1章-2 「脱獄&貞操の危機」
分かりやすくする為、キャラクターイラスト(装備イラスト)付きの場合はタイトルの後ろに☆、挿絵付きの場合は★を付けます。
「そうだ思い出した…。この姿はあのビッチの仕業だったか!」
虚ろな記憶を辿り、全てを思い出したロジャーは自分の顔を手で触りながら、叫ぶ。
「消える前に逆の環境がどうとかゆってやがったがこうゆう事か…。」
そうこう思案していると、ふと騒がしい看守達の声が廊下の奥から聞こえた為、鉄格子の付近に移動し辺りを見回す。
すると廊下の奥から見慣れた男が駆けてきたのが見えた。
「テラグア!テラグアじゃないかっ!助けに来てくれたのかっ!」
ロジャーは駆けてくるテラグアに呼び掛ける。テラグアは小太りで無精髭が生えたお調子者のロジャー盗賊団の幹部だ。
「小娘?!何でオラの名を知ってんだ?!」
テラグアは立ち止まり、ロジャーの方へ向き直る。
(しまった!この姿じゃ俺だって分からねぇ!どうする…?)
そうしてロジャーが俯いて考えいると
「ははーん!分かったぞ!お前オラのファンだなぁ!やっぱ幹部ともなると名が知れちまってるな~。」
そう言って自分の頭に手をやり、照れている様子のテラグア。
「よっしっ!ファンサービスとして助けてやらぁ。」
そう言って舐めるようにロジャーの身体を見下ろす。
テラグアはこの娘に名前と顔を知られており、このまま牢屋に放置して尋問でテラグアの情報を喋られても面倒だと考えたのだ。
大半は下心だったが…。
そしてテラグアはロジャーの牢屋のピッキングを始める。ここでロジャーはテラグアがロジャー救出に抜擢された理由に気付く。そう、テラグアはピッキングの名手なのだ。
(相変わらず流石の腕前だな。だが本来なら"ロジャー"を助けに来るのが目的なのにこんな”小娘”を助けてる場合じゃないだろ…。)
テラグアは数十秒程で解錠し、ロジャーは助け出された。
「ところでこの辺りでおかしら…茶髪で髭を生やした、太っちょで不細工な男を見なかったか?丁度嬢ちゃんとは似ても似つかない真反対な感じだなぁ!」
そう笑いながらロジャーに問い掛ける。
(こいつ…!居ないと思って言いたい放題言いやがって!…だがどうする?)
「貴様!そこで何をしている!」
声のした方を振り向くと、看守と兵士数名が駆けて来ていた。
(やっぱり言わんこっちゃないっ!こんなちんたらしてるから見つかっちまったじゃないか!)
「とにかく逃げるぞ!」
そうテラグア言って看守が来た方と逆側に逃げる。
「あ、待て!まだお頭がっ!」
「ここは一旦逃げるぞ!幹部のお前まで捕まったらお頭だって困るだろ?」
「お、おぉ…確かにな!オラが居なくちゃ、ロジャー盗賊団は終わりだからな!」
(こいつピッキングの腕はピカイチなんだけど、昔から抜けてるんだよな…。まぁだからこそ幹部と入っても万年最下級幹部なんだよなぁ。今の状況だと扱い安くて助かってるが…。)
テラグアは逃げつつ懐から、紫色のポーションを取り出し、看守達の方に放り投げた。
ポーションが割れた瞬間そこから大量の紫煙が発生する。
「避けろ!毒かもしれんぞ!」
そう言って看守は兵士を止める。そうこうしてるうちに既に俺達は看守達を振り切っていた。
そして何個目かな鉄扉をテラグアのピッキングで開けると刑務所の外に出た。
どうやらここは町外れらしく、周りには平原と林が広がっており、遠くに小さな街の明かりが見える。
「あそこの馬に乗るんだ。」
そう言ってテラグアは木に繋いだ2頭の馬を指す。
脱獄してから1時間程テラグアと一緒に林を走っていると、洞穴の手前でふとテラグアが足を止めた。
「そうそう!ここで仲間と合流する事になってんだ。着いてこい!」
そうテラグアは言って馬から降りると、後を着いて来る様にとこっちに手招きした。
(こんな中途半端なところで落ち合うのか…?)
