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異世界と神とDNA  作者: 夏井 悠
第2章 神の慈悲
24/93

3.魔法陣基礎

 



 目を覚ました快はすでに習慣となっている朝風呂に入り、サッパリとした顔で朝食に向かう。


 そこにはもう三人が揃っており快を待っていた。快が席に着くとエレシュが困った顔で声をかけてきた。


「ずっと思っていたんだけどさ、風呂に入るのは朝食の後ではいけないのかい? 毎日待たされるボクたちのことも少しは考えて欲しいんだよ」


 そう。すでにこの四人の中で快が朝風呂で遅れるということは当たり前になっていた。快も申し訳ないとは思っていたのだが、皆が許してくれることに甘えていたらそれが習慣となってしまった。


「そうね、確かにもう慣れてしまったけどよく考えたらおかしなことね」


「確かに、快君はもう少し真面目な子かと思っていたよ」


 三人からの今さらの総攻撃に居心地の悪そうにモジモジし始める快。


「いやぁ……それはぁ……確かに僕が悪いです……」


 この件に関しては落ち度はまったく快にある。快も認めざるを得ない。そして今快が謝ったことでおしまいになるかと思いきや、珍しくイアンナが追撃してきた。


「じゃあ今から五日間はここに一番最初に着くようにしなさい。じゃなかったら快のお風呂は朝の間封鎖するから」


 なかなかハードな条件を突きつけられた。

 ーーーーまあ朝風呂をやめていつもより三十分くらい早く起きれば余裕だろう。そして皆がいつ頃からか始めるか確認してそのギリギリを攻める!


 快はこの場にテレパシーの最高の使い手がいることを忘れて、そう強く思ってしまった。そして一人が笑いをこらえていることにも気がつくことができなかった。




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 快はこの日を無駄に過ごすつもりはさらさら無かった。


 快の机の上にはかなり分厚い本が一冊、ドンと置かれている。そう、ついに本格的に魔法陣について勉強を始めるのだ。


 朝早くのまだ学生がいない時間帯にささっと第一巻だけ回収してきたのだ。


 窓を大きく開け放ち、机の上には例の万年筆と紙束そして魔法陣の本をセットする。それから実物も手元にあったほうがいいと考えたのでクローヴィスから貰った五枚の魔法陣も脇においた。


 言語の授業は覚えるだけでよかったので、エレシュのテレパシーとこの万年筆があれば時間だけ必要で比較的作業のような学習だった。


 一方魔法陣は基本的な知識を入れた上でさまざまなパターンを見つけたり、繋いだりして最終的には自分で作ることができるようになりたいと考えている。元の世界で似ている教科といったら数学や化学といったところだろうか。どちらにせよ得意な教科ではあるが、時間がかかることに変わりはない。なのであまり焦らずに基礎から徐々に完璧に作り上げて行こうかと計画しているのだ。


 そして第一巻。やはり最初は目次を見て見通しを立てることが重要だ。


 第一巻は魔法陣の概要、分類そして歴史を中心に説明しているらしい。つまりこれだけ分厚いのにもかかわらずまだ本題には入らせてくれないと言うことだ。かなりキツイ。


 そう思いつつも真面目に最初から読み始めるのが彼の数少ない良いところだろう。




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 気付くと日はすでに西にあった。昼食をとり忘れた。しかしそれだけ集中したのにも関わらずまだ概要の半分も終わっていない。本当にハードだ。


 そう思いながら夕食の席に向かう。すると今度はクローヴィス以外の二人が何やら話していた。


「どうかしたのか?」


「どうもこうもないわよ。今大学内で黒髪の少年が話題になっているのよ」


 黒髪の少年。この世界では黒髪は超マイノリティだ。街に出ても大学内の様子を見ても黒髪は全く見当たらない。快が見たことのある黒髪はニンガルとエンリルくらいだ。


 エンリルは一応神なのでカウントしないとすると、人間で黒髪なのは今のところ自分とニンガルしかいない。そして少年なのは自分。イアンナとエレシュともたまに一緒に歩くので話題になるとしたら自分しかいない。


「俺か? でも話題って、俺何も悪いことしてないぞ」


「頻繁に大学の外に出てる?」


 突然何を聞いてくるのだろうか。快は引きこもっているのだが。それを伝えると二人はまた眉間にしわを寄せて顔を合わせる。


「だよね。ボクたちもそうだろうとは思っていたんだけどね。実は今街でその黒髪がよく目撃されているらしいんだよ。ボクたちもあまり外には出ないからよくわからないんだけど、学生が皆その黒髪の少年と快を同一人物だと思ってちょっとした騒ぎになっているんだ」


 黒髪。マイノリティなだけにそれだけで同一人物とみなされるとは困ったことだ。


「ん? でも騒ぎってどういうことだ? そいつは何か問題でも起こしているのか?」


「それが色々あってね。例えば広場の強面店主の珍しい魚を売っている店の店主が殺された事件の犯人は黒髪だって噂があるし、路地裏で女性に声をかけた三人組が揃って首をはねられて殺されたっていう事件の犯人も黒髪だって噂もある。他にも色々あって、世間では悪ではないけれどやりすぎだっていう意見が過半数なんだ」


