死んだ僕との生活
僕の名前は向島 心愛。
6月12日、それは突然突然起こった。
僕は、突っ込んで来たトラックから彼女を守るため死んだ。享年20(歳)。
「こーくん! ねぇ、聞いてる?」
彼女は越智 舞子
「ねぇーーー!」
「しーっ! 前から人が来てる!」
舞子はふっと前を見た。
「あら、舞子ちゃんおはよう」
「おばさん。おはようございます!」
「今日も元気ね〜。一人なんだから気を付けてね。
行ってらっしゃい!」
「はーい!」
僕達は高校生の時に出会って、同じ大学に進学した。
大学一年の終わり頃に付き合い始めたばかりだった。
僕は死んでしまっているから、舞子の事を大学の同級生達は凄く同情している。
「ねぇこーくん?」
「なに?」
「やっと返事してくれた!」
「外ではあんま、話さない方がいいんじゃない?」
「だって私には見えてるもん!」
そう。なぜか彼女には僕が見えている。たが、他の人達は僕の事は見えるはずがない。
だから大学でも
僕と話していると・・・・・・・・・・・・
「舞子ちゃん! 何一人で話してるの?そこには誰も居ないよ? 早く次の講義行こ!」
「ちゃんとここに居るのに....。」
僕を見る。
「・・・・・・・・・」
こういう事がよくある。
周りの人には見えていないから、舞子がずっと独り言を言っている。周りの人には、『可哀想な子』だと思われているのだろう。
講義が終わって帰り道、ふと、彼女が言った。
「ねぇ、あの道行かない?」
そこは、僕が死んだ人通りの少ない横断歩道だった。
いくつか、花束が添えられている。それを見て彼女は言った。
「これを見ると、死んじゃったんだって思うけど、普通に話したりできるから、死んでるなんて思えないね.....」
悲しそうな表情をしていた。
「なんで私を庇ったの? なんで私が死ななかったの? こーくんの人生を奪ってまで、なんで生きなきゃいけないの?」
舞子は泣きながら自分を責めるように言った。
俺は答えた。
「なんか、身体が勝手に動いたんだ。 それに、舞子には生きていて欲しかった」
「なんで!なんでなんでなんで!!」
泣き叫ぶ舞子。抱きしめたいが、実体が無いから、なにもしてあげられない。
だが、一年に一度だけ、実体を持つことができる。
僕は死んでからすぐに、神様らしき人に出会った。神様らしき人が言うには、誰かを守る為に死んだのならば、一年に一度だけ、自分が死んだ日にのみ実体が与えられるらしい。
「一年に一度だけなんて、酷すぎるよ...」
泣く舞子
「でも、本来ならもう二度と会うことはできないよ」
「・・・・・・・・・」
もう夜だったので家に帰った。
僕達は同居していた。だから、自分の家に仏壇がある。
「こーくん! ご飯できたよ〜」
舞子はご飯を毎日仏壇に供えてくれる。
なんだか違和感がある。
「ねぇこーくん? まだ成仏しないでね!」
「んー、成仏の仕方とか分からないしなー」
「成仏できないのは、私に未練があるからでしょ?」
「多分そーかも!」
「ふふっ!」
まぁ、確かに舞子が幸せになってくれるまでは成仏できない。それに、幽霊としてだが、せっかくこの世に居れるなら、もう少し舞子と思い出を創りたい。
とりあえず一年経てば、一日限定ではあるが、実体が戻るから手を繋げる。
というのも、まだ手を繋いだ事の無いまま死んでしまった。
「私はずっと、誰とも付き合わないからね!」
急な舞子の発言に驚いた。
「いや、何言ってんの?」
「私の彼氏は、後にも先にもこーくんだけだよ!」
「いや、嬉しいけど、世間一般の人が見たら、若いのに誰とも付き合わない。結婚しないんだとか思われるぞ!」
「それでもいいの! こーくんがいい!」
余計に成仏したく無くなった。実体がなくても話すことはできる。少しでも思い出を創ろうと思った。
そこで俺は言った。
「じゃあ、来年の俺が死んだ日、実体が戻る一日だけど、手を繋いでも良いかな?」
「当たり前じゃない! 今すぐにでも繋ぎたいよ!」
舞子はとても喜んでくれている。
それと同時に泣いている。
本当に、なんで死んでしまったのだろう。
決して生き返ることはできないのに。
第2話は、動物園に思い出を創りに行く話です!
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