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異世界と神とDNA  作者: 夏井 悠
第1章 伝わらない異世界
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2.主要メンバー発表

『何故彼女が話しかけてくれないかというと?』


『簡単に言うと、ボクはテレパシーだとか回復系だとかの、いわゆる補助魔法が人よりかなり得意なんだ。それに対して彼女はすべての魔法が得意だけど、補助魔法に関してはボクの方が上だからだよ』


快は特段驚かなかった。今更魔法という単語を聞いて動揺するでもなく、ただ素直にその告白を受け入れた。補助魔法が得意でクリーム色の髪だというのは、キャラに合いすぎて彼一人幸せになったほどだ。


『そして二つ目の質問に関しては、答える義務は無いというのがボクの正直な答えだよ。だから三つ目と絡めて、〔異世界転移〕がどうしたこうしたとかなり混乱している君を、この大学の校長に紹介して今後どう扱うかしっかりと決めようと思っているところだよ』


「×¥・〆々%×♪=」


「♪%€=×=<×°¥\」


2人が何かを話し始めた。文脈から考えるにその校長先生に快を紹介することに関する事だと思われるが。


『イアンナも賛成だそうだよ。良かったね。彼女が君の様子を見るべきと言ったからには、当分は君の安全は確保されたようなものだね』


イアンナとはもう1人の少女だろうか。何故彼女がそこまで力を持っているかのような言い方をされているのかよくわからなかったが。


『イアンナってそっちの方? ならありがとうございますと伝えてくれる?』


彼女は頷いただけでまたイアンナに語りかけた。イアンナはまさにツンデレのツンのようなリアクションをとった。

ボクっ娘の次はツンデレだった。彼の中のツートップが今、決まった。








快は2人に連れられ大学構内を歩いた。基本的にレンガ造りの建物は、レトロで実に風情があった。2人の美貌がよく映えた。


奥の方に進んでいくと研究室らしきものの扉も重厚な感じになり、清潔感が増した気がした。

そのまま最奥の部屋の扉の前に辿り着いた。


『無礼のないように』


ボクっ娘が厳しく快に言いつけた。快だって自分が常識人だとは思っているので半分聞き流したが、お偉いさんの前に出ることは意識できた。



ボクっ娘がノックしてから何事か声をかけ、次にイアンナが一言かけた。

中からは男性の比較的穏やかな声が聞こえて来た。そのまま扉は自動で開き、三人は中に入った。




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中は綺麗に整った部屋だった。最奥にあったのでおそらく校長室であろうが、分厚い本が5冊ほど机の上に立っていた。厳選したのだろうか。特に気に入った本を手元に置いておくという趣味は共感を感じざるを得ない。

そしてその机の奥には椅子に座った赤髪の男性がいた。




快は自分のことが話題なのに会話に入れないことが苦しかった。三人が、と言っても快と話したボクっ娘と赤髪の男性の2人が中心だったが、何やら話している。

途中から赤髪の男性が何やら興奮し始め、快に熱い視線を送り始めた。


----え、校長先生ってそっちなの⁉︎


なんて思ってボクっ娘の注意を引こうと試みるが全く効かなかった。

----大学の校長なら当たり前か、ここにいるんだから多分彼女達も学生だろう。


しばらくして、彼らの話が落ち着き始めた時、唐突に全員の視線が快に向いた。


『君はこれからどうするつもりなんだい?』


核心に迫る問いだった。一体自分はこれからどう過ごせばいいのだろうか。もうここは異世界だと信じていいだろう。快は自分が過ごした17年間を思い返した。帰れないかもしれないと考えると、かなりショックだった。しかし同時に立ち止まっていても状況は変わらないことも確信した。

確かここは大学だった。赤髪の人はここの校長先生だと言っていた。彼なら何か解決策を提案してくれるのではないか、そんな思いが胸を駆け巡った。そうなると答えは一つに絞られたもの同然だった。--ここに残るしかない。


しかし彼はこの状況をうまく説明できる自信がなかった。むしろ、失敗する自信があった。

彼が以前読んだライトノベルに、異世界に異世界という概念が存在しない設定のものがあった。ここで異世界から来たと言って異常者だと思われて今後の対応が適当にされては困る。彼が頭を悩ませていると--


『早く何か言ったらどうだい? ボク達の世界でも異世界という概念ならあるよ。早く口を開いてくれないと、そっちの方が怪しくて対応が適当になってしまうもしれないよ』


『ありがとう、ごめん』


彼は力なく言った。おそらくさっきまでの葛藤は筒抜けだったろう。しかし、だからこそ、ようやく言い切る勇気をもらえた気がした。


彼は頭を下げた。


「僕をここにいさせてください。そして、元の世界に戻る知恵と力を貸して下さい!」


言った。彼は三人の反応を見るため、大袈裟なほどにお辞儀した体を起こし顔を上げた。そこには----

果たして三人のポカンとした顔があるのみだった。何か間違えただろうか。快は一生懸命に原因となりうるものを探したが何一つ見つからなかった。どうしたものだろう、そう思った時気付いた。


