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異世界と神とDNA  作者: 夏井 悠
第3章 民の軍、神の軍、そして神の子
77/93

If everyone can celebrate Kai’s birthday

If話です。

底辺のくせに調子乗ったことしたんじゃねぇよ!と思われるとは思いますが、最近本編の血生臭さが増してきたので、たまにはこうして平和なお話を入れたいなと思い書きました。

快君が少し?かなり?優しくなったこと以外キャラの要素は変わっていないので各キャラの新たな一面を見ていただければ幸いです。


✳︎本当は2/18(快君の誕生日)に上げる予定だったのですが、それだと次の話を投稿できないと言われてしまったので先に上げています……✳︎


 



『イアンナ、そういえばボク達はカイの誕生日を知らないね』


 朝食の席、イアンナ、エレシュ、クローヴィス、カイの四人は仲良くテーブルを囲んでいる。イアンナとエレシュは女の子ならではの秘密の会話を、テレパシーという最高のツールでもって実現している。


 話題にのぼっているカイはというと、朝風呂の余韻に浸って美味なる貴族の朝食に舌鼓を打っている。イアンナとエレシュの二人は、そんなカイの様子を見てテレパシー漏れしていないことをきちんと確認して、話し合いを続ける。


『確かにそうですわね。彼にはタイラーゲート家の一員になってもらっているのに、一年弱もの間誕生日すら知らずにともに過ごしてきていただなんて……』


 カイがこの大学の図書館に転移してきたからすでに十一ヶ月。あと一ヶ月で一周年記念だ。その間彼は、異世界からの漂流者としてクローヴィスらの研究に大いなる貢献をしつつ、イアンナとエレシュによって全国民垂涎の的なる教育を受けてきた。


 それはカイ自身の持つ学習能力の高さも相まって、タイラーゲート家の養子として取られた長田快改めカイ=タイラーゲートの名にふさわしい教養をその身に備えさせている。


 そんなことはさておき、二人は今すぐにでもカイに誕生日を尋ねなければならない。そもそも十二分の十一の確率でそれは過ぎ去っているのだが。


『どうします? どちらが聞きますか?』


『ここはタイラーゲート家に吸収されしセルバントス家唯一の生き残りたる不肖めが』


 エレシュは多分にこれに対して諧謔的な意味合いを込めていたのだが、イアンナはこれを認めなかった。何をというと、その表現を。


『やめなさい。そもそもタイラーゲートとセルバントスは一つだったのですから。それが再び交わって従姉妹となったのが私たち。吸収だとか、上下関係だとか、そんなものは存在しません!』


『あははは、ごめんごめん。ボクもそこまで本気で言ったわけじゃないよ』


 エレシュが弁明するがイアンナの顔はまだ固くなったままだ。エレシュはそんな彼女の様子すら魅力的に感じてしまうわけだが、これはどうも尊敬だとか以外の感情も絡んでいないとは言い切れない様子だ。


「さて、カイ。突然だけど誕生日を教えてくれないかい?」




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「誕生日? ええと、この世界は公転周期が元の世界の二倍だから、二月の十八日を二倍して二月の三十六日かな?」


 カイは質問に答えつつも探りを入れるような視線をエレシュに向ける。カイは元の世界についての研究に協力するにあたってエレシュからのテレパシーに慣れている。


 テレパシーによる映像の共有を利用することで、それが一日数分間と制限されていることを考慮してもなお非常な研究を行うことができる。クローヴィスはこれによって他の全ての研究を打ち止めにして『異世界学』なるものにすべての時間を費やしているのだが、それはまた別の話。


 それはそれとして、カイは毎日行われる密接な伝心を通して相手のテレパシーを通してこちらからも相手を覗くという技術を得た。したがって、エレシュはもううかつにカイに対してテレパシーを行うことはできない。


