幽霊怪談義
不問2人用声劇台本です。
使用はご自由に!
上演前に連絡を頂ければ喜んで聞きに参ります!!!
出来れば録画を残して下さると助かります。
キャスト
A(不問):
B(不問):
果ての無い階段前、1つの人影が辺りを見渡している
A
「ぐえぇぇぇ…何だこりゃ」
そこへ、別の人影が歩き寄ってくる
B
「これはまた…どこまで続いてるんですかねぇ」
A
「いてっ、何だ!?」
B
「おや、これは失礼致しました。
上を向いて歩いていて前方不注意だった様です。
お怪我はありませんか?」
A
「…いや、つうか……」
B
「初めてここで、自分とは違う個体に出会えましたよ。
やはりホッとするものですね」
A
「はぁ?
あんた、何言ってんだ?」
B
「おそらくここは…いえ、結論を出すのは尚早というものでしょう」
A
「人の話聞いてんのか、てか聞こえてんのか!
あぁ!?」
B
「聞こえていますよ。
随分荒い口調の持ち主の様で」
A
「そういうあんたは随分と、嫌味ったらしい口調の持ち主だな」
B
「そうですか?
これは失礼しました…では、お詫びに貴方を立ててお聞きします。
ここはどこでしょう?」
A
「はぁ?
立てる意味が分かんねぇ」
B
「いえいえ、ご理解頂けるかと…
私は、貴方がここを知っているだろうと確信したからこそ、お聞きしたのですよ?」
A
「何で知ってると確信したんだ?」
B
「勘です」
A
「根拠無しかよっ!」
B
「えぇ。
で、どうですか?」
A
「知るか、と言いてぇとこだが……現実世界じゃねぇ事は確かだろうな」
B
「ほう?
そう思う理由をお聞かせ頂けますか」
A
「見りゃ分かんだろーがよ。
立ち込める霧、目の前にゃ先の見えねぇ上り階段。
あんたも自分も姿はハッキリしねぇ」
B
「ふむ…それで?」
A
「こんな状況が現実世界にあると思うか?
少なくとも自分にゃ記憶に無ぇな」
B
「記憶に無い……さて、それはどうでしょうね」
A
「あん?
そりゃどういう意味だ」
B
「…貴方は、記憶、があるんですか?」
A
「……どういう意味だよ」
B
「私には、記憶がありません。
気付いたらこの場にいました。
それまでどこにいたのかも、私がどんな人間だったのかも分かりません。
いえ……人間だったのかすらも…」
A
「…人間、だろうさ」
B
「何故そう断言出来るのです?」
A
「…勘、だ」
B
「そうですか」
A
「……記憶、か…
そういや、どうなんだろうな…」
B
「とにかく、する事が1つなのは、確かでしょうね」
A
「…あぁ……そうだな」
B
「ここで貴方と押し問答しても、何も進みはしないでしょう。
昇りますか」
A
「この長ったらしい階段をか」
B
「他に昇れそうな物は見当たりませんけどね。
あ、私には見えないだけで、貴方には他にも何か見えてるんですか?」
A
「そういう意味で言ったんじゃねぇよ!」
B
「それならいいんです、共通認識が出来ているという事で。
では、昇りましょう」
A
「かったりいが、それしか無さそうだな」
2人、階段をゆっくりと昇り始める
B
「………」
A
「………」
B
「………」
A
「……ん、そういやあ……なぁ、ちょっとあんた」
B
「何ですか?」
A
「自分達はナニでこの階段を昇ってんだと思う?」
B
「おかしな事を聞きますね、それは勿論、足でしょう」
A
「つーかさ、いつまでもあんた呼ばわりも何だな、Bって呼ぶわ」
B
「びい?」
A
「A、B、CのBだよ」
B
「なるほど。
いや、ちょっと待って下さい。
何故私がBなんです?」
A
「こっちがAで、あんたがBって事だよ」
B
「それなら私の方がAでしょう?」
A
「あぁん?
何でだよ、こっちがAだろ」
B
「いいえ、どこからどう見ても私の方がAです」
A
「誰がどこからどう見てるんだ!?
つーか、自分もあんたも姿形がモヤッとしてんだから、視覚でどう判別するんだよ!」
B
「それもそうですね。
では、口調で決めましょう。
私の方が丁寧に話していて、Aらしさが際立っているじゃないですか、どこからどう聞いても」
A
「ちょっと待てよ。
Aらしさって何だ!?
その理屈でいくと、こっちにはBらしさがあるって事か!?」
B
「そういう事になりますね」
A
「てか、Aらしさとか、Bらしさって何だよ!」
B
「分かりませんか。
Aはこう…シュッとしていてスマートなイメージです。
それに比べるとBは野暮ったくて粗野ですよね」
A
「随分と乱暴な決め付けだな。
それは何だ、こっちが野暮ったくて粗野だって言いてぇのか」
B
「そう言ってますが、伝わりませんでしたか?」
A
「あんた、ホンットに嫌味ったらしいな!
