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出会い

夜中にコンビニに行くことはあっても途中できれいな女性に出会い声を掛けられることは通常はあり得ないだろう…そんなことが本当に起きたとしても女性が幽霊か怪しい詐欺まがいだと疑っても仕方がないと思う。


しかし、疑いよりも女性の美しさに驚嘆した僕は女性と話をした。そして、彼女が望むままに二人で話せる場所ということで近くの漫画喫茶に行ったのである。


 漫画喫茶での会話は最初はぎこちなく、くだらない会話が多かったような気がする。例えば「名前は?」から始まり「趣味は?」みたいなコミュ症な会話である。


ところが流れが変わったのは彼女から「今読んでる本とかある?」であった。その時僕は『ローマ人の物語』

という本を読んでいた。内容は歴史である。明らかに気になる異性に対してする話ではなかったと今では後悔しているが歴史オタクだからこそできる熱い語りになってしまった。間違いなく相手はドン引きである。


例えば「ローマ人は本当はゴロツキの集まりから始まったくせにホメロスの叙事詩から自分たちは女神ヴィーナスの子孫でトロイの王族でその子孫が移り住み、その子孫の一人であるロムルスが狼に育てられて建設したために彼の名前からとってローマという名前になったという中二病な設定にしていたんだ」と行った。


それに対して彼女は言った。「うん、だから近くにいたサビニ族の女性を攫ってきたんだよね。」


彼女の相槌が上手いせいか話は続く


「サビニ族は当然怒ったがローマは強くて勝てない、そんな中で突然ローマは残りのサビニ族にローマに移住するように求めて実際に同等の権利を与えてローマに居住させた。さらにその後、アルバという都市に対しても同じことをする。後にというか次の王はなんとサビニ族の人がなるし、アルバからはユリウス氏族がローマに参加した。」


「ヌマ王と後のユリウス・カエサル家だね。」


「ローマの面白いところは寛大というか計算高く圧倒的強者ゆえに出来る同化政策が強みだと思うんだ、ローマの地政学的位置にも注目しないといけない。イタリア半島という現代の知識から照らし合わせればローマほど重要な位置の都市は存在しない。しかし、当時のイタリアの二大勢力である北のエトルニア人は丘の上に都市を築くことに集中し過ぎて平原や海辺に関心がない。南の大ギリシア(マグナ・グラキエ)に住む人々は海辺にしか興味がないため、どちらにも属さない平原主体で小さな丘と河しかないローマには彼らは興味を示さなかった。」


「エトルニア人はフィレンツェ、ギリシア人はナポリ、ターラントを築いたのに不思議だね。」


「でもよく考えたら日本人にも笑えない話だと思うんだ。」


「うん?どうして?」


「例えば戦国時代になるまでは影の薄い大阪、影が薄いどころか存在自体無いと言っても過言ではない東京などが良い事例だと思う。大阪は注目はされたことは歴史上何度かあるらしいが防衛上の理由などで神戸や堺に比べると発展が遅かったのは間違いないと思う。」


「それは言えるかもしれないわね、平原が多くて食料生産にも居住するにも苦労しない、さらに交通の便が良いにも関わらず長い間放置されていた感じは拭えないわね。」


「うん、だからこそローマが建国からエルトニア、ギリシャの二大勢力と衝突することなく雌伏の時を過ごせたのは大きかった。そして雌伏の時を終えて二大勢力を吸収するにも時期が良かった。」


「アレクサンドロス大王が死んだことかな?」


「そうだね、もしアレクサンドロスが生きていたら攻めてきたのはピュロスではなくアレクサンドロスだったかもしれない。実際彼の生きていた時期とローマの拡大は同時期で同時進行、しかもアレクサンドロスはペルシャを征服して死ぬ時でさえ三十前半という若さだったということを考えると決してあり得ない話では無かった。」


「戦ったらどっちが勝ったと思う?」


「心情的にはアレクサンドロスと言いたいところだけど、偉大な戦術家であるピュロスとハンニバル相手に戦って勝っていることから考えると難しい」


「時期にもよる?」


「確かにピュロスに攻められた時にアレクサンドロスに攻められたら厳しい気がする。ただ、その場合はローマが主目的ではなく、カルタゴが主目的になっていた可能性が高いからifの話をするならローマとカルタゴの同盟もあり得たかもしれない。もしくはアレクサンドロスの覇権主義的な侵略にかえって大ギリシアの人々がローマと共闘する事態になったかもしれないので互角の可能性がある。なにより時期的にローマに脂が乗り始めている時期なので人材面や革新性を考慮するとアレクサンドロスとはいえ負けた可能性の方が高いかもしれない。事実同時代の人も当時から議論する話だったらしく、ハンニバルも自分のローマ攻略が成功していたら自分はアレクサンドロスを超えていたと豪語していたくらいにはローマは強かった。」


「ローマは何故そんなに強かったと思う?」


「まずローマは当時としては極めて合理的な民族だった。よく評論家の中には貧しかったからとか寛容だったからとかいう人がいるけど僕はそうは思わない。彼らは単に合理的だったんだ。冷徹で計算高いとも言える。他の民族や住民を受け入れていると主張する人もいるが当時というか近代までは民族という概念はないし、そもそも目と鼻の先に住んでいるサビニ族やアルバの人々は言語も生活習慣も大きくは違わなかっただろう。もし彼らの違いがローマ人と離れすぎていたら現代の我々のような隣の家や家族とのつながりが希薄で慣習も風俗も違う日本人は一軒ごとに民族が違うことになってしまう。」


「それ凄く面白い解釈だねw」

最後の皮肉を聞いて女性が凄く笑った。


「まぁだからこそ彼らをローマに引っ越させてきても平気だったんだよ、しかも明らかに手綱はローマ人が握っているし、王様すら自分たちローマという国家の道具として利用したとも言えるくらい彼らローマ人は合理的だった。」


何故かこのことを言った瞬間女性は一瞬表情が険しくなった。

しかし、「話を続けて!」と言われたので続けます。

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