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第四話 ラーメンと蔵の駅

 肩に重さを感じた。

『ご乗車ありがとございます。まもなく終点の・・・』

「えっ、おぃ起きてよ」

「ん、んんん。まだ食べられる」

「なに寝ぼけているのっ」


私も目覚めたら今までのこんなことあんなことが夢の中の出来事だった。そんな結果を信じていたかった。けど、実際は、この彼、伊之助と旅行中。それも元の私の居た世界まで送り届けてくれるというありがたい使命を彼は持っているのだが。

「もうついたの」

「もうってあなたが私を案内するんでしょ」

「まあ、そうだが、ご無事に到着とは、いやはや結構」

「結構ですと、次の駅で乗り換えでなかったの」

「だったかな」

「おい」

「はい、姫君」

「姫君と言わず留美さんと呼んで。大丈夫なの私を元の居た時空とやらに送り届けるというのは」

「大丈夫、です。はい」

私は小声で伊之助の耳元で言った

「ちゃんと次の降りた後で星の者と会う場所覚えてる」

「えーと、ラーメン」

「ちょっと人前で言っちゃだめとあなた言ったじゃない、星の者の秘密のこと」

「だったな」

 気動車が、やや大きな駅に到着すると乗り越えなのだ。

数分後に現れた電車に乗り換えた。この電車の終点まで乗り継ぐのだ。

お昼前なのかさほどこんではいないようだが、かといってガラガラではない。窓の外をぼんやり見ているうちに終点についてしまった。


「この駅から歩くということだな」

「やっと目が覚めたようだね」

伊之助を、おちょくるようにしたら彼はムッとしたような顔に一瞬なった。

「参るぞ、姫君」

「また、言葉遣いが変よ」

「すまぬ」


 駅前を進み脇道に入ると

 ラーメン

 ラーメン

 ラーメン

 ラーメン

 蔵

 ラーメン


「うわぁ、ラーメン屋さんばかり」

「姫君もはしゃいでいるのではないか」

「ごめん」


 両脇にこれでもかと言うぐらいラーメン屋がならんでいる。目指す星の民のラーメ屋を探す。時計をちらりとみるとお昼ちょっと前になっていた。

「あれじゃない」

「あぁ」

私たちはラーメン青竜という赤文字に看板が書かれたラーメン店に向かった。引き戸を開ける。お昼前後というのにもうお客さんが店内で食事をしている。

「ここだな、鍵言葉の指示通り座るとなると」

伊之助は出入り口から少し離れた【予約席】とを指して店長らしき人に問いかけた。

「予約をしていた星村です」

店長がチラとこちらを見ると予約席に案内してくれた。というより、ラーメン屋で予約席とはありえない。目立つでしょと言いたかったけど。水が運ばれてきた。

「小声で伺おう、星の民星田と申す。鍵言葉を申し上げる。ヒナゲシはどこに咲く」

「ヒナゲシは、えーっと」

伊之助が言葉に詰まった。

「んもう、五芒星の裏庭に咲くでしょ」

「五芒星の裏庭に咲く」

「ふっ客人のほうが、しっかりしとるな」

「でしょぉぉ」

「でしょてせはない」

「まあ目立たぬように」

そういうと星田さんはカウンターに戻りメニューを持ってきた。ただメニューに紙がはさんであって、テーブルに置くときに指でトントンと見るように合図した。

「んと、青竜スタミナチャーシューかな」

「こらっ」

 私たちはメニューにさりげなくはさまれているメモを見ていた。次の鍵言葉とか、時空の満ち潮の狭間とか。 それにしても、一体いつになったふら私は元の世界に戻れるのか、そんなことは全くかいていなかった。