何故自分は日本語で話しかけたのだろう。分かりきっていた事なのに、いざとなって普通に話が通じるつもりでいてしまった。本当に恥ずかしかった。そこでボクっ娘にお願いして通訳になってもらおうと思った。


『という事で、通訳お願いできませんか?』


『そういう事だろうと思ったよ、全く。仕方ないね』


ボクっ娘も流石に笑いを堪えきれず、太陽のような笑顔で承諾してくれた。




<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

その後ボクっ娘の通訳で快の自己紹介が始まった。


「彼の名前はオサダカイと言うそうです。異世界からやってきたらしくボクとイアンナの二人で図書館に入ったところ見つけました。よく分かりませんが、ボク達の属性が好みだと言っているので彼の世界の人しか感知できない魔法のようなものを身につけている可能性があります。元の世界に戻るためにタイラーゲート先生の力を借りたいだとか」


快はボクっ娘の通訳を聞き、少しでもこの言語に慣れようとする。


「私の力か。異世界と聞いて興奮しない男などいないだろう。もちろん私も一時期は研究していたぐらいじゃないか」

「エレシュ、それ本当なのかしら? お父様は仕事が仕事だから、危ない人が寄ってきているんじゃないか心配なの」


二人の顔のリアクションだけで快にも大体の内容は伝わった。


『とりあえず身寄りのない僕をかくまって頂きたいのですが』


ボクっ娘の通訳。かなり面倒くさい。早く言葉を覚えなければならない。


「勿論だとも! 私の方こそ彼の話を聞きたいものだ! おそらくこれから1ヶ月は眠れない日々が続くだろうな!」


赤髪の男性、ボクっ娘によると〔タイラーゲート先生〕が頬を真っ赤に染めてかなり興奮している。


ひとまずは、快の身寄りは決まった。

そこでボクっ娘、エレシュが提案したのは--

自己紹介だった。




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エレシュを通訳に四人はそれぞれの人物についての情報を共有した。


長田快、異世界人。17歳で体を動かすことより読書したり勉強したり、陰キャなことが好き。好みはツンデレとボクっ娘。

もっとも、この自己紹介の後半部分を理解できたのはテレパシーでイメージがなんとなく送られてくるエレシュのみだったが。


イアンナ=タイラーゲート、深紅の子。同じく17歳。彼女もいわゆる陰キャに属するタイプらしく、また魔法に関しては全体的に優秀らしい。本人曰く得意が無いとの事だが。この大学の校長をしている父親を大尊敬しているというのは本人の口から語られたものだ。


エレシュ=セルバントス、ボクっ娘。またまた同じく17歳。先述の通り回復などの補助魔法特化。イアンナとは従姉妹らしく、色々あって引き取られているらしい。快もわざわざその色々について深く聞きはしなかった。見た目通り優しいらしい。


クローヴィス=タイラーゲート、赤髪の校長。イアンナの父親で相当な親バカ。勉学に人生全振りしたらしくウル神国の歴史と宗教が専門らしい。一時期は異世界なるものにも興味があり、割と本気で研究していたとか。快は先ほどの熱い視線の訳を知り胸を撫で下ろした。


ざっとこんな感じだろうか。快は想像以上に三人が話をしてくれたおかげでかなり安心した様子だった。

しかしやはりずっと気になってしまうことが、意思疎通に通訳を挟まなければならないということだろう。エレシュにお願いして少しずつでも教えてもらうしかない。ここは大学なので新聞くらいあるだろうからそれも参考にしつつ、最終的にはここの図書館の膨大な知識を取り入れたい。


それから、二人のヒロインの位置付けだ。正直普通に考えたらボクっ娘エレシュがメインでツンデレイアンナがサブなのが妥当だろう。しかし何故か彼はイアンナに対して特別な感覚を抱いていた。本人もうまく説明できないような謎な感覚がありそれのせいでどうしてもメインはイアンナである感が実に強いのだ。気付いたら目が向いている。いわゆる一目惚れだろう。

しかしエレシュも勿論いい人でこれからもたくさんお世話になっていくだろうが、〔いい人〕の域を出なかった。


そんなことを考えてからだなんて自分の人間性を疑うが、エレシュに語学レッスンのお願いをした。彼女は再び快く承諾した。




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