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異世界と神とDNA  作者: 夏井 悠
第1章 伝わらない異世界
15/93

14.魔法!

遅れてしまい申し訳無いです。


色々と大変だったもんで。




快が異世界にやってきてからちょうど十三日目。それまでの間、特に何か新しい変化があるわけでもなく新しい日常は着実に定着していた。


朝昼晩の食事では快がハブられた後、二人で話し込む快とエレシュにイアンナがなんとも言えない悲しい表情を向ける。


その後イアンナとクローヴィスはそれぞれ自室で学を深め、快とエレシュは童話を一本ずつ読む。そしてニンガルは黒い影となって快と大学を見守る。


そんな繰り返しの日々が続いていたある日。


「今日は休日だ。二人は快君に休憩がてら色々と見せてあげなさい」


この世界では十三日を一つの区切りとして日が回っているらしい。そして今日は一週間に一度の休日だった。


ちなみに、日常会話レベルなら聞き取れるようになっていた。食事中の会話が聞こえないのは、最新の論文について三人が語り合っているからだ。聞き取れるわけがない。


「でもお父様、何をすればいいのでしょう?」


真紅の令嬢の上品な言い回しを聞き取れるようになった快は、最近一人で勝手に盛り上がりがちだ。もちろんそれを間近で感じるエレシュはあまり良い思いをしていないが、快がボクっ娘大好きなことはすでに伝えてあるのでその思いを何かしらの形で表現するまではしていない。


「ボクは魔法とか見せれば良いと思うよ。もちろんイアンナのね」


「イアンナの魔法ですか! 見たいです!」


快は異世界に来てから魔法らしい魔法は見ていない。いつもテレパシーは受けているが、やはり目に見えないのでどこか物足りない。イアンナはそういった魔法も得意だと聞いているので、このままいけば魔法をこの目に収め、さらにはイアンナにお近づきになれる。そう考えるだけで胸が踊った。


「そ、そんなにおっしゃるなら仕方ないですね……別に、異世界人に良いところを見せたいって訳じゃ、ありませんからね?」


イアンナが明らかにいらない一言を、もちろん需要はあるが、付け加えながらも了承しこの日の過ごし方は決まった。




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やることの決まった三人は早速大学を出た。


『二つ質問したいんだけどいい?』


『ボクに?』


テレパシーを使っているのだから他にだれがいるのかということは我慢。


『ああ。まずなんで今テレパシーを繋いでいるのかって事で、次に今どこに向かっているのかって事』


『前者は黙秘。後者はマジックジムだよ。この世界で、魔法は剣術や体術と同じ扱いだからね。実力を上げたりなにか試したりするには専用の施設が一番なんだ』


ネーミングセンスに対してのコメントは控えておいて、マジックジムがどのようなところなのか想像してみた。しかし、最初の頃エレシュが魔法の能力は生まれた時に決まっていて細かい調整ぐらいしか成長の余地はないみたいなことを言っていたが。


何をするところなのだろうか。本格的にわからなくなってきた。


その後ほんの少しだけ歩くと、白い豆腐建築の建物が見えてきた。どうやらここがマジックジムらしく、二人は何の躊躇もなく入っていったので快も二人の後ろをついていった。


中に入ると、地域の子供センターにある小体育館程度の部屋が五、六部屋あった。壁には恐ろしく複雑で恐ろしく大きい魔法陣が施されており、これによって壁に向けて放たれた魔法は霧散するらしい。


「ん、んん。か、快君。ここでは主に、三重の人々が魔法の組み合わせの実験や練習をしているところです。魔法は組み合わせることで真価を発揮するといっても過言ではありませんから。因みに今言ったことは全て先程エレシュにテレパシーで送られてきたものですし、別に私が説明したくてしたわけではありません!」