「メニューよろしいですか」

「青竜スタミナチャーシューバターコンーン大盛り」

「ちょっとよくこんな時に平気に食べられるわね」

「食べるときに食べとかないと、体動かなくなるからね」

「あのね」

「そなたも注文するのが普通の流れではないか」

「いわれてみれば」

「こそちらのご注文は」

「ラーメンで」


 星田おじさんは注文を取ると、さりげなくメニューから紙を抜き取りね厨房でごにょごょしていた。よく見えなかったが紙を破きコンロの上で燃やしているようだ。


 背後で、お客さんが会計を済ましてお店を後にする音が聞こえる。厨房で調理している音、そして

<<ジリリーーーン>> <<ジリリーーーン>>

黒いものから音がする

「何あれ」

「黒電話、知らないの」

黒くて回る円盤がついていて、その下に0から9の数字がついている。


「はいはラーメン青竜、どーもです。はい、はい」

なにやら話している。そして


「えーと星野さん店内にいますか、電話です」

「わたしぃ」

星田さんから電話を渡された。少し重い。線は下のほうにしてクルクルとカールしている。

「私だ」

「誰っ」

「時和金哉」

「あなたのせいよ、こんなさんざんな目になったのは」

「いやそれは、そちらも関与しているぞ、何やら禁を破ってはないか」

「それは・・・知らなかったとはいえ」

「で、導きの者、伊之助はどうだ」

「チェンジ」

「えっ」

「見かけ倒しよ」

「そんなはずはない」

「けど彼は、青竜スタミナチャーシューバターコンーン大盛りを目の前にして瞳をキラキラさせてます」

「そうか、けど彼はイザとなれば頼りになるはずだ。それに代わりの者は今はいない」

「そんな。で私はいつ元の世界に戻れるの」

「あと一つ、時空超越がうまくいけば。今時空が乱れておる。闇のせいで」

「そんなぁ」

「がしかしだ、星の民は全力で君らを援護する。」

「ところであなたはどこにいるの」

「詳しくは言えぬが別の時空とだけ言っておこう。あとは星田さんにこの電話渡してくれ」


「あはいはい、そうですか」


星田さんが話している


電話を後にテーブルに戻った。

「すごい、このラーメン。醤油が基本だけど奥深い」

「君は無邪気なものね」

「食べないと麺が伸びるよ。平たくてちぢれた、麺とチャーシューこれがまた絶品」

かれはズゾゾっと勢いよくラーメンをすすっていた。私は、どうしようもない、先行きに打ちのめされながらも、少しラーメンを口に運んでみた。

「ん、んんんん」

今まで食べたことない麺の食感。たしかに彼の言うとおり醤油が基本だがあっさりとしつつも奥深い味がして飽きが来ない。

「おぃひぃぃ」


 食べ終えて、一休みしようとしたところだった。

「いらっしゃい」

二人組の男性が店内に入ってきた。

「じゃ奥にどうぞ」

星田さんは二人連れを店の奥に案内した。

そのあと会計伝票をもって私たちのテーブルに向かってきた。テーブルに伝票を置くと、トントンと静かに伝票を指差した。


≪奥のテーブルの二人、怪しい。闇の者かもしれぬ≫

≪すぐに出ろ、食事代は遠きものに請求しておく≫


 星田さんは出入り口レジ横に立っていた


 食後に動くのは少しきついかもしれないが、私たちは目で出るタイミングを見計らい席を飛び出した。


〈ガタッ〉


 星田さんは引き戸をガラッと開けてくれた。

〈ガラッッ〉


「んのやろぉ」

奥にいた二人組が立ち上がり出口めがけて駆け出した。

「きゃー」

一般のお客さんが悲鳴を上げる

とそのときだった


〈ガシッッッ〉

テーブルをゲートのようにしてブロックしたのだ。

「すまんなーお客さん。代金払ってくれないと。アイツラはちゃんと請求してるから心配ないけど」


「えっええっ」

「いいから駆けろ」

「ありがとうおじさん」

「御嬢さん、お兄さんとよんでほしい」

伊之助にグッと腕をつかまされた

「そんなこといっている場合でない、こっちだ」

「道はわかるの」

「ああ、さっきのメニュー見せてもらった時にあの中に地図があった。それを覚えている」

「大丈夫でしょね」

「相手次第だ」

「そんなぁ」


「はぁっ、はあっ」

さっきの二人連れからは離れたがまだ油断はできない。直線の道を駆け抜ける。

「いたぞっ」

「ええっ、」

「驚いている場合じゃない。こっちだ」

郵便局の脇を過ぎまた別の道に出たる

「駅から遠くなっているじゃない」

「とにかく今は闇のヤツらから逃げるのが先決だろ」


〈ギャィィィン・カキュン〉

「うぁああ」


「なんなの」

「振り向くな、駆け抜けろ」


さらに、奥の門をまがった。

息を切らせながら

「二枚」

受付の人に言っていた。

「ふぅ」

