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おっぱいシリーズ

何が人を人だと決定するか――少年はおっぱいであると高らかに叫んだ――

やあ!

シリーズから前作とかも読んでくれると嬉しいな!

 あるところに聖なる気に満ちる森があり、人々はその森を聖域と呼んだ。

 聖域には一匹の美しき白銀の狼が住まい、森に満ちる気配と同じ聖なる気を纏う狼をその地に住まう人々は聖獣様と崇めた。

 その聖域たる森のすぐ側にぽつんと一つ三階建ての家が建てられている。

 白々煉瓦と呼ばれる真白の美しい煉瓦からなるその家は荘厳ながらもどこか温かく、訪れるものを優しく受け入れてくれるかのよう。

 そんな美しい家にて今、一人の男が目を覚ました。


「はっ!」


 男はパチリと目を開き、周囲を見渡す。

 まずは空気の流れをたどり窓へ。

 落ち着いた内装の室内に、開けられた窓から優しく風が流れ込む。

 一嗅ぎすればすっと落ち着くような優しい匂いがして、よく見れば窓の側に何やら小さい瓶がある。中には何か液体が入っていて、そこに棒が数本浸されている。

 次に反対側へと目を向ける。

 まず目につくのは大きな暖炉。もっとも今は時期ではないのだろう、使われてはいないようだった。

 その上には麦と木で作られた、やや大きい人形があった。実に巧みに作られており、それが狼を象ったものであるとすぐに分かるものだ。

 暖炉の前は広くスペースが空いていて、何かの毛皮が小山のようにまとめて置かれている。

 ふと、その毛皮がもぞもぞと動き出す。

 毛皮の中になにかいるのだろうか。

 ――違う。

 それが毛皮ではないと男は気づいた。

 同時に男は意識を失う直前のことを思い出した。

 白銀の狼。それが転じて美しいけもの娘となった。

 その娘に導かれるまま手をおっぱいへと伸ばし、そこで意識が途絶えたことを思い出した。


「っ……!」


 ふいに意識が明瞭となり体をおこそうとしてズキリと走る頭痛に頭を抑える。

 その痛みに思い出す。そう、確か意識を失う直前に頭にすごい衝撃を感じたのだ。

 男はじっとして痛みが引くのを待った。思ったよりはひどい怪我でもなかったようで深い呼吸を三回する頃にはすっかり痛みは引いていた。

 それを確認してまたゆっくりと体を起こし始め今度は頭痛もしないことにホッと一息吐くと、改めて毛皮――件の白銀の狼へと目を向ける。


「お……はようございます?」


 気づけばその狼がじっと見ていて、目があった。

 少し驚きながらも戸惑いがちに気の抜けた挨拶をして目をそらさない。狼もまたじっと見つめ返す。

 そうして見つめ合いながらなにやら違和感を抱き、気付く。

 森の中で出会ったときは見上げねばならぬほど大きな狼だったが、今は見上げること無く目を合わすことが出来ている。


「えっと……森で出会った子だよね?」


 だが男は直感的に森で出会った狼だと思い、確かめるように声をかける。

 すると狼はガウっと小さく吠え、尻尾をブンブンと振る。ちゃんと気づいてくれたことを嬉しく思っているようだった。

 それから狼はのそりと男のもとまで寄ってくる。ただ寄ってくるだけでなく一歩進むごとにその体を变化させている。

 そうして男のもとにつく頃には森で見たあのけもの娘となっていた。

 そして狼娘は男の対面に座るとぐいっと胸のあたりを突き出してじっと男を見た。


「っ!!!」


 その瞬間男は全身に稲妻が走ったかのような衝撃を感じた。

 意識を失う直前のことを思い出してのことだった。

 ――おっぱいだ……今、この子は再びおっぱいを揉ませてくれようとしてくれている……!