早口でまくし立てたイアンナについつい笑みが出そうだったが我慢していたのだが、


『本当に彼女は面白いね』


エレシュが耐えきれないといった風にテレパシーを送ってきた。テレパシーも悪用するとなかなかにタチの悪いものだ。


そんなこんなして空いている部屋に入るとすぐに講義が始まった。




<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<




「せっかくイアンナもいるから、今日はウル語でいくよ。わかんないところがあったら随時聞くように」


「了解です」


「それじゃあまずは簡単に。この前言ったように、この世界には火、水、土、風、陰、陽の六つの基本魔法属性がある。これにも、人が発するものも魔法陣をあらかじめ付与して発動するものがある。それから、召喚魔法と転移魔法、治癒魔法がある。まあ後で詳しく説明するよ」


本当に簡単にまとめられた説明を聞くと、今度はイアンナが出てきた。


「とりあえず、基本の方は陰以外は私がやります。まず火はーーーー」


イアンナが軽く説明した後に実演というのを五回繰り返した。


火の魔法。火の玉の射出や火炎放射ができる。ちなみに全ての魔法で詠唱は不要らしい。彼ら三重の人々は快が、ものを考えたり歩いたりするのと同じように魔法を使える。圧倒的な格差。

また、イアンナはまだできないそうだが、タイラーゲート家の人間は代々火の魔法が超高レベルらしく、クローヴィスは急激な温度変化を上空で起こして落雷を誘うことができるとかなんとか。


ーーーー兄貴に一族を殺されたのか?



水の魔法。とりあえず水を作り出す。射出する水弾から相手を閉じ込める水球、さらには術者を中心に大波が現れるものまであった。また、火の魔法との組み合わせで熱湯弾をつくったり、実演はなかったが水蒸気の熱膨張で辺りを吹き飛ばすことまでできるらしい。


「て、イアンナって本当に魔法が得意なんだね。こんなにやばそうな魔法をいろんな属性で使えるんでしょ?」


「そ、そそそうですねっ! まあ、これが仕事みたいな感もありますので……」


何故こう彼女は接する強さが毎回違うのだろうか。テンパったりツンしたりたまにデレしたり。可愛らしいので許すが。



土の魔法。これも文字通り。石や土の弾を作って射出したり、地面を隆起させたり。火と組み合わせて溶岩、水と組み合わせて沼地を披露してもらった。



風の魔法。これがカッコよかった。竜巻を起こしたり、岩を真っ二つに〔斬っ〕たりと攻撃に持ってこいな魔法だった。また他の魔法と組み合わせるのもバリエーションが豊富で特に炎の竜巻は圧巻だった。


また、イアンナも初めて挑戦するという新しい魔法の練習もあった。エレシュと快は部屋の外から窓で様子を伺った。


それは火、水、土、風の四属性を同時に扱うというもので、イアンナは成功するかかなり心配していたが一発で成功した。ちなみにエレシュ曰く四属性の組み合わせはかなり人外級らしい。


その内容がかなりの衝撃で、本人によると水を核にしてその周りに融けにくい岩石、溶岩を順番に作り出し、ものすごい圧力で圧縮したそれをざっと二百個作り出す。それを風の魔法で自分の周囲を回転させたり不規則な動きをさせたりして、好きなタイミングで破裂させるというものだった。


この破裂による被害が尋常ではなく、巻き込まれた石像は粉々にされた後にドロドロにされていた。ちなみに破裂という表現はイアンナが使っていたから借りているだけで快としては爆発と呼びたかった。



そして、イアンナ最後の陽魔法。陽魔法は要はバフだった。皮膚を一時的に硬くして防御を上げたり、移動速度を上昇させたりしていた。視力も上げられるらしく風の魔法を超圧縮してスナイプもできるんだとか。


一通り拝見してからの感想。


「え、イアンナ以外もこれくらい楽勝なの? それともイアンナの魔法能力が高すぎるだけ?」


イアンナの魔法は、例えて言うなら元の世界で読んだラノベの主人公レベルだった。ここまで違いが出るのなら〔らせん構造差別〕的なものがあっても何一つ不思議じゃない。快はいよいよ異世界生活での状況の悪さに不安になってきた。