伊之助は大きく息を吐いた。

「はあっはぁっ、ここは博物館のようね」

「それにしてもいきなりここに入る君の行動力すごいね」

「ただね駆けずりまわっているだけでは体力使うでしょ」

「そうだな」

あたりを見渡すと古そうな道具、それも農業関連のものとか、日常に使うようなものがさりげなく置いてある。 よく見ると建物は蔵になっていることがわかった。

「これからどうするの」

「駅に戻らないと。けどまた闇の者がきたら」

「たしか、時空の潮目ちって言ったよね、乗る列車がくる時む

「そうだけど」

「あと、どのくらいだっけ」

「30分、急がないと」

「走るのまた」

「ああ」


 中の見学どころではなく、その蔵を後にして駅に向かって駆け出した。


「いたぞっ」

背後からまた声が、一体何人闇の者が潜んでいるんだろう。

「こっちだ」

また少し狭い道に走りこむ。背後から足音が近づいている。

「おとなしくしろっ」

正面に二人組があらわれた。背後と正面にはさまれた。逃げ場がない。

「ど、どうするの」

「ま、まて」


その時であった。


〈カキュン・カキュン・ギャイーーーン〉


正面の二人組の背後からバイクが前輪を勢いよく持ち上げて襲いかかった。

「うぁぁぁ」

「正義の味方というのは最後に現れるものさ」


「おじさん」

「お兄さんと呼んでもらいたいな」

 

そこにはスポーツタイプのバイクではない。後部の二対にユラユラと銀色の箱が載せている。その箱には『ラーメン青竜』と書かれてあった。


「まだ、星の者がいるんだな。出てきて騒ぎにならないうちに片付けな」

 その声と同時に配達バイク面々が、ぶぁっと現れた。

「そうそう、大切なものを出前しにきた、これだ」

伊之助の前に小さな袋を差し出した。

「時の印だ。貸し出す約束になっていたな」

伊之助はそれをカバンのの中にしまいこんだ。


 あたりは、配達バイクの面々が超絶技巧を駆使しながら闇の者を打ち倒している。


「おっと時の潮目に間に合わせないとな、そろそろ来るかな」

おじさん、もとい、お兄さんがつぶやくと一台の箱型の軽自動車が勢いよく現れた。

「おぅ、ミルキーこと天川姉さん元気だね」

「こつちは忙しいんだよ、さっさと片付けるよ」


車体には

〔ミルキーウェイ ラーメン〕

〔4 W D 〕

〔配達用特別仕様車〕


 それといかついパイプみたいのがバンパーの上ににあって、出っ歯のようなものがバンパーの下にあって、後ろのほうに羽のようなものもついていて、タイヤの周りもなんか少し出っ張っている。


 少しあいた窓からミルキーというにはちょっとという感じのお姉さんが

「さあ、乗りな。シートベルトしたらしゃべるんでないぞ。舌噛むからな」


 私たちがドアを閉めシートベルトしたのをチラと確認すると、

[キャイィィィ、パパパン・キャィィ]

「あわわわ」

「お嬢さんしゃべらないほうがいいよ」

「・・・」

「そこの彼氏使いな。危ない時この袋。」

軽自動車は私の想像を絶する速度で道を進んでいく。

「ふふっ来ましたね、私のこと知らないようだね、地獄のミネキーって」

そう言うとさらに車は勢いをつけ脇道にそれた。

[キャィィィ]

 配達の途中である証拠であろうか、後部座席の後ろに空の食器が道を曲がるたびに打楽器のようにけたたましく鳴り響く。

「マイたかな。もう少しだよ」

 窓から煉瓦でできた何かが見えたら交差点をいくつか突破し、最短距離の道を通りようや駅前についた。

「さあ着いたよ」

「ありがとうございます・・・」

「そこの彼氏、袋持って行ったほうがいいんじゃない」

「・・・」

「そうします、そうします」

「じゃ、「カシオペアの導きに幸多からん事を」

そういった後、ミルキー姉さんこと天川さんは駅前を去って行った。

「・・・始まるよっ、うわっ」

どよんと空間がゆがみ始めた。再びおとづれた時空の潮目るそれも星の者しかこの中で動けない。普通の人はまるで彫刻のように止まったまま。私たちはその中をホームに向かった。


 しばらくすると乗り込む列車が現れた。ややくすんだベージュに窓の下に赤い帯。気動車だ。


「さあ、乗り込むぞ」

「次で本当に私の居た時空に戻れること期待するわ」

「ならいいけどね」

「人の不幸を楽しむ気なの」

「いや反対だよ、君が元に戻れないと自分も元の時空に戻れない。それほど時空の乱れが大きくなっているかも」

「ここにきて弱気にならないでよ」

 列車が動き出した。窓の外がさらに歪み始め、そして暗転した。そのあと光が点から線に変化し後方へ飛び散った。


 次の駅で元の時空に戻れるのだろうか。

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