 今更ながらこの男の名は多田隆、十七の思春期真っ盛りでおっぱいが大好きだ。

 あまりに好きすぎて日本にて隕石に頭部を撃ち抜かれる運命を手繰り寄せ、女神の乳を揉みたいと口にして地獄行きを決定されるも奇跡的に異世界に流れ着いた男、多田隆である。


 そして隆は経験から学べる男だった。

 日本でまごついてる間に命を絶たれ、女神におっぱいをお願いしたら地獄へと向かわされ、異世界でついに願いが叶いそうになった衝撃に固まっている間に意識を失った。

 故にこそ此度は迅速だった。

 狼娘の意図に気づいた隆はすぐさま手を動かした。

  まず神聖なるおっぱいに対して失礼が無いよう現状でできる程度に手を清め、それから力を込めすぎずさりとて脱力もほどほどにしておっぱいへと手をのばす。


 そう、彼は経験から学べる男だ。

 だからこそ今回もまた彼はおっぱいを揉むことは出来なかった。

 ついに揉もうとしたその瞬間。隆はゾワリとしたものが背筋を走るのを感じた。

 感じた悪寒に対し、彼はコンマ一秒の遅れもなくその場から退避した。なぜ森で意識を失ったのかを覚えていなくとも体は十分に学習していたのだ。

 おかげで隆の頭を潰さんとするメイスは空を切り、先程まで寝ていた布団を強く打ち抜くだけにとどまった。

 隆はそれを振り下ろしたであろう人物へと目を向ける。

 とても可憐な少女だった。年は隆と同じぐらい。長い金の髪を携えて、殺意を込めた目で睨む顔はしかし、確かな美を備えている。

 少女は神官風の白い衣装を纏い、首から下に肌の露出は一切なく、それどころか体のラインすら分からぬようになっている。

 しかし隆はそこにおっぱいを見出だしていた。

 具体的な大きさこそ分からないが無ではない。本物のおっぱいがそこにある。服に隠されているからこそ見えるものがそこにはあった。

 この時点でいきなり攻撃されたことに対する不満の一切が隆の中から消失した。

 隠された状態でなお素晴らしいと確信できるおっぱいの持ち主のなにを恨めるというのか。

 そんな澄みきった心のままに隆は少女を見つめ、彼女の行動を待つ。


 一方、少女はそんな隆の雰囲気に言い知れぬものを感じて動けずにいた。目の前の男が異質に見えて仕方がなかった。攻撃された直後なのになんと澄んだ目をしているのだろう。しかも一切の防御体勢を取らず、体のどこにも無駄な力の入っていない自然体でただそこにいる。

 咄嗟の事態に混乱しているのではない。全てを把握してなおそうしているのだ。

 完全に虚を突かれた形だった。

 いつの間にか少女は敵意の維持すらも難しくなっていた。


「……おはよう、ございます」

「あっ、はい。おはようございます」


 彼女の心中の揺らぎを知らぬ隆は意外にも緩やかなアプローチに少し面食らいながらもそれに返す。

 どうやらひとまず怒りの矛を納めてくれるようだ。

 そうして少し場の空気が緩んだのを感じたのか、それまで傍観に徹していた狼娘が動く。

 狼娘はトコトコと少女に近づいていくと小さく首をかしげて、


「お前もおっぱい揉みたいか?」


 と、問いかけた。

 それを聞いて隆はしゃべれるんかーい、と心中でツッコミを入れ、少女は大きくため息をついていた。

 相変わらずこの聖獣様は時折突拍子もない事をいうものだ。


「お前もって……もしかして聖獣様から揉ませようと? 少しは恥じらいとかないんですか」

「フィーもそろそろ子を残す頃。それは恥ずかしいことじゃない」

「それはそうですけども……」

「それにこれは天がフィーにくれた贈り物。どうするかはフィーの自由」


 隆を指さして狼娘――フィーはそんなことを告げる。

 その言葉に眉にシワを寄せながら隆をじっと見る少女だったが、どうみても普通の人間の男にしか見えない。何を以て贈り物だと思ったのかとフィーに問いただそうするがすぐにやめた。

