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1章-7 「初めての魔法」★

イラストを手直ししていてギリギリになりましたが、何とか間に合いました。そうゆう訳で今回は挿絵があります。(最下部参照)

 街を出発し、地図を頼りに北東に進むと橋が見えて来る。地図ではあの橋を渡った先がニルギリ山だ。


 そしてそれは橋を渡り切った時だった。

 岩場から見慣れた5人の人影が現れ、こちらに声を掛けてきた。


「おやぁ?誰かと思いきや、お頭じゃないですか…。」


「ザニアか…。」


 そこに現れたのは元ロジャー盗賊団奴隷係のザニアと4人の部下達であった。


「実はコイツらと人攫い専門の盗賊をやる事にしたんで、ニルギリ山に行き交う人々狙いでここで張ってたんでやすが…

 まさかお頭が掛かるとはねぇ!

 しかし、それにしても大層な物をお持ちだ…性奴隷として嘸かし高い値が付くでしょうな。

 まぁ、その前にあっし達全員で可愛がってあげますよ!」


 そう言って、へへへ、と厭らしい笑を浮かべるザニアとその部下達。


「やれ!だがロジャーに傷は付けるな。」


 ザニアの掛け声と共に部下の盗賊達が前へ出る。


「ロビンは左の二人を、マタリはザニアを警戒。残りの二人は俺がやる。」


 ジルはロビンとマタリに指示を出し、右側のザニアの部下二人と対峙する。

 転生してからと言うもの、ジルの力は以前よりも大きく低下していたが、身体の軽さも相まって速さはかなり上がっていた。

 確かにテラグアとアーロンには遅れを取っていたが、テラグア戦はマウント状態であり、力の差もありどうしようもなかった。

 そしてアーロンはBランク冒険者並の実力があり、昔のロジャーであっても苦戦する程であった。

 だが、今の相手は違う。ロジャー盗賊団の中でも下っ端である。

 ジルは今の自分の実力を知るいい機会だと意気込み、カトラスを抜き放ち、二人の下っ端へ向かって駆ける。


 フェイントは入れず、上段から切り掛る。

 そして、下っ端は何とか避け、カトラスは空を斬るが、間髪入れず流水の様な動作で横薙に変え、右側の下っ端の二の腕に斬撃が入る。

 すると堪らず、右側の下っ端は呻き声を上げ、カトラスを落とし、片膝を付く。

 もう一人の下っ端はその声に一瞬驚いたのも束の間、既にジルが目の前に迫っており慌ててカトラスを中段に構え直す。

 が、次の瞬間先程まで正面に居たジルの姿は無く、銀の髪が靡くのを目で追った刹那、ジルの横薙ぎが下っ端の腰に命中し、もう一人の下っ端も傷口を抑え、片膝を着く。

 ジルは下っ端二人が戦意を失ったのを確認し距離を取り、ロビン達の方を振り向く。


 ロビンは既に戦闘を終えており、周りに下っ端二人が横たわっていた。

 そしてザニアは人数差で押し切れると思っていたのか、下っ端の余りの秒殺に驚愕の表情を浮かべている。


「くそっ!こうなったら、これでもくらえっ!」


 ザニアは叫びながら何かをジルに向かって投げつける。


 ジルは咄嗟にカトラスを構えて受け流そうとする。

 が、その投げられた物体が近くまで来て気付く。


(魔封石かっ!しまった!)


