死んだ僕が死んだ僕の墓参り?
〜〜〜〜八月のお盆〜〜〜〜
世間一般の人は大型連休に入り、一斉に動き出す時期だ。
お盆とは、祖先の霊を祀る一連の行事。
舞子は、祖先でもなんでもない僕のお墓参りに行く準備をしていた。
自分で自分のお墓に行くのは、なんだか違和感がある。
舞子は汗を拭いながら言った。
「暑いから、こーくんの墓石にお水かけてあげる!」
「いや、僕はここに居るからわざわざ暑い中お墓参りなんて行かなくていいよ?」
「それはダメだよ〜!」
そう言って、舞子は、お墓に行く準備を進める。
〜〜〜〜10分後〜〜〜〜
舞子が今から行くぞと言わんばかりの表情で言った。
「早く行かなきゃ!」
こうして、僕達は僕のお墓参りに行く事になった。
お墓までの道のりで、隣の舞子は凄く汗をかいている。心配になったので聞いた。
「大丈夫?」
舞子は全然大丈夫と言わんばかりの笑顔で答えた。
「気にしないで!」
こうして15分程歩いて、僕のお墓がある所に着いた。その隣にはお寺がある。舞子と同様で、僕を見ること、話す事のできる、鴨頭さんがいるお寺だ。
舞子はやかんに水を入れる。
ジャーーーー キュッ
「いっぱいになるまで入れたよ〜」
嬉しそうにこっちを見る舞子。
お墓は少し高い位置にあるので、急な斜面を登らなくてはならなかった。
ふと隣を見ると、舞子の息が上がっている。
「ハァ、ハァ、ハァ」
「大丈夫?」
俺は心配になった。だが、舞子は常に笑顔で返事をしてくれる。
「全然大丈夫!」
そして、僕の墓石の前に着いた。
「はい、お水だよ〜」
墓石に楽しそうに水をかけている。
嬉しかったので思わず言った。
「ありがとう〜。生き返る〜」
「そのまま生き返ってよ〜」
・・・・・・・・・・・・・・・
僕は何も言えなくなった。
舞子が僕の墓石に手を合わす。
すると、夫婦であろう人達がこちらに来た。
男性が言った。
「舞子! 久しぶりだな〜」
続けて女性も言った。
「あらあら、元気にしてた?」
舞子は僕を見て小声で言った。
「あの二人、私の両親」
僕は驚いた。なぜか、舞子の両親が、ほとんど関わったことの無い僕のお墓参りに来てくれたのだ。
そして、舞子の両親二人も手を合わせて拝んでくれた。僕は正直嬉しかった。
すると、舞子の母親が言った。
「心愛君、どうか、娘はまだ連れて行かないで下さい」
続いて、舞子のお父さんも言った。
「君もそうだが、まだ娘も若い。 これからが人生なんだ、何卒、まだ連れて行ってやらないでください」
僕はどういう事か分からなかった。舞子に聞いた。
「どういう事?」
舞子は、泣きそうなら顔で、何か申し訳無さそうに答えた。
「私、実は、癌なんだ...」
「えっ?」
僕は頭の中が真っ白になった。僕は一度も、舞子が癌を患っているという話を聞いた事がなかった。
舞子は、墓石に話しかけるように言った。
「私、高校二年生の時、癌が見つかったの...。お医者さんからももう、あまり長くないって言われたんだ。 余命あと五年って。 だから、本当は、私の方が早く死ぬはずだったのに...」
僕は身体が凍りつく程の寒気が走った。
今まで一緒に居たというのに、全く知らなかった、舞子の身体。いつも笑顔でいてくれる舞子の辛さ。
舞子のお父さんが舞子を励ますように言った。
「彼は、舞子に生きて欲しかったんだよ。 その分、しっかり生きるんだぞ」
そう言って、舞子の両親は帰って言った。
僕は舞子に聞いた。
「なんで、言ってくれなかったの?」
舞子は悲し気な表情で答えた。
「迷惑、かけたくなかった...。 それに、最初で最後の彼氏だと、私は、こーくんに見守られながら死んで行くんだと思ってたの」
僕は苦しかった。
そして、聞いた。
「高校二年の時で、余命、あと五年って事は、もしかしてあと二年?」
「多分、もっと短いよ...。 だから、なんであの時、私が死ななかったんだろうって、ずっと思ってる...」
「人間、いつ死ぬかは分からないじゃん、舞子は、もっと生きて!いや、絶対もっと生きれる!」
僕は、それくらいの言葉しか思いつかなかった。
家に帰った。舞子はずっとベッドで泣いている。
ずっと自分自身を責めている。
「なんで、こーくんが、なんで私じゃないの...? なんで、もっと生きていけるはずの人の命を奪ってまで、どうせすぐ死ぬはずの私が生きなきゃ行けないの!」
「ごめん、舞子...。 何も気づいてあげれなくて」
「ッッ!」
泣き出す舞子。その舞子の泣き顔はとても苦しそうに見えた。僕は舞子を励ますつもりで言った。
「ねぇ舞子。 もうすぐ、花火大会あるから、一緒に行こう。 僕は花火、生きてる間に舞子と行けなかったし、舞子と楽しみたいな!」
舞子は、泣きながらも笑顔で言ってくれた。
「嬉しい! ッッありがとうッッ!」
舞子は泣き疲れたのかそのまま寝てしまった。
寝顔が可愛かった。もっといろんな思い出をつくらなきゃいけないと思った。
「神様、舞子はまだ、死なせません!」
次話は、花火大会に行く話にたなります!
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