 残念ながら聖獣と崇められるこの狼娘は説明が得意ではないことを知っている。故に少女は隆に対して問いかけることにした。


「聖獣様はこう言ってますけど、あなた、何か心当たりとかありますか? そもそもどうして聖域にいたんですか?」

「うーんと……信じてくれないでしょうけども」


 問われ、隆は少し困リながらもそう前置きして自身でわかっている範囲でのここまでの成り行きを話すことにした。


「なんかこことは別の世界で死にましてですね? それで美しい女神様に地獄っていう悪い人の魂が向かう場所に送られたはずなんですけど、なんか気づいたらあそこにいました」


 細かいところは省いてざっくりと説明する隆。

 なんとも雑な説明だが、実のところ死んで魂のみであったときの記憶はすでに朧気でありその程度の説明が限界だったのである。

 しかしながらその説明に思い当たることが少女の知識の中にはあったらしく、彼女はどこか納得した様子を見せていた。


「ああ転生者。そういう存在がいると知ってましたが……聖獣様の話も合わせると魂に合わせて肉体が用意されたパターンですか」

「あ、結構いる感じなんですねそういうの」

「ええ、それなりに」


 少女の言葉に隆は少し面食らうが、自身という例がある以上他にもいるのは当たり前だろうなと納得する。

 実際、この世界ではそれなりに転生ないし転移によって異世界から訪れるものはいる。

 そうはいってもやはり異世界の者となればまあまあ珍しいのだが、他の世界から来たってだけでさして役に立つわけでも偉業を打ち立てたりするわけでもないので関心は非常に薄い。

 なにせ特別な力を授かるわけでもなければ、隆がそうであるように以前の世界の記憶は時間が経つごとに朧気になってしまうのだ。異世界の者であることのアドバンテージなどないのである。


「なるほど。ところで、今更ながら名前など聞いても? あ、俺は多田 隆っていいます」

「アーチェと申します。えと、もしかしてアレ……なんでしたっけ……そうそう、姓っていうのがあるタイプですか?」

「あーこの世界そういうのない感じですか。だったらタカシで大丈夫です」


 思わぬところで文化の違いを感じてまさしく異世界に来たんだなあと隆は実感する。

 それからアーチェは何かを思い出すように首を傾げる。


「さて、もともと何の話でしたっけ……ああ、そうだ」


 不意にアーチェの雰囲気が変わる。

 先程までの穏やかな空気が一変してほのかに緊張を含むものになるのを隆は感じた。


「それで、タカシさん? あなたどういうつもりで聖獣様の胸を揉みたいなどと?」

「おっぱいを揉みたいと思ったからです」


 ピシリと亀裂が走るような音がした。もちろん隆が勝手に生んだ幻聴にすぎない。

 しかし確かにそんな音を隆は聞いたのだ。

 自らの口からでた言葉に隆自身驚愕していた。

 あの時と同じだ。どういうわけだか全く考えてもいなかった言葉を口に出していた。

 アーチェはといえばピタリと動きを止めている。瞬きすらすることなくじっと隆を見ている。

 まずい空気だ。再びメイスの一撃が襲いかかるのも時間の問題だろうという予感があった。

 だが奇妙なことに恐怖感は一切湧いてこない。

 困惑こそすれども隆の胸のうちには言うべきこと言ってやったぞと! という清々しい思いに満ちていた。

 そして隆は気付く。

 なぜこの状況で恐怖を感じないのか。

 それはおっぱいは素晴らしいということを知っているからだ。

 素晴らしいおっぱいを求めることに何を恐れる必要があるのだろう。それを求めてこそ人だ。

 おっぱいはつまり人の証なのだ。

 人の証を打ち立ててはたして何か問題があるだろうか。いや、ない。

 じゃあ今すべきことは何か。

 逡巡は僅か。すでに隆はその答えを得ていた。


「アーチェさん! よければ、おっぱいを揉ませてはいただけないでしょ――ウボァッッッ!?」












 ――――これはおっぱい大好き少年多田隆が全てのおっぱいを肯定し、おっぱいは素晴らしいんだよってことを世に広め、やがてはおっぱいの伝道師と呼ばれるまでの物語の幕開けに過ぎない。










正直今回は執筆中の狂気度が足りなかった気がします。もっと狂気に振り切りたかった。

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