「ギクッ!」


 快は最初の一つ以外心当たりがない。エレシュとイアンナはあの騒動で快が何をしていたのか知らないので噂を信じているが、これは犯人は二人だ。快と黒髪の謎の少年の。


「確かにそんなに多くの人間を殺すなんてさすがの俺でもーーーー」


 快が一応否定をしておこうと思って口を開くとクローヴィスが入ってきた。そのまま話は中断され、食事が運ばれ、食べ終わり、それぞれは自室に戻っていった。二人も快だとは考えていなかったので特に何も言わなくてもいいだろうと思った。


「しかしそうか、となると黒髪はアルビノくらい珍しいはずなのにここら辺には俺も含めて三人いるってことか。で、あの騒動で俺があの半巨人を殺したのとその後別の黒髪が裁き的なのを始めたのが混同されて俺がアブナイやつ扱いってか」


 嫌な予感しかしない。黒髪なら自分と同じ側の人間かもしれない。大体異世界系で同じ転移者やら転生者やらはろくなことをしない。放っておいたらもしかしたら今後邪魔をしにくるかもしれない。


 しかしニンガルは違う。生まれた時からこの世界の住人だ。それから三人組を全員一太刀で首をはねるというのはかなり高レベルだ。自分がどうにかしようと思いどうにかできる相手でもなかろう。ここは様子見で。




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 数日後、ようやく魔法陣第一巻を終えた。なるほど確かにこれはここまで分厚くなってしまう理由がよく分かった。


 概要では魔法陣の効果と実際に書くときの手順やらなんやら、とにかく基礎の基礎について詳しくわかりやすく述べられていた。


 例えばどうして魔法陣が発動するのか。これは、魔法陣を描くときに使われるインクに魔石の粉末が混ぜられているからで、魔法陣の模様が魔法を行使する際の使用者の意思の代わりの役割を果たすから。


 そしてこの部分の『使用者の意思』についても詳しく、疑問が一切残らない構成だ。


 ちなみに、これによると魔法陣を描くにはまた別のインクとペンが必要だということだ。


 また歴史はおおよそ想像通りではあるのだが二重の天才が魔法の使えない自らの境遇を恨み、自力でどうにかできないかと考えたところ、魔石を混ぜたインクに三重の人の魔力を注ぐと模様を作り出したことに始まる。


 コールも時代が違えばもしかしたらこういった発明をして偉人として名を残していたかもしれない。そう考えると一口に悪人だとは言えない。


 ということで快はようやく第二巻、火の魔法陣について学び始めることとなった。


 ちなみに快が火の魔法陣についてマスターするまで一ヶ月を要したのだが、詳しいことは述べるときりがないので今は述べないでおく。




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 少しだけ遡って快が最初に朝食の席についていなければいけない五日間の初日。


 快は予定通りいつもより三十分早く起きて、朝風呂を省略して部屋を出た。


 すると果たして席には誰もおらず、快は初日をクリアした。とりあえず持ってきた魔法陣第一巻を開き少しでも早く全てをマスターできるよう概要の章を読みふけった。


 しばらくして二番目に席に着いたのはイアンナだった。彼女がきたのは快が来てからおよそ四十五分後。つまり快はいつも通りの時間に起床してすぐさまここに向かえばそれだけで良かったのだ。


「クリアね」


 イアンナはというと、笑顔だ。美しい、うん。


 ちなみにこの世界でも時間は六十進法と十二進法のミックスで、腕時計の時間をセットし直せばそれだけでよかった。



 翌日。快はいつも通りの時間に起きてしまおうかとも思ったのだが、本が意外と読み進まないことと面白いことに気づいたため朝勉することにした。


 昨日と同じように四十五分程遅れてイアンナが来た。


 そして最終日、五日目。この日も快は早く起きて席に向かった。相変わらず誰もいない部屋に快は一人座り、本を開いた。しばらくすると、


「なぁっ!」


 エレシュの驚く声が聞こえた。


 快は時計を見るが、まだ長針が九十度回ったくらいしか経っていない。つまり、このエレシュの動きはいつもとは違う。


「どうしたんだ? いつもよりかなり早いけど」


「うぐぅ……」


 エレシュが悔しいような気まずいような顔をしている。どうしたのだろうか。そう考えていると快は一つの仮説にたどり着いた。


「あ、もしかしてお前、あの時テレパシーでも使って俺の考えを読んで最終日に俺の朝風呂を禁止にしようとでもしたのか!」


「ぐっ……ふん! その通りだ! よく分かったな!」


 開き直った。


 その後エレシュは恥ずかしいのを隠すためなのか全てを自白した。と言ってもすでになんとなく想像はついていたので特に驚きはしなかった。


「なんでそんなことをしたんだよ」


「ボクはただ朝快の顔を見るのを焦らされるのが嫌なだけだったんだよ! 別に風呂は朝食の後でも問題ないから、それなら別にボクのワガママを少しぐらい通しても良いかなって……」


 全く、エレシュにはため息だ。そう思いつつも自然と笑みがこぼれてしまう。エレシュもつられてはにかみながら笑う。


 さて、この光景を朝イチに見たイアンナのこの日の調子は、述べるまでもないだろう。




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八月中は投稿が遅れます。

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