正直意図は分からなかったが、ともかく他の団員に合わなくては話が進まないので、着いていく事にした。
しばらく洞穴を進んで行くと、10m程で行き止まりになっていた。
「ん?テラグア誰も居ないぞ?」
薄暗がりの中声を出すと、その瞬間テラグアが襲いかかってきた。不意を付かれたロジャーは一瞬反応が遅れ、テラグアに組み敷かれてしまう。
ロジャーから見れば幹部であるテラグアが自分を襲うなど、考えても見なかった。だが今はテラグアは目の前の少女をロジャーだとは露にも思っていない。知らないおじさんに美少女が着いていけば、こうなる事は自明であった。
「捕まえたぞー!へっへっへっ!近くで見るとやっぱりお前めんこいなぁ!しかもガキのくせになんだこの乳…!こんなに大きいのは街の娼婦でも見たことないぞ!」
この世界では女性の胸の発育が悪かった。成人女性でも平均はA~Bカップ程度で、Cカップともなれば万人に一人程度であった。
しかしロジャー(♀)は違った。Cカップですら希少種と男達から崇められる世界で、Fカップはあったのだ。もはや希少種を通り越してUMA(未確認生物)の域であったのだ。
「堪んねぇなぁ!夜が空けるまでたっぷり味わってやるぜぇ!ぐへへへへぇ!」
マウントポジションのままテラグアはそう言って、余裕からかロジャーを掴む二の腕の力が抜けた。
冷静にテラグアが油断する瞬間を見計らっていたロジャーは、その隙を逃さなかった。
ロジャーは自分の頭の方に相手を跳ばす様にブリッジをしてテラグアの両手を地面につかせる。不意を付かれ、両手を地面に着いたテラグアの肘を左手でロックし、それを軸にして右手でテラグアの右脇腹を押し、寝返りを打つ様にして転がる。
これで形勢は逆転、今度はロジャーがマウントポジションを取る事になる…筈だった。
テラグア右脇腹を押し、目いっぱい転がろうとした、だがテラグアはビクともしなかったのだ。そう、この技はマウントを取られた際のテコの原理を使った有効な手段だが、それはあくまで体重差、腕力の差が大きく無い事が前提だ。テラグアと今のロジャー(♀)の体重差は、50kg以上あるのだ、それはロジャーが少々テコを使った位では埋まらない程の差であった。
「おぉもう抵抗は終わりかぁ?ってこたぁ、今度はこっちの番だなぁ!せっかく助けてやったんだ、あんな所で臭い飯を食わされ続けるんだったら、オラに可愛がられる方が言いだろぁ?へへへっ!」
そう言ってテラグアは紐1本で結んで止めているだけの囚人服の紐に手をかける。
(力が全然違う!コレが男と女の差か…!いや、そんな事に驚いている場合じゃなく、このままじゃ部下に処女を奪われるっ…!)
「ま、待てテラグア!俺が何でお前の事を知っているかだったな!それは俺がロジャー本人だからだっ!」
そして、暫しの沈黙が流れる。
「ん?そんな嘘でオラを騙せると思ってんのか?」
テラグアには襲われるのが怖くて付いた少女の嘘にしか思えなかった。
(くっ…!どうする、考えろ俺っ!)
その間にも既に囚人服の紐は解かれ、唯でさえ心許ない一枚の布が緩み、白いシミ一つ無い太ももが大きく晒される。
「あれは確か、ルグレー商会の馬車を襲った日の帰り、久々に街の娼館に繰り出した時だ。お前が入れ込んでたペコーちゃんが急にお店を辞めたと思ったら、冒険者になってて、俺らが襲った馬車に乗ってた事があったよな。あん時のお前の顔っつったらよ!」
「…な、何でそれを?」
テラグアが唖然とした顔で口をパクパクさせている。
「で、その後ペコーちゃんを前に、お前がさぁー」
「もうその話はいいから!わ、分かったよ!お、お頭なんだな?」
「そうだ、テラグア。」
そして暫く無言で見つめ合う二人。
「分かったオラ信じる。」
そう言ってテラグアは頷いた。
「しかし問題は他の団員にどう言うかだなぁ…。テラグアからも皆への話を頼むぞ。よし、取り敢えず、アジトに戻るか。」
そしてロジャー達は洞穴を出て、アジトへ向かって馬で林道を駆け出した。
いよいよ次回は盗賊団との合流編です。
お頭は無事、盗賊団に受け入れられるのか!?
次話でお頭の基本的なヴィジュアルが整いますので、装備状態イラスト付きになります。