 したがってこのわずかな時間にも若干の緊張感が孕んでいるのだが、お互い相手を攻撃したりその他敵対的な行動をとったりしたいわけではない。


「ならまだじゃないか!」


 エレシュの明るい笑顔と声を聞いてカイは察し、エレシュはそんな様子を見せるカイを見て自分の言葉の裏にある内容が伝わったことを察する。


 カイは家族以外の他人に誕生日を祝ってもらったことなど小学校二年生以来のことなので、それが今年更新されるということを予期しただけで顔が綻びてしまいそうになる。


 ちょうど一口分残っていたクロワッサンを行儀良く口の中に入れ、カイは街へと繰り出す準備をするため自室へと帰っていった。


「お父様、聞いたでしょう? カイ君のお誕生日は明後日ですって! 三人でお祝いしましょう!」


 カイが部屋を出て行ってきっかり十秒後。イアンナが隣に座るクローヴィスに手を合わせて提案する。そして娘をこよなく愛するクローヴィスがそれを拒否するわけもなく。


「ああ、いいじゃないか。彼のおかげで私は新たな生きがいを見つけられたようなものなのだから!」


 小さな声でヤッタとはしゃぐイアンナを見て嬉しそうな顔をするクローヴィスと何故かエレシュ。三人はそうして計画を立て始めたのだった。




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 カイはシン都上層を闊歩している。その目的は、正規軍本部へと向かうため。カイはありがちな異世界転移・転生系ストーリーの展開にのっとり、おもに武器や兵器の知識を正規軍に売っている。


 カイは残念ながら軍事オタクだったわけではないので、詳しい製造方法まで伝えることはできない。しかし遠距離攻撃は魔法によるものだという先入観に満ちたこの世界において、銃弾およびミサイル、それから地雷などを含んだ爆弾類の概念は異様だった。


 それを、カイの『外から見た印象と効果』を魔法でもって再現する。これがウル神国正規軍とタイラーゲート家のカイ=タイラーゲートがここ半年の間行っている取り組みだ。


 カイはクローヴィスの養子となったその日に拵えてもらった貴族用の正装に身を包んでいる。


 そして彼の隣には、護衛が一人侍っている。


「カイ様。本日も私は外でお待ちしていればよろしいでしょうか」


「全く、何度言えばわかってくれるんだルーツェ。君はどうしてそう半年間毎日それを尋ねるんだ?」


 カイは純白の騎士らしい衣に身を包んだ、目元を隠した護衛に面倒臭そうに返答する。


「申し訳ありませんが、それでもそれが私の務めでありますので」


 護衛、もといルーツェは恭しく頭を下げてそう謝罪する。タイラーゲート家直属の護衛騎士、ルーツェ=ランドール。彼はシン都で『黒髪の少年』が伝説となっていた時、クローヴィスに目をつけられて連れてこられた。


 最初こそケースリットの、というよりカイの護衛になることを拒んでいたものの、ある日突然態度を変えたのだ。カイはそれに心当たりがないわけでもないのだがそれに関しては思い出したくもない。


