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探偵の助手  作者: 夏目藍
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第六話「先生、ごめんなさい」

私に時間をくださいってくらい時間がありませんでした。勉強、大変。

 第一関門を突破した私は、目の前に現れた階段を下っている。案外暗い階段かと思ったが、そこまで暗くはなかった。ご丁寧なことに、明かりがちゃんとついていたのだった。この建物の管理人さんは誰なのか想像はつかないが、この仕掛けは怪盗さんがやったのだろう。電球が見る限り、まだ新しい。怪盗さんはもしかしたら優しいのかもしれない。でも、怪盗さんの「君のことが、興味深いからだよ」という言葉が頭から離れない。不穏な響きを持ったそれは、私の中で不安要素になっている。そもそも、私を興味深いなんて人間がいるとは思わなかった。興味対象になるような欠片も持ち合わせていない、ただの小娘ですよーだ。きっと先生は「貴様に興味深いというやつがいたら、天気が崩れるな。雨どころの騒ぎじゃない、大雨だ、大嵐だ。おそらく槍や弓の雨も降るだろうな!」って言うはずだ。私の妄想、完璧。

 それにしてもこの階段、長いような気が……しなかった。普通に次の階に着いた。階段の終着点には、装飾の施された扉があって、不思議な雰囲気を醸し出している。ミスマッチな雰囲気なそれを開けるのには勇気が必要だ。深呼吸をして、扉を開ける。

「それで、ここの部屋には何があるのかな?」

 扉をゆっくりと開けると、ギイィと軋む音がして、内部が明らかになった。机の上にはほんの山と試験管やフラスコ、ビーカーなどの実験用具。奥のほうに見える台にはなんだかよくわからない機械が置いてある。その機械の横には、天井まである黄緑色に発光する光の柱。それの中には液体が入っているようで、時折ぽこぽこと泡が湧き出している。実験に使われる物なのか、インテリアなのか。少し薄暗い部屋の内部をじっくり見ると、ここは実験室だと理解できた。どのような実験をしているのかはわからないが、もっと捜索してみよう。まずは机の上にある本の山から。

 机の上の本はホコリをかぶっていて、長い間いじられていないことがわかる。掃除くらいはしておいてほしいものだ。本の山のところに、何か挟まっていることに気が付いた。ホコリにむせながら、挟まっているものを取り出した。計算式が書かれた、メモ書きを発見した。

「また計算……!? えっと、何々……一割る二分の一、二分の三かける二分の三かける三分の四、二分の十八、ログ二底の十六。ログ? この間やったやつだ! とりあえず、後回しにして、捜索しよう」

 よくわからない機械の置いてある台の下にある棚に電子的なもの。四桁の番号を入れるタイプの鍵がかけられている。

「私の運がいいのか、悪いのかわからないけれどもさっきのメモの計算を解けば番号がわかるんじゃないかと思うんだ。憶測にすぎないが、これはきっと間違いない」

 問題は、その計算が解けるか。

 まず、一割る二分の一。これはたぶん、二分の一。だから、分子の一をいれよう。

 次に二分の三かける二分の三かける三分の四。これは、四分の九かける三分の四になって、四が消えて、九割る三になって、答えは三。

 三番目は二分の十八、これは簡単。答えは九。

 四番目はログ二底の十六、これは二を何乗すれば十六になるかって問題だから、答えは四。

 これで完璧と思って数字を入れてみるが、反応がない。何だと。何度入れても反応がない。

「わーん、せんせごめんなさい。私の頭じゃ数学もできないみたいです……ぐすっ」

 諦めずに何度も同じ数字をいれてみるが、反応なし。

 途端、床が開いて、真っ逆さま。

「ぎぇぁああああああああ」

 女の子らしくない声と共に落ちてしまった。


計算、できましたか?一割る二分の一。難しそうに見えて、とても簡単なんですよ。

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