていた。
秋と言えば栗拾いという事で、拾うことすらできない僕を連れ出していた。
彼女は癌を患っている。当然、いつ症状が悪化してもおかしくない。それなのに人気の少ない山で栗拾いをする事になった。
「こーくん、大丈夫だからね!今日は近所の人達に一緒にって誘われたから!」
周りを見ると何人か居た。
近所のおばさん達だ。
「若いのに栗拾いなんて珍しいわね〜。この後一緒に栗ご飯でも作る?」
「えー!良いんですか?お願いします!」
何とか大丈夫そうだ。
「痛っ!」
「あらあら、トゲには気をつけなさいね」
「ありがとうございます」
大きいのから小さいのも沢山あった。
栗を拾いはじめてから3時間経った。
「みなさーん!そろそろ終わりにしま〜す!」
こうして無事に栗拾いが終わった。
舞子は先程のおばさんと一緒に栗ご飯を作るべく、その人に着いて行った。
「まぁ、まず最初は栗の皮を剥くところからよ」
舞子の手つきはどこかぎごちなかった。
「硬い!んー、難しい〜」
「最近の若い子はあんまり栗を剥いたりしないから仕方ないわね〜」
「剥くの、早いですね」
「何年も主婦をしてると、いろんなことに慣れてくるものよ。あなたも将来、旦那さんに作ってあげなさいね」
「……はい」
舞子の顔は寂しそうだった。
未来の旦那さんになっていたのであろう僕は死んでいる。
『ごめん』としか言葉がでない。
栗を剥き終わった。
おばさんに教えて貰いながら楽しそうに作っていた。
その間、僕は本当に何もできない。
暇というより、虚しかった。
夜19:00。ご飯が出来た。
おばあさんが仏壇にご飯を備えた。
「私の旦那はね、4年前、交通事故で亡くなったの」
「えっ?」
「事故って皮肉よね。便利になるのは良い事だけど、その分人が死んだんじゃあーねー」
「確かに事故は......」
「あなたにも何かあったの?」
「はい?」
「彼氏さんやそういう話を聞くと君はなんだか寂しそうな表情だったからね。気になったのよ。年寄りのおせっかいだったかしら?」
「実は、私も彼氏を交通事故で亡くしました」
「あらっ、若いのに可哀想に」
「大丈夫です。彼は、いつも私の側にいます。会話もできます、変な事を言ってるかも知れませんが、彼は死んでも生きています!」
「そうね。亡くなったという事実があっても、私達の心の中では生きているわね」
「はい!なので、おばあさんも元気を出してください!」
「若い子にそう言って貰えるなんてね〜」
「いえ、私は別に特に何も言ってないですよ」
「私ももう、そんなに永くはないわ。生きてるうちは、ちゃんと心で一緒に生きていかなきゃね」
「そうですね!」
「ささっ、早く食べましょう。冷めてしまうわ!」
「いただきます!・・・・・・んー!美味しいです!」
「それは良かったわ」
2人の会話、2人は似た者同士。同じ屈強に立たされている。
僕が生きていれば、もっと満足してもらえたのだろうか。
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