「よし、ついたな。ルーツェ頼んだぞ」


 カイはそれだけをルーツェの顔も見ずに伝え、正門をくぐっていった。


 正面に構える正規軍本部、その入り口で門番にこれから会う予定の人物の名を口にすると、彼らは大仰に扉を開いてカイを招き入れる。


 カイはそのまま地下へと向かう階段に足を向ける。地下にはさまざまな犯罪者たちが収容されているのだが、ここにはさらにそれよりも奥深くが存在する。


 そこは、正規軍武器開発班の管轄となっている空間。地下空間だとは信じられないほどの、工場群規模のさまざまな施設がここにはある。


「お久しぶりです、ヒューストン教授。本日も良いお天気ですので後ほど上へ上がってみては?」


「ハハハハ! カイ殿、そんなにそれを仰っているとそれ以外の冗談を考えられない俗物と同じと思われてしまいますぞ!」


「ハハッ! 全く、軍部の奴らは不敬な者どもばかりで困ったものよ!」


 カイと冗談を重ねて笑い合うのは、ロキル=ヒューストンだ。彼は正規軍武器開発班の班長として、この広大で偉大な空間を取り仕切っている。


「それはさておきヒューストン教授。振動を魔力に変換する技術は完成されたのです?」


 実際的な話に関係ないことは最初の冗談だけ。これが国内でも上位に入る頭脳と実践力、そして開発力を誇る最強タッグのやり方だ。


 今二人が、つまりウル神国が研究開発に力を入れているのが地雷の開発だ。


 今までの半年間、カイが提案してきた武器や兵器のほとんどがよく目立つ、つまり男の子的理想において最初に思い起こされるようなものだった。


 その中で試作品が作られたものは、拳銃から始まり戦闘用ヘリコプターにまで渡る。しかし、その中ではまだ実用化に至りそうなものはまだあまりない。


 ヒューストン教授は基本的に周りからの圧力だとか世論だとかには全く興味を持たないのだが、ひと月ほどまえにアバント元帥から直々に結果を出せと言われて若干焦ったのだ。


 そこでカイが提案したのが、圧倒的な戦力減衰力を持ちながら低コスト低技術生産が可能だと思われた地雷だった。


 まず戦争において、死者以上に怪我人数の多少の方が戦闘力の減衰度合いに大きな影響を及ぼすということは言うまでもない。


 そんな『常識』に最もよく適応しているのが地雷だ。こちらが撒いておけばあとは勝手に相手が脚を失ってくれる。


「いやそれがなかなか難しいものでしてね。あと少しというところで何度も挫折してしまっているのですよ」


 ヒューストン教授が先ほどの冗談のときのような豪快さを全く失ってそう答える。


「全く……」


 カイはそんな彼の様子を見て困った顔をする。カイ自身このような『死の商人』なるものをやっていたいわけがないのだ。


 カイはただ、正規軍と裏のつながりがあるタイラーゲート家の一員として、自分自身よく知らない謎の『恩恵』に対するお礼としてその知識やアイデアを共有しているだけだ。


 人を殺すことに興味を持っているような下臈と自分がこうして同じ空間に存在していることすら許しがたい。ルーツェにしろ、それからあの神にしろ同じことだ。


 自分は文明に生まれた、桓武帝の男系子孫としてもっと文化的な生活をしなければならないのだ。イアンナとエレシュのように。


「私も実現すら不可能な者たちに知識だけ授けるのは憚られるぞ」


 カイはそれだけ言い残すと、ルーツェの待つ正門へとそそくさと帰っていった。その背中を眺めるヒューストンの顔は、一種の畏怖の念がちらりとのぞいていた。




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「そうだな、全く決まらないなこれは」


 クローヴィスは休日を返上して服飾店へと来ていた。この店は小売店でありながらシン都上層に存在しているという、まさに国内最高級最高品質が保証された店。


 店内は何分割もされており、それぞれは性別と着衣部位によって分けられている。彼がここにやってきたのは、ずばり義理の息子であるカイの誕生日プレゼントを買うためだ。


 カイに貴族用の正装を与えたのはおよそ十ヶ月前の話になる。クローヴィスは彼の知識が軍部にとっても実に有用であると見て、彼を正規軍へと送るようにした。


 しかしそれによってカイの正装は毎日使用されることとなり、そろそろ生地が悪くなってしまっても仕方がないという状況だ。


 しかし貴族にとって身に付けるものは本人の尊貴性と格を表す。クローヴィスからするとカイの尊貴性は特別貴族である自分たちと同様だと考えられる。そして実際的にはタイラーゲート家の養子としてそれは他貴族にも認識されている。


 したがって、今回購入するべき衣服も最高級のものであるべきだ。


 そう思ってここまでやってきたのだがなかなか難しいものだ。貴族の正装と言っても二つのスタイルがあるのだ。片方は旧代表らが着装していたと言われているもので、それは機能性よりもむしろその優雅な見た目を重視している。


 対してもう一つのスタイルは何十年か前にこの店が新しく作ったものだ。古くからのスタイルの優雅さはわずかに失われるが、機能的な面で優れている。


 クローヴィスは迷う。


 時折カイが見せる形式重視的な性格を考えると、前者の方が良いように思われる。しかし彼が異世界人として、この世界にとって新たな存在であるということ。それから彼が毎日正装で正規軍本部まで歩いているということを考慮すると後者の方が良いような気がする。