 魔封石とは魔法が封じられた石で、衝撃や魔力を込めると発動する高級魔道具の一種だ。

 そしてこれは弾いたりしても発動する為、迂闊に剣などで弾くわけにもいかないのであった。

 しかし、ジルは受け流そうと軸足に力を込めてしまっており、咄嗟に動けなかった。


「お頭っ!」


 そこへ、ジルの隣にいたマタリが、叫びながらジルの目の前へ立ち塞がる。


「マタリっ!!」


 ジルが叫んだと同時にマタリに魔封石が接触し、その瞬間轟音と共に爆発が起こる。



 爆炎が収まると既にザニアの姿は無く、焦げ臭い肉が焼ける匂いが漂うと共に、倒れたマタリの姿が露になる。


「マタリっ!大丈夫かっ!?」


 マタリの腹部の革鎧は千切れ、焦げた皮膚が露になっていた。


 人間は体表の3割に重度の火傷を負うと助からないと言われている。

 が、マタリの身体はゆうに5割が黒焦げとなっていた。

 慌てて駆け寄って来たロビンも思わず目を背ける程の重症を追ったマタリであったが、咄嗟に手で守った顔だけは比較的火傷は少なく、何とか声を絞り出す。


「お…お頭…。無事で…良かった…。ご飯…作れ…なくて…すいません…。」


「マタリっ!そんな事は気にするな!それより、何か俺にして欲しい事は無いか?おっぱい揉むか!?」


 ジルは仲間を失う事を今迄以上に恐れていた為、かなり狼狽していた。

 100人以上居た盗賊団であったが、脱獄してからは付いてくるものは3人となり、子供の頃自分が家族を失った時と重ねていたのだ。


(ハハ…それは…願っても…ない…。ですけど…。)


 しかし、マタリにはもう首から下の感覚が無く、既に喋ることもままならなかった。痛みも感じないそれは、今のこの状態では幸いした。

 たが、少しばかり悔しさも混じり、死ぬ間際でも”男”だと自覚する瞬間であった。


「くそっ…こんな事で俺はまた…失うのかっ…!マタリ!死ぬなっ…!」


 そう叫び、ジルはマタリの腕を掴む。

 すると薄らと光の残渣が指の間から漏れ、慌ててマタリの腕から手を離すと、何とジルが手を触れていた部分の酷い火傷がまるで嘘の様に、綺麗な皮膚に再生していた。


(…!?何だか良く分からないが、これを全身に出来れば…!)


 そして、目を瞑り、”傷よ、治れ!”と強く念じるジル。

 すると、ジルの両手の間から光の粒子が発生し、バンピル花の形に収束する。

 バンピル花とは傷や火傷に効くと言われている、薄紅色の花だ。

 それはジルの中の火傷を癒すイメージを具現化したものであった。

 ジルはさらにそれが全身に行き渡る様なイメージを描き、無意識で呟く。


「…バンピルキュア。」


 するとバンピル花は砕け、光の粉となり、マタリの全身に降りかかりマタリは光に包まれた。




 光が収まり、薄らと目を開けるとそこには傷一つ無いマタリの姿があった。


「すげぇ!頭魔法が使えたんスか?!

 これで道中怪我をしてもヘッチャラっスね!」


 ロビンが驚きと尊敬の目でジルを見つめる。

 マタリは半身を起こすと、何が起こったか分からずマジマジと自分の身体を見渡していた。


「あぁ、どうやら魔法が使える様になったらしいな。」


 ジルの転生前は魔法とは全く縁が無く、力=パワーの脳筋スタイルであった。

 当然転生後もまさか魔法が使えるとは思わず、試しもしなかった。

 だがこの時ジルは魔法に対して無知であるが故にさき程の魔法に対して、何の疑問も持たなかった。

 あれ程の傷を癒す効力や無詠唱で使用できる事の異常性を…。


 本来この世界での精霊魔法は、


 ①呪文の詠唱→②精霊への魔力の譲渡

 →③精霊の承認→④魔法識別名の呼称

 →⑤魔法の発動


 という過程を踏まなければならない。

 しかし、ジルの場合は魔力を消費した後④→⑤という流れで魔法を発動させていた。

 そんな事は露知らず、初めて魔法を使える様になった喜びと、弱くなってしまった自分はロビン達のお荷物になっているのでは?という疑念が払拭された安堵を胸に、ニルギリ山へと足を運ぶのであった。





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【お頭の魔法詠唱シーン】

挿絵(By みてみん)



その他Fateとか東方とかビーマニとか描いています。もしその他のイラストに興味がありましたら、コチラの方もどうぞ。

https://www.pixiv.net/member.php?id=282568

ここまで読んでいただきありがとうございました。

次回で今まで説明不足だったスキルやお頭のステータス等について、触れることが出来そうです。

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