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異世界と神とDNA  作者: 夏井 悠
第1章 伝わらない異世界
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3.ウル神国

その後すぐにその場はお開きになった。イアンナは自室で勉強することになり、快とエレシュはとりあえず図書館に行くことになった。そこで快はとりあえずこの世界についてある程度知ろうと思った。

エレシュにお願いすれば話も早いだろう。


『ねえ、あんまりこの世界について非常識だっていうのは困るから、とりあえずこの国についてだけでも教えてくれない?』


『分かったよ。ボクもタイラーゲート先生の生徒だから街を歩いている人たちよりはちゃんとしたことを伝えられると思うよ。いや、むしろ君にはもったいないくらいかな』




<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<




今からおよそ2500年前、現在のウル神国がある土地には小さな集落があった。

ある日、三人の神を名乗るものたちがその地を訪れた。

一人はエンリル。三人の代表らしく、容姿に優れかつ優秀な感が溢れる男だった。カリスマ性にも優れ、集落の住人もすぐに彼を慕い、尊敬し、崇拝した。しかし彼は自分の決定事項に口を出されることに過剰に反応してしまうという欠点があった。ある時一緒にいた神に、論理の不整合を指摘された際に大嵐を起こし、気が済むまで森の生き物の身体をズタズタにし続けた。それの恐怖も、住人に崇拝される理由の一つであろう。

一人はエンキ。知識の量がそれこそ神の領域、思考力も常人には理解が追いつかないほどだった。数々の問題も、エンキの策とエンリルの力で乗り切っていた。しかし性欲が強く子や孫とも営んだ。素直に尊敬できるとは言い難い人物であった。

最後の一人はニンフルサグ。エンキの妻でエンキとの子供は人間とは比べ物にならないスピードで生まれすぐに成長した。エンキとニンフルサグの子もこの特異体質を引き継いでおり、半ばエンキの性欲のはけ口にされていた感も否めなかった。


集落の人々は彼らを彼らの言う通り神として扱い、最上のもてなしを施し続けた。年に一度の祭りでは集落の発展と安泰を祈り仰々しいほどの大祭りが催されていた。


ある日、集落の近くの川の上流で大雨があった。住民たちは皆これから来るであろう洪水に備え、また神々の力を借りるべく、その旨を伝えた。神々は集落を守るために全力を尽く

ーーさなかった。


洪水は神々の謀だった。

集落は流された。

生き残った人はたったの三人だった。


生き残った人々は、神を怨んだ。家族を、思い出を、歴史を全くないものにしてしまった神々を憎んだ。しかし、同時に今の今まで気付かなかった、自分の中を駆け巡るエネルギーに、魔法とは違うそれに気づいた。三人はそれを使い神々に復讐しようとした。

しかし神々には効かなかった。練度がまるで違かった。三人は絶望した。最後には殺してくれと乞うた。しかしそれは為されなかった。代わりに身体を刹那の激痛が走った。そして神々は洪水の目的を話した。要は選ばれし人々による神の国を作らん、ということだった。三人は当初反対していた。しかしその後三人は神々の指導のもと高等魔法やら知識やら、色々と叩き込まれた。10年もすると三人の力も神がかったものになりつつあった。

あの日自覚した異能のカケラを完全にコントロールできるようになった。三人は神々の言い分に理解を示し始めた。ついに三人は完全な協力を承諾した。神と人、合計6人で次の代を作った。次の代の子供達はみな生まれながらにして強力な魔力と異能を持っていた。


しばらくして、集落は再興どころか最初の10倍の規模に膨らんでいた。集落は、エンリル、エンキ、ニンフルサグの3人の神々と最初に人と神が交わった結果の10人の合計13人を代表として国政を行う国となっていた。最初の三人は寿命で死んだ。他は神の血が入っていて寿命がなかった。それだけの話だ。それが現在のウル神国の最初の姿である。


その後2500年の日々で多くの天災、戦争がウル神国を巻き込んだ。その度に代表達は知恵と力を振り絞り国を守り続けた。国民は皆、彼らを信仰の対象とした。異能を用いて国を守るのだから当然だろう。


しかしある日、快が転移する60年前、エンキが歴史を変えた。文字通り過去を変えて、歴史を変えた。動機はまったく不明だった。

彼は自分以外の代表を生きる者ではなくしてしまった。代表の話し合いに用いられた閣塔に、12人の石像と、空の台座一つを創り姿をくらませた。


日々、国を守ったのは石像の魔力であると歴史は書き換えられ、人々はそれを信じている。

ーーーー一部を除いて。


ここでクローヴィス=タイラーゲートが出てくる。彼はウル神国最高の頭脳を持っている。

閣塔の空いている台座を不審に思い、各地13箇所に散らばる遺跡、もっともこれはエンキが昔作られたことにしたものだが、を調査したところプレートが見つかった。一箇所目は18年前、二箇所目は去年に見つけた。


プレートの文字は見たことのないものだった。そこで裏を見てみてもーー文字は何も書かれていなかった。

しかし脳にはっきりと何かが囁かれた。音としての認識は一切ないが情報が入ってきた。それによると、ーーーー


13枚のプレートを集めると一気に全てが読めるようになるらしい。そしてエンキは歴史を改竄したらしい。また、プレートには改竄の真の目的が記されているらしい。


クローヴィスはこのことについては一切学会に報告しなかった。ウル神国には代表たちを神として崇める宗教があった。歴史を覆すような発見の種をむやみに世の中に晒し、宗教上の問題で抹消されてしまっては元も子もないと判断したからだ。


また、現在の国政は大統領を選挙で選び彼に絶対的な権限が与えられ為されている。表向きはそうだ。

しかし事実は違う。件の宗教の過激派、ディーメア派が国政を牛耳っている。ディーメアは以前は13人の代表、ウル・ディーメアと呼ばれる者がいたが、ここ20年間で二人の行方が分からなくなり、現在は11人で構成されたウル・ディーメアが実質的に国を動かしている。




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『歴史だとかはこんなものかな』


エレシュがやや興奮気味に言った。


『クローヴィスさんって本当にすごい人なんだ…』


快はクローヴィスの存在の大きさに驚いた。まさか国の起源の第一人者でさらに教科書を一から作り直さなければならないほどの重大な情報を唯一手にしている人物だとは思わなかった。


『そうか、とりあえずはこのくらいでいいや。丁寧に説明してくれて本当にありがとう』


ひとまず常識は取り入れた。




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