「………………決めたぞ!」




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「冬なんですからもう少し落ち着いたものをとは言いましたが、さすがに誕生日のお祝いにこの寂しさはないのではないですか?」


 ここはというと、ここもまたシン都上層に存在するレストランだ。ここが国内最高級最高品質であることはもはやいうまでもない。


 昼前の準備時間にイアンナがクローヴィスとともにやってきて、イアンナだけがここに残っているのだ。クローヴィスは『貸切だ。代金は十分に払う』とそれだけ言い残すと例の服飾店へと向かったのだ。


 そして現在、イアンナはカイの誕生祝いにふさわしいディナーに関して事細かな指示を出している。


 これで試食は三度目となるが、まだ満足していない様子だ。イアンナはカイがよく季節に風情を感じている節を見せることをよく記憶しているので、この料理にも季節感を求めているのだが、それでも誕生日祝いということで温かい感も求めているのだ。


 しかしそれは当然厨房のシェフたちを大いに困らせる要求である。最初からタイラーゲート家からだということで高級食材を惜しみなく使っていたのだが、さすがに四食目となると無意識的に惜しんでしまう。


「食材を惜しんではいけませんよ? お代はキチンと払うんですから」


 イアンナの釘が刺さる。この様子だと次に仕上げなければならない。シェフたちはあれやこれやと話し合いながらメニューを決める。


 暖かいながらも冬らしさがある料理。果たして一体それはなんなのだろうか。


「サーモンとヴィネガーを使うのはどうだ? 酸っぱいのは冬のイメージにも合うような」


 シェフたちはまだまだ会議という名の迷走を続けるのだった。結局イアンナを満足させたのは、そのあと二品作ったあとだった。


「あら! これいいじゃないの!」


 イアンナは口元を押さえてその嬉しそうに言う。シェフたちの半数はそのイアンナの美しい笑顔によって疲れが癒されたのだが、残りの半数はそうもいかない。


「お疲れ様でした。お父様がお代を払ってくれるでしょう。それから、私からも何かなければいけないけれど。お金は持ちあわせていないので今度機会があったらキチンといただきに来るわ。どれも美味しかったから」


 しかしこの一言で、残りの半数も働いたかいがあったとそう感じたのだった。




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 クローヴィスとイアンナのプレゼントは、言い方はやや悪いがお金で得ることができるものだ。しかしエレシュはクローヴィス、つまりタイラーゲート家に吸収されたセルバントス家の生き残りで、その財産の行方は謎となっている。


 引き取ってくれたタイラーゲートには感謝なのだが、彼らの財産を勝手に使うわけにはいかないので、エレシュは自分の手で何かプレゼントを作らなければならない。


 そして彼女は、それに関して大きなあてがある。カイは、美術的なものに目がないのだ。イアンナも含めて三人で歩いていると、よくあれが美しいとかどれが美しかったとかそういったことをよく口にする。


 そしてエレシュは、絵画を描くことに自信があるのだ。テーマさえ決まればあとは本能に任せて筆を動かせば、それなりの作品はできる。


 しかし、当然カイへの誕生日プレゼントをそれで済ませるつもりはない。テレパシーを全開にして周囲から降ってくるさまざまな思考を、その風景の一部分として取り込むのだ。


 エレシュ自身そのような作品を描くことは初めてなのだが、それでもなんとなくうまくいくような予感がする。


「さて、テーマを決めようじゃないか」


 そうだ、残るはテーマ決め。ここでエレシュもまた、カイの季節に対する意識を思い出す。


「そうだな…………凍った湖面とか情緒があるかな? いや、とにかく外に出ない限り頭の中止まりだ。イアンナたちも出ていったことだし、ボクも外へ出てみるか」


 そうしてコートを羽織ってケースリットを出て行くエレシュ。大学に唯一残っている黒い影は、カイ=ランドールの誕生日などという些細な問題には興味も示さず、ただただ大学を、自分を救ってくれた男を、子供たちを、見守っているのだった。