それでよくスマートだなんて言えたもんだ」
B
「というか、私は実際エリートでしたから、Aでいいんです」
A
「はぁ?
さっきあんた、記憶無いっつってたじゃねぇか」
B
「勘です」
A
「また勘かよ!」
B
「ですが、紛うことなき事実だと、貴方も思いませんか?
丁寧な口調、洗練された物腰、チクチクと相手を刺す嫌味の羅列。
ほら、エリートでしょう?」
A
「……分かってはいるのな」
B
「ご理解頂けた様で何よりです」
A
「だがあんたはBで決定だ。
そこは譲れねぇな」
B
「何故です!?」
A
「あんたが後から来たからだ。
登場人物は先にいた方がA、後から来た奴がBって相場が決まってんだよ。
あんたはB、自分がAな。
次からはAって呼ばねぇと返事しねぇから」
B
「なっ…
別に、話す必要も無いし、呼びませんからね!」
A
「………」
B
「………」
無言のまま暫く歩を進める2人
B
「…あっ」
A
「っ!?」
B
「ちょっと忘れかけてましたけど、さっきの一体何が言いたかったんです?」
A
「………」
B
「…いや、まぁ、別にいいんですけど……
でもやっぱり気になるんですよねぇ…」
A
「………」
B
「はぁ……分かりました、分かりましたよ…
ここはエリートである事の証明として、私が譲ってあげましょう。
Aさん?」
A
「何だよB!」
B
「うわぁ、あからさまに嬉しそうな声出さないで下さいよ…素直過ぎて逆に気持ち悪いです」
A
「うっせぇ!
で、何だよ、気になる事って。
あぁ、下らねぇ事だったらまたシカトするからな」
B
「シカトって、子供ですか貴方…
いや、さっきAさん、この階段を何で昇ってるか、聞きましたよね?」
A
「ああ。
そんで、Bは足だと答えた」
B
「ぐっ…Bと呼ばれる事がこんなにも屈辱的とは…!」
A
「ふふん、先に折れたのはそっちだ。
甘んじて受けろ!」
B
「うぅっ…!
あ、いやいや、また話が逸れる所でした。
Aさん、貴方…足、あります?」
A
「はぁ!?
何言ってんだB!
足ならここにーー…」
B
「どこに?」
A
「無ぇな!」
B
「無いですよね。
感覚はあります?」
A
「感覚はあるな。
だからこそ、ここまで昇ってきたんだ」
B
「という事は、単純な話、目視出来ないって事ですよね」
A
「もくし?」
B
「失礼、Aさん、思った以上に馬鹿でした。
やっぱり今からでもBAKAの頭文字を取ってBになりません?」
A
「………」
B
「……やれやれ、分かりましたよAさん」
A
「おう、何だ?」
B
「えーと、目視出来ないっていうのは、見えないって事ですよ」
A
「最初からそう言え!」
B
「はい、今後はレベルを下げてお話しますね」
A
「ぐっ……で、足が見えないから何だってんだ?」
B
「ここで1つ、仮説が立てられます。
あ、えーと…」
A
「カセツくらい分かるわボケッ!
で、ボケのBさんよ、あんたの立てたカセツってのは何だ」
B
「はい、(小声)あほんだらのAさん」
A
「あん?
今何つった?」
B
「何でもありません、Aさんとお呼びしただけですよ」
A
「そうか、ならいい。
で、カセツって?」
B
「あぁ、そうでした………いいですか、驚かないで下さいよ?」
A
「お、おう…」
B
「我々は…」
A
「宇宙人か?」
B
「宇宙人には足があるでしょう!」
A
「そう決め付けるのはどうかな。
B、あんた宇宙人見た事あるかよ?」
B
「実際に見た事はありませんが、グレイはちゃんと足があるじゃないですか」
A
「あれは陰謀だ!
NOSAの策略だ!!!」
B
「何故そう言い切れるんです?」
A
「見た事が無いからだ!」
B
「ふむ、となるとーー…私の仮説も根本から否定されそうですねぇ」
A
「ナゼそう言い切れるんだよ!」
B
「真似しないで下さい。
大体、Aさんの口から何故という言葉が出て来ると物凄い違和感です」
A
「何でだよ!!」
B
「そうそう、その調子で頼みますよ」
A
「馬鹿にされてる気分だ」
B
「そうですけど?」
A
「何だと!?
