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第二話 山間の駅

第二話 山間の駅


日の出前の濃いブルーの空があった。相変わらず鳥たちの鳴き声が騒がしい。スズメのほか、カッコウ、ウグイスも。


 私は、星村伊之助という変な男子とともに改札をでた。改札を出ると民宿のような建物があり、その隣に普通の家々が点在している。その一軒に星村伊之助は向かっていった。


 門に近づくと朝早くなのに、おばさんが待っていた。おばさんは私たちを見ていた。彼がおばさんに問いかけた。


「星の者より星の民へ伝言。我の名は星崎伊之助と申す。そなたの名は」」

「いきなりあなたは年上の人に何言っているの」

私がそういうとおばさんが。

「そういう決まりなの。我が名は星井真澄、鍵言葉を申せ」

「鍵言葉、カキツバタの花はどの鳥で来る」

「カキツバタの花はツバメに乗って来る」

おばさんは自信をもってそう答えた。


「お二人とも、朝早くからご苦労さん。おや、その彼氏は」

伊之助はなにやら口に手を当てて

「すまぬ、廁」

「廁って」

おばさんが答えた

「トイレのこと。玄関入って右ね」

「あの、いろいろお尋ねしたいことがたくさんあるんですけど」

「そうそう、あなたが客人の星野留美さんね、説明の前に服はこの時空に合わせるためこれに着替えて。鞄もこの中にそのまま入れて」


 私は状況もわからず、おばさんに指示されたまま、玄関の横の和室で洋服を着替えた。多少サイズが大きいようだが、着ることができた。

それにしても、少し古い感じがする。


 玄関を出て門のそばの縁側で伊之助がお茶を飲んでいた。

「どう、少しは楽になった」

「面目ない」

「そろそろ、伊之助さんだっけ、言葉この時空に合したほうがいいわよ」

「はあ」


「おばさん、ちょっと説明してほしいんだけど、私どうしてこうなったの」


「順を追って説明する。まずあなたが、自分ではまだ気が付いていなと思うけど、星の民なの」

「星の民」

「どうやら彼は、車内で説明してないようね」

伊之助が戻ってきた

「・・・」

バツの悪いように彼は肩をすくめた。

「まあ、まだ時空航海士準3級の教導中だからね」

「はあぁぃぃ、見習い中」

「そうとも言える」

おばさんは話を続けた。

「順を戻すわ。まずは星の民。苗字の一部に宇宙に関する文字が組み込まれている人なの」

「確かに私も、星野」

「その名前の付いた人の一部は、時空に関することを守り抜くことを定められているの、なんか覚えない」


 私は、ここ数日のスマホの騒ぎからなにか、それに関係することを思い起こした。ひとつだけあった。


「死んだ、おばあちゃんから、人には見せるなって言われた時の印」

「そう、あなたそれどうした」

「ネットで公開しちゃった。きれいだから。どうせ迷信だと思ったし」

「それが今回のあなたが巻き込まれた元なの」

「うそー」

「本当」

「そこの彼、説明してないのね」

「いやぁ、逃げるのに精一杯で」

「確かにそうなんだけど。いつもはもう一人つくんだけど、闇のものが、暴れていて一人で大変だろうけど」

「闇の者って」

「もうひとつ、私たちと存在している者なの、ちょっとこれ見て」


おばさんは、手にコップを持ち庭の水道口から水をいれ台所洗剤を数滴落とした。


「いい、これが最初の状態。うまく説明できればいいけど」

コップの中に水と洗剤が渦となって混ざり合い始めた。


「はじめは、こんな混沌とした状態だったの。そして」

おばさんはストローで水の中に勢いよく息を吹きかけた。そうすると水面から泡が出てこぼれそうになった。


「これが、この時空の理らしいの。おばさんもよく説明できないけど」

「ビック・バン。宇宙の最初は混沌でその後いっきに高温・高圧の状態となってひろがった、かな」

「そこの彼氏より賢そうだね」

伊之助はさらにバツが悪そうにお茶をすすった。

「じゃあ、闇の者て」

「この泡の外にある者、均衡がとれていればいいと時の者は言ってたわ」

「それじゃあ、時空超越って」

「そうねぇ、この泡があるでしょ、その隣に泡の膜を超えて飛び越えること」

「私は、元に戻れるの」

「今のところ。ただあと・・・彼しだい」

「ちょっと」

「ん」

彼はバツが悪そうにお茶をすすぎこんでいる。

「私一人で戻ることはできないの」

「おい、それは」

「まあ。時の者の話だと二人で協力しないともとには戻れないと」

「そんなぁ」

「さて、そろそろ出発だね」

おばさんは、私たちの前に一枚の紙を見せた。

乗る駅、乗り換える駅、降りる駅、地図、次の星の者の名、鍵言葉

「覚えたかな」

「覚えた」

「おい、大丈夫」

私は伊之助を見て言った。

「それじゃ」

おばさんは、その紙をビリヒリに破いてライターで火をつけ燃やした。

「なんで、持っていっちゃダメなの」

「秘密を守るため」

「あと最後に一つだけ聞いていい、なんで私が来ると知っているの」

「秘密、と言えばそうだけど、手段はあるの」


私は、鞄の中に入れた鞄の中からスマホを取り出した。


動かない。


「なにそれ」

伊之助が不思議そうに覗き込んだ。

「スマホ、スマートフォン」

「なんか、ガラスのカマボコ板みたいだな」

「・・・いやもう文鎮になっている」


「星野さんだっけ」

「はい」

「この時空に関するもの以外は見せてはいけないの」

「はあ」

「使えないでしょ」

「そうですし」

「そして伊之助さんにはこれお貸しするわ」

そういうと巾着袋を彼に渡した。

「時の印ね、あとで返すって聞いているけど大切に値」

「はい」

「ところであなたの時の印は渡