第三話「助手の出口探し」
謎を作ることは解くことよりも難しいのです。
さて、怪盗に誘拐されました。助手です。現在、出口探しに奮闘しております。いつもなら先生から与えられるヒントを頼りにして謎解きをしているのに、今回はヒントなしです。でも、先生からのそれは遠回りをする言い方で伏線もありわかりにくい。注意して聞いていないと「また君は話を聞いてないのだな」と言われてしまうくらいだ。それだったら自分で考えて、見つけるほうがいいのだけれども、私の能力ではそれはできない。先生とは完全に実力の差があるのだ。
「と、とりあえず壁のほうにスイッチでもあればいいのだけれども……」
鈴ちゃんのお屋敷にも壁にスイッチがあった。冒険小説お決まりの隠し通路だ。あのお屋敷のスイッチは壁の下のほうに窪みがあった。ならば下のほうを、と探してみる。あった。
「やっぱりあった! 私、冴えてる!」
うきうき気分で窪みを押した。カチッ。ゴゴゴゴゴ。
「ふふふ、これで隠し通路が出てくるはず! すごいぞ私!」
カーーーン。
天井からたらいが降ってきて、見事に頭に着地した。
「いったたたたた……え、たらい」
これは、もしかしなくてもトラップだ。
「うわー……引っかかった。命にかかわらなくてよかったけど、この部屋もしかしてトラップだらけだったりするの? だとしたら命が何個あっても足りないよ! うわーんせんせぇ、助けて! 私の頭じゃここから出られない……」
彩くん、君はまず考えたまえ。君の脳細胞は生きているのだろう? ならばなぜ考えない。考えることを放棄した脳ではないのだろう? 考えたまえ。
ふと以前先生に言われたことを思い出しました。考える、考える。
ポシェットには確かメモ用紙と三色ボールペンを入れていたはず。今までに起こったことを整理してみよう。トラップのこともしっかりと。
行動の中にヒントはあるのか。
私がいるのはどこなのか。どこ? ここはどこ? 窓はない。方角はわからない。音はどうだろか。耳を澄まして周囲の音を聞き取ろうとする。すると微かに電車の音が聞こえた。電車の音がするということは、電車の時刻表を見ればおおよその位置がわかるかもしれないということ。幸い電車の時刻表もポシェットに入っているのだった。時計を見れば、時刻もわかる。時計はいつも腕にしている。現在時刻はと確認する。秒針が動いていない。この時計、止まっています。なんということでしょう。なんということでしょう! 現在位置は諦め、改めて出口を探すことにした。
「別に壁じゃなくて床だってスイッチがあるはず、まあそんな単純にあるわけがないけど」
そうつぶやきながら絨毯をぺらっとめくる。なんということでしょう。
「あ、あった」
そう、あってしまったのです。しかも確認してみると四隅すべてにスイッチらしきものが。明らかにトラップです。どれか一つが正解のはず。何かヒントは……。ふと目に着いたのは絨毯の上にメモが置いてあった。
単純な計算式で、答えは1。右上から時計回りに数字がふってあるから、右上のスイッチを押してみる。床が割れて、階段が現れた。
「ふっふっふー、私の計算能力をなめてはならぬー!」
計算式は1+1+1×0-1=? 四則計算の法則を守ればすぐです。
まずは第一関門を突破。
次回は先生サイドのお話になります。