 エレシュは下層にまでやってきた。下層には自然公園があるので、そこを歩き回って何かいいものがないか探す。


 しかし、いつの間にか降り始めた雪が視界をぼやけさせ、エレシュはいいものが見つからないと焦り始める。


「ダメだダメだ。これだからボクは。もっと広い目で探さないと!」


 果たして、エレシュの瞳は美らしい美を見つけることができた。その先は全く何の問題もなく進んだ。




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 二日後。二月三十六日の朝。


 いつも通り朝風呂を済ませたカイは、普段着であるシャツとベストを着て朝食の席へと向かう。


「お誕生日おめでとう!」


 予期はしていたがこのタイミングだとは思わなかった。カイは階段を登った先に待ち構えていた三人の笑顔と声を認識すると、驚きと嬉しさに顔をくしゃっとした。


 カイはもはや反射的に、それぞれの手にプレゼントが握られているか否か確認する。欲にまみれたようで自己嫌悪に陥りかけるのだが、人間としてむしろ自然な反応として受け入れ開き直る。


「まずは私から、バン! 新たな正装だ! タイラーゲート家の一員として、これを着て優雅であってくれ!」


 クローヴィスの選んだものは、結局伝統的な正装だった。しかもそれは、このスタイルのものの中でも最も原点に近いというもの。彼がそれをカイに説明すると、カイは幼い子供のように喜ぶ。


 クローヴィスは自分の予想したカイの好みと実際とが同じで安心したのと同時に、ある種の達成感まで感じた。


「次は私、と言いたいのですが私からはディナーです。夜まで待っていただけますか?」


 カイは真正面からのイアンナの若干の上目遣いに卒倒しそうになる。が、なんとかこらえて問題ないと告げる。


「さて、最後はボクだ。ボクのは二人のと違って物足りないとは思うけど、まあそれなりに頑張ったから……」


 エレシュにしては珍しく言い切らないが、そこからもまた彼女の心情が伝わってくるので問題ない。そんな彼女から手渡されたのは絵画だった。


「……あ」


 それは、カイの好みど真ん中だった。


 雪が降りしきり視界がぼんやりとしている夢のような世界に、葉の枯れた木が一本だけ立っている。生々しくてそして力強い枝が幾本も伸びているが、しかしそれらは一つとして同じものはない。


 さらに細かいところまで目を凝らしてみると、枝の先端にしおらしく乗っかっている蕾が描かれている。


「本当にありがとう! 部屋に飾らせてもらうよ!」




 夕食刻のレストラン。ここの予約席に貴族が四人、腰掛けている。


「何食分も作らせてようやく完成させたものなんですから! 是非堪能してくださいね!」


 イアンナがカイの隣の席に座り、マナーは守りながらも子猫のようにカイに寄ってくる。そんな状況にカイは嬉しいような気まずいような、なんとも複雑な心情でいる。


 そしてそうこうしているうちに料理が運ばれ始めた。貴族食にも慣れたカイはこの量でも満足できるようにはなったのだが、それでもたまに残念に思われる時がある。


 そして今はそのときで、カイは前菜の並びを見てほんのわずかに一瞬だけ悲しげな顔をした。しかしそれはその後払拭された。


 というのも、イアンナは量に関してもシェフに一言伝えておいたのだ。彼女もぶらぶらとカイとの一年弱を過ごしていたわけではない。


 カイが時折見せる量に対する不満というものをキチンと認識していたのだ。そしてそれも考慮した料理を出せるように彼女はわざわざ一昨日にここまで来たのだ。


 カイは冬の潜在的な美を舌で感じとり、そして何よりも新しい家族となっている彼女たちの温かい感情を感じとった。


 カイの瞳はほんの少しだけ、外から見ても分からない程度の若干だけ潤った。




 >

If celebrate はシリーズとしてたまに挟んでいきたいと思っています。

一般的ななろう小説に近づいたんですかね?



この先、考察潰し有り。閲覧注意です!




二つだけ言わせてくれ。

平和な話にしたいと言っておきながら主人公を死の商人にした私を許してくれ!

タイラーゲートの養子にしてイアンナとの結婚を不可能にしてしまった私を許してくれ!

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