死んだ僕と花火大会
〜〜〜〜八月下旬〜〜〜〜
今日は花火大会の日だ。僕はまさか、自分の彼女の余命があと、わずかだとは夢にも思わなかった。
なので、舞子との思い出を沢山作るべく、今日は花火大会に行く約束をした。
「舞子、夜まで時間あるけどどうする?」
「んー、屋台とかいろいろ回ろ!」
「行こっか!」
ただいま午後16:00。花火大会は19:00からで三時間程の時間がある。ゆっくり、屋台など見るには良い時間だ。
二人で屋台を転々とする。
焼きそば、リンゴ飴、わたがしなど、屋台という屋台が並んでいた。
「ねぇねぇ! 何食べたい?」
「んー、僕は食べられないよ」
「こういうのは気持ちだから!」
「じゃあ、焼きそば食べたい」
「買ってくるね!」
わざわざ死んでる僕の為にいろいろとしてくれる。
余命あとわずかなら、僕の方がいろいろしてあげなくてはならないのに。
五分くらいして、舞子が嬉しそうに焼きそばを持って帰って来た。
「二つ買ったの?」
「そりゃそーだよ! ちゃんとこーくんの分もね!」
「ありがとう。」
舞子は嬉しそうに焼きそばを食べる。
「なんで、屋台の焼きそばってこんなに美味しいんだろ〜。 家で作るとパサパサしたりするのにー」
「本当にね」
「あー、こーくん、私の作る焼きそばがパサパサしてるって思ってたんだー!」
「あ、ごめん、そーじゃなくて.....」
「なんてね!うそうそ!」
そんな会話をしていると、舞子が男性に話しかけられた。
「ねぇきみ、誰と話してるんだい?」
「・・・・・・」
一瞬で沈黙する舞子。
「まぁ、一人なら気を付けな」
そう言って、男性は去っていった。
舞子が悲しげな感じで言った。
「やっぱり私、変に見られてるのかな?」
「まぁ、独り言を言ってるようにしか見えないからね...」
そして花火大会が始まる午後19:00になった。
アナウンスが流れる。
「皆様、大変お待たせ致しました。間もなく花火大会が始まります・・・・・・」
舞子はさっきの事を気にしているのか、あまり元気がない。
「舞子、花火大会始まるって!」
僕はなるべく笑顔で話しかけた。
「うん、楽しみに来たんだもんね!楽しまなきゃ!」
舞子は笑顔で返してくれたが、どこか悲しげな思い、無理をしているのだと気付いた。
ヒューーーーパーーーーン!
花火が上がった。
「綺麗....」
舞子が呟いた。
僕はそれに、反射的に答えてしまった。
「君の方が綺麗だよ」
「えっ?」
「あ、いや、ごめん」
「ううん、嬉しい。ありがとう!」
舞子は顔を赤くして、涙を流しながら答えてくれた。
僕は本当に嬉しかった。
何より、初めて二人で花火大会に来れたのがとても良い思い出となる。
「初めて花火大会に来たけど、その初めてが舞子で良かった」
「ありがとう」
そして花火大会も終盤となった。
パーンパーンパンパンパーーーーン
いくつもの花火が連続して上がっている。
そして最後。
パーーーーーーーーン!
一番大きな花火で花火大会は幕を閉じた。
舞子に言った。
「わざわざ花火大会に連れて行ってくれてありがとう」
「なんで?当たり前じゃん!」
こうして花火大会を終えた。
家に帰ると舞子はすぐに僕の分の焼きそばを仏壇に供えてくれた。
舞子が言った。
「パサパサしてない焼きそばだよー」
「なっ、ごめん」
どうやら少し根に持たれてるようだった。
次話は、山へ栗拾いに行く話になります!
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