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異世界と神とDNA  作者: 夏井 悠
第1章 伝わらない異世界
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4.ゲンゴ

次に快がお願いしたのはーーーー


『あのさ、ここで使われている言葉とか文字とかを知りたいんだけど、お願いできるのはエレシュさんしかいないかなーとか思ったりするんですが』


ウル神国で使われている言語のレッスンだ。

ちなみに少しあざとくお願いしてみた。口調ではお願いしつつ顔も頼りつつ、しかし爽やかさを崩さず。


『そうやってボクをいい気にさせて、何か変なことでも考えているのかい? ボクにそんなのは効かないよ』


エレシュは自分だけが頼りにされていることに頬を赤らめつつ、かつ見当違いなことを言いながら快に向き合った。ていうか、エレシュさんこんなキャラだっけ?


『いや、そんなこと考えてないから安心して』


快が笑いを噛み殺しながら返答すると、エレシュは安心したフリをしきれず残念そうにしながら承諾してくれた。


『じゃあ、とりあえず方針やら予定やらを決めてからにしよう。その方が確実に効率的に学習できるからね』


『ああ、全く同感だ』


快はエレシュとの学習に対する意識が同じでやや驚いた。自分は意識高い系でやってきたつもりだったので、異世界で最初に出会った人物が同じ志向だと思うと安心感がどっと湧いた。


『まず方法なんだけど、ボクが文字や単語、慣れてきたら文を書くからその情報、つまり〔音〕〔形〕〔意味〕を同時にテレパシーで送る。これを丁寧にやっていけば一ヶ月で六歳児ぐらいのコミュニケーション能力を得られると思う。あとは自力で、となるんだけどね』


『テレパシーにそんな使い方があるのか。驚いたよ。でも、もう少し早められないか? それか量を多くしてたくさんの語彙を早く増やすか。早く新しい常識を知りたいんだ』


『ごめん。これに関してはあまり無理ができないんだよ。というのも、三つの情報を同時に送る、それも意識の奥に、なんてこと普通ならできないんだ。流石のボクでも負荷が大きすぎて長くは使えない。それから君の頭への負荷も強すぎる。赤子がいつも寝ているのは、初めて見る世界について情報が多すぎてその処理が必要だからだ。という説もあるくらいなんだから、新しい言語を急いで学ぶのはあまりお勧めできないかな』


エレシュが珍しく悔しそうな、やりきれない表情を見せた。おそらく本人は無理をできない理由に自分の能力という項目があるのが許せないのだろう。まあ、向上心があることなので感心だがやりすぎも本人にとってよくないだろう。

ともかく、一ヶ月プランで進めるべきかな。


『分かった。あまり無理はしないよ。でもまだできそうならその都度言ってくれよ、俺もできそうなら少しだけでも多く長くやりたいんだ』


『ああ、ボクも君には少しばかり期待しているよ』


彼女は笑った。少し儚げでもあったが少なからず今後の展開に期待はしているだろう。快もそんな笑顔を見てやる気になった。


ーーーーって危ない! 危うく会話を終わらせるところだったよ。予定予定!


『じゃあ残るは方針と予定か』


『そう、方針だ。まあ方針といってもボクのやり方みたいなものなんだけどね。ボクは言語は日々の中で習得するものだと思うんだ。そこで二点伝えたいことがある』


『と言うと?』


『一つ目は、ボクたち、この世界の人の会話をなるべく理解するつもりで聞いてほしい。当たり前といえば当たり前だけど脳に刷り込まれた情報をアウトプットしない限り、いつまでたっても使うことはできないだろう。

二つ目はコツコツと取り組もう、という事だ。まとめてやってしまってもあまり意味はない。一時間の講習を一日に五回行いたい。休憩やら昼寝やらをしっかりとって、君の脳の最大限のパフォーマンスの下での方が断然いいだろう?』


『す、凄いな…… ここまで考えてくれて。 こんなことされたら手が抜けないじゃない』


快は感服した。感服という言葉が完璧にハマった。ここまで考えてくれていることに心から感謝した。


『抜かせるつもりは無いよ』


エレシュが声を弾ませた。

今後が楽しみだ。二人同時にそう思った。




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一方その頃別室にて。

そこでは真紅の美少女が複雑な表情でペンを走らせていた。


それは決して勉学に励んでいるのではなかった。謎の少年、長田快を今後どう取り扱っていくべきか、紙に書き出して考えていたのだ。


悪い人では無いという事は何となくだが伝わって来た。というか、自分の勘をやり過ごすほどのやり手には見えなかった。という方が真実に近いだろう。

父親は興奮していた。身なりからして異世界人という彼の発言にはある程度の信憑性もあった。詮無いだろう。父も異世界を研究していたのだから。いつも判断を間違えない父があのような態度を取っているのだ。信用できるかもしれない。

さらに、あのエレシュまで彼に好感を持っている。というかそれどころでは無いだろう。従姉妹があのような態度を他人に取るのは初めて見た。いつも内向的でタイラーゲート家以外には気を許すこともなかったほどだった。しかし彼女だって馬鹿ではない。信用するべきなのだろうか。


しかし彼女は、どうしても不安を取り除くことができなかった。彼はどうしても策士にしか見えなかった。時折見せる表情、考え事をするときの目つき、そしてものを考えながら発言するときに忙しなく手を遊ばせる癖。父親や政治家などの机に向かう方が得意な人、その中でも優秀な人によく見るそれらを、彼の中に見た。異世界からやってきた策士。ろくな事は起こるまい。絶対に何か大切なものを傷つけて行ってしまうだろう。


悪い人ではない事は半分認めよう。しかしあの男はそれさえも利用しかねない策士であろう事もまた、覚えておこう。


そう思いつつ、八割がた気を許していることには彼女自身も気づいていなかった。


側から見たら笑ってしまうほどの、葛藤できていない葛藤だった。




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またまた別室。研究室の一つ。


ここでは校長が古い資料を取り出していた。


「異世界か、いやはや懐かしいものだ。当時は仮説に過ぎなかったが…… やはり歴史の改竄は本当だったのか」


クローヴィスはかつて、エンキの歴史の改竄と異世界人は何かしらの繋がりがあるとの仮説をたてた。そこから異世界について研究し始めたのだが、歴史的資料も伝承も何もかも、それに関わるものは存在しなかった。プレートの語りかけてくる声以外は。


証拠のない論は仮説か妄言のどちらかだ。話題が話題だから妄言として扱われるに違いない。そう思い途中で無期限の研究休止期間に入ったのだが。


こんな形で大きな一歩を踏み出す事になるとは思わなかった。


「一つずつ確認していくとしよう。私の仮説とは全く違う答えが出るかもしれないのだから」


笑みがこぼれていた。



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さらに別室。ここにはただ一人女性がいた。


全身を黒い衣で纏っている。顔さえ隠している。おしゃれな黒子とでも言うべきか、色が無い分意匠が凝らされている。


存在を知る者さえほとんどいない。そんな人物が一人、


「エン……リル……?」


今は石像の、神の名を、さえずるように口に出した。

ちなみに、最後の黒い女の人が僕の最推しです。祝、初登場!

出てくる人はみんな魅力的にしたいんですが、今多分物語がエレシュ寄りなんで、今後どう挽回してバランスとろうか考えてます。要望あれば下さい!

あ、イアンナちゃん忘れてないよ!

みんな忘れないであげてね


快推しは極力出させません。冴えカノではふりんりくん推しなんですがね。

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