死んだ僕と水族館へ
〜〜〜〜八月〜〜〜〜
八月最初の土曜日、舞子が言った。
「ねぇこーくん!明日、日曜日だから水族館にでも行かない?」
「ん?急にどーしたの?」
「この前、水族館に行きたいって言ってたじゃん!」
そういえば、動物園に行った日、次は水族館に行きたいと話していた。
いつも退屈そうにしている僕に気を使って誘ってくれているのだろう。
というのも、大学は夏休みで、舞子は同級生や、サークルの人達と海やら登山やらいろいろ呼ばれていた。その間、僕はずっと部屋で過ごしているだけだった。
「とりあえず明日行こ!」
舞子は嬉しそうに言った。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ!」
大丈夫だと言っているが、動物園の時と同じように、一人でいる、『ぼっちの子』だとか思われないか心配だった。
それに、周りの人からしたら、僕と話している時の舞子の姿は、ただただ何もない場所に話しかけている、『怪しい人』としか見られてない。
また、舞子を傷付けるんじゃないかと思った。
とりあえず明日、水族館に行く事にした。
それを踏まえて、舞子と話した。
「話すとしたら、なるべく小声で、さりげなく話しかけてきて」と、僕は言った。
「なんだか可愛い〜とか、ボソッと呟く感じで話しかけたら良いんだよね!」
「まぁ、そんな感じでお願い! これ以上、舞子が変に冷たい目で見られるの嫌だからさ...」
「ありがとっ! でも大丈夫!!」
・・・・・・・・・・・・・・・
こうして次の日、朝6:00に家から最寄りのバス停に行き、バスに乗って、二時間かけて水族館に向かった。
水族館の入口付近には、日曜日というだけあって、結構人がいた。
小学生くらいの子が、夏休みの宿題の日記を書くために親と来ていたり、自由研究の宿題のために来てる親子が多かった。
何組か、カップルも来ている。
舞子は、羨ましそうな顔で行き交うカップル達を見つめていた。
「死んじゃって、ごめん...」
「ううん!大丈夫だから! さぁ、行こっ!」
舞子は頑張ってテンションを上げている。
だが、僕達は決して手を繋ぐ事は出来ない。
なんだか切ない。舞子もきっと、そう思っているだろう。
水族館に入る。色鮮やかな青色のガラスが当たりを埋め尽くしている。
舞子が僕に話しかけるよう、さりげなく言った。
「綺麗・・・・・・」
「綺麗だね〜」
会話すら難しい。
僕は話しかけても周囲の人には見えないから何か言われたり怪しまれたりしないが、舞子は無闇に僕と話すと、周囲から冷たい視線が飛んでくる。
その事で僕の頭はいっぱいになっていた。
少し奥に進む。
一番おっきな水槽に、ジンベイザメがいた。
凄い迫力だった。
更に奥に進むと、小魚の群れがいた。
「友達いっぱい〜」と、さりげなく舞子が言った。
「羨ましいよ」と僕は返事をした。
また少し奥に進むと、カクレクマノミが二匹で泳いでいる水槽があった。
「カクレクマノミって、本当にイソギンチャクの中に隠れるんだね! 二匹とも、仲良いな〜! 私達みたいだね!」
「初めて見たよ。・・・そうだね」
「次、イルカショー見に行かない?」
舞子は、イルカショーを一番楽しみにしていた。
「行こう!」
二人でイルカショーに向かった。
イルカショーの席に着く。
イルカショーの係員さんが言った。
「前から三列目までのお客様、水しぶきが飛んできますので、こちらをお使いください!」
僕達は前から三列目に座っていたので係員さんがビニールシートを渡してくれた。
舞子が言った。
「一緒にビニールシート持つ?」
「いや、僕は濡れないから大丈夫! 舞子は風邪ひかないようにちゃんとビニールシート持っててね!」
アナウンスが流れる
「間もなくイルカショーが始まります!皆様、拍手でお迎えください!」
パチパチパチパチパチパチ〜!!!
イルカが入ってきた。
「「「「キャーー!可愛い!!」」」」
拍手喝采や、歓声が沸き起こる。
イルカが物凄く高いボール目掛けてジャンプした。
水しぶきが飛んでくる!
「こーくん、イルカ凄いね!かっこいい!!」
「そうだね!」
こうしてイルカショーが終わった。
舞子は物凄くテンションが高い。
「イルカショー興奮したよ!楽しかったね!」
「そーだね」
「こーくん、お土産見に行かない?」
「分かった」
僕達はお土産売り場に向かった。
「これ可愛い!」と、舞子が楽しそうに見ている。
イルカの勾玉や、カクレクマノミのキーホルダー、ジンベイザメのぬいぐるみなど、いろいろあった。
「これ、買ってくるね!」
舞子はカクレクマノミのキーホルダーをレジに持ってて行った。
なんとも無邪気な顔をしていた。
「こーくんお待たせ! 帰ろっか!」
「うん。帰ろう!」
こうしてバスで二時間揺られながら家から最寄りのバス停に着いた。
そして家に着く。
「帰ってきた〜!」
舞子はベッドに飛び込んだ。
そして、お土産を出した。
「ジャーン!」
それはカクレクマノミのキーホルダーだった。
「えっ?二つ買ったの?」
「もちろん! お揃いのキーホルダーだよ! 仏壇に飾っとくね!」
「ありがとう」
舞子が変な人とか思われなくて良かったと心から思う。
そして、お揃いのキーホルダーがなんだかとっても嬉しかった。
今日はなんだか良い一日だったと僕は思った。
次話は、自分のお墓参りに行く際、彼女の事で死んだ主人公に衝撃がはしります!
また、少しでも良いなと思った方、レビューや、感想、評価などよろしくお願いします!!