って、また話が逸れたじゃねぇか。
何だ、わざとか?」
B
「おや、気付きましたか」
A
「馬鹿にしてんのか!?」
B
「それ、さっきも言いましたよ。
覚えてないんですか、それは大変残念です…」
A
「いい加減にしろよ、今度はAさんって呼んでも返事してやんねぇぞ!」
B
「あぁ、それはちょっと困ります」
A
「そうだろそうだろ!」
B
「えぇ、何せこんなに弄り甲斐があって面白いんですからね」
A
「そりゃどういう意味だよ!」
B
「そのままですよ。
では、面白いAさんに免じて私の仮説をお話しましょう」
A
「ここまで来るのに随分無駄話しちまったな…」
B
「少し考えれば分かる事なんですけどね、我々は……ワレワレハ〜〜〜…」
A
「扇風機あるあるはいいから早く言え!」
B
「ノリが悪いですねぇ。
コホン、えー、我々は、幽霊ではないかと」
A
「幽霊だぁ!?」
B
「えぇそうです。
未だ立ち込める霧、昇っても昇っても終わりの無い階段、モヤッとして姿のハッキリしない私達、そして、見えない足!」
A
「……いやぁ、そいつはどうかなー?」
B
「反論は受け付けません」
A
「何でだよっ!」
B
「私の勘が正しいからですよ。
いつだって、私は正しかった」
A
「はぁん?
記憶無えんだろ!?」
B
「では、Aさんはこの状況を見てどう判断出来ると言うんです?」
A
「うっ…そ、それは……」
B
「私を納得させる説明が出来ますか?
出来ませんよね、そうでしょう」
A
「だ、だがっ、そう決め付けるには早いんじゃねぇか!?」
B
「分かりました。
では、何か思い付いたら物は試しで言ってみて下さい。
とにかく、先程の仮説を元に話しましょうよ」
A
「ま、まぁいい…聞いてやろうじゃねぇか」
B
「私達が幽霊だと仮定して、ここは死後の世界とします。
となるとAさん、この階段の先には何があると思いますか?」
A
「そりゃあ…天国、とかじゃねぇの?」
B
「天国…それはどうでしょう?
私は分かりますが、貴方は…ねぇ」
A
「そりゃどういう意味だよ!」
B
「分かりませんか」
A
「分かりたくねぇな!
大体、そんな事言い出したらあんただって怪しいもんだぜ?」
B
「何故です?」
A
「自覚してんだろ、その嫌味ったらしい喋り方!
エリートだか何だか知らねぇが、それで大勢傷付けてきたんじゃねぇかね」
B
「ふむ……」
A
「つうかよ、仮に自分達が幽霊だとして、目の前にある上り階段を昇っていて、その先が天国に繋がってるっつーのは安直な考えなんじゃねぇのか?」
B
「おや、おかしな事を言いますね。
この先が天国だと言ったのはAさんですよ。
鳥頭なんですか?」
A
「断定はしてねぇだろ!
天国とかって言ったんじゃねぇか!」
B
「今度は揚げ足取りですか、やれやれ…」
A
「足なんか見えねぇよ!」
B
「あ、すみません、Aさんのレベルに合わせるのを失念していましーー…いや、忘れておりました」
A
「いちいち言い換えるな!
前後で意味分かるわ!」
B
「はいはい、大きな声出さないで下さいよ…ただでさえ昇り続けて疲れてるんですから」
A
「じゃあ聞くけどよ、Bはこの階段の先に何があると思うんだ?」
B
「そうですねぇ…
死後の世界というものが実在するかどうかなんて、今まで考えた事もありませんから…」
A
「そうかい。
そいつは平凡な人生送ってきたんだな」
B
「…どういう事です?」
A
「生きてりゃあ、いい事ばかりじゃねぇ。
時には死にたくなる様な思いもする。
あんたは、死後の世界を想像しなくちゃならねぇ様な出来事とは無縁だったって訳だ」
B
「……さぁ、どうですかね。
何せ記憶がありませんから」
A
「それ」
B
「…はい?」
A
「なぁ、今まで話してみて気付いたんだがよ。
お互い記憶が無いっていうのに、何で今昇っているのが『階段』で、『宇宙人』だの『天国』だのって言葉が出てくるんだ?
おかしいと思わないか」
B
「そういえば…
まぁでも、そんな事は些末な事ですよ、今は」
A、立ち止まり、Bを見据える
A
「それこそが貴様の罪だ」
B
「……な、何ですか、突然…」
A
「エリートを気取り、他人を見下す事で悦に浸る。
貴様の物差しでのみ、物事を推し量り切り捨てる。
着飾った言葉で固めた貴様の中身は『がらんどう』だというにな」
B
「は…ははっ……ちょっと、Aさん?
どうしたんですか、まるで別人の様ですよ!?」
A
「見定め!!!
かの者の行き先は大叫喚地獄、吼々処!!!」
Bの足元が崩れる
B
「うっ、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
A、辺りを見渡す
A
「あれ……おい、B……?
な、何だよ………あんた、『また』置いてくのかよっ!!!
…っ…な、何言ってんだ、あれ……?」
-end-
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