「ハハハ、そんなわけないじゃないか! イアンナはタイラーゲートの一族の中でも突出した才能を持っているんだよ。ほとんどの人間は一つの属性をイアンナの半分くらいしか扱えないんだ」


「そんなことはありませんよ。現にエレシュの陰魔法は私には考えられないほどの効果があるじゃないですか。それに治癒魔法だった使えるんですし」


その後も二人がお互いにベタ褒め合いを続け、快は感心するやらめんどくさいやらで何とも言えない表情で二人を眺めていた。


しばらくして陰魔法についてとなった。


「陰魔法は陽魔法とは反対で相手に不利な状態異常を与える魔法なんだよ。そこでテレパシーがなぜ陰魔法なのか先に説明しておこう。陰魔法の状態異常は相手の感覚神経を過度に鋭敏にしたものなんだ。例えば目くらましは視神経の情報量を処理しきれないサイズにまで拡張しているんだ。そして一昔前にとある学者が、人間の脳から発される特有の電磁波を発見した。これはその人の思考を他の部位に伝えるためのもの。さらに別の学者が人間の脳内にある電磁波を感知する部位を発見した。彼らはお互いに、これらと陰魔法を組み合わせることでテレパシーができると考えた。そして二人は研究の過程でお互いの存在を知り合い最終的にはテレパシーを開発したんだ」


「へー! すごいね! でもなんか陽魔法と似てない?」


「その通りなんです。テレパシーの開発によって陰陽の魔法は根本は同じだということが広く認められました。なのでそこの線引きも実は曖昧なんですよって、エレシュに言えって言われました」


イアンナの余計な一言は無視して、その後は実演として視覚、聴覚、触覚を順番に失わされ、最終的には全て奪われた。それこそ宇宙に放り出された感覚がしたので何だかんだ最強の魔法かもしれないとさえ思えた。


次に魔法陣についてだった。これは快の万年筆にも付与されていることから分かる通り、三重でなくても魔法が扱える。しかし当然のごとく威力はどれも弱く、イアンナならば片手間で打ち消してしまいそうだった。明らかに使えない。これもサイズが大きくなればこの部屋の壁のように効果が強くなるらしいのだが。


「それじゃあ、先程説明しなかった召喚、転移、治癒魔法について教えよう。

まず、召喚魔法。これは獣人でないと扱えない。森と契約した三重の獣人が一定の魔力を消費することで大きな獣を呼び寄せ、操る。残念ながら見たことはない。

次に転移魔法。これはまさに才能だね。ボクもイアンナも扱えない。使えるか否かは生まれた時に決まっていることで、確率としては十万分の一だ。生きているうちに使い手に出会えたら相当ラッキーだね。この魔法は自分や他人を一度でも存在したことのある座標に送る。ちなみにその座標の経験情報は転移の対象と術者の間で共有されるらしいよ。

最後に治癒魔法。これも生まれた時に決まっているものだが確率はそう高くない。現にボクも使えるわけだし。これは肉体のダメージならばなんでも治せる。まあ、この平和な時代には無用かな?」




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そんなこんなで感想やらなんやらを聞かれ三人は帰路についた。


「あれ? 夕方じゃん」


「そうですね。せっかく綺麗なのに異世界から来た邪魔者がいるせいで冴えませんね」


イアンナがツンというよりグサをはなってきた。こうかはばつぐんだ!


「イアンナ、そんなことを言うのは好かれる行動じゃない。もう少し素直になったらどうなんだ」


「素直? この私が快君のことを良くおも……」


「「え?今何と?」」


その後は険悪なんだか仲直りしたんだかはっきりしない空気で歩き、再びいつも通りの日常のレールに戻りつつあった。




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快は自室で、今日学んだ単語やら表現やらを書き出した。


随時、発する、真価を発揮する、〜したくてしたわけではない、レベル、急激な変化を誘う、突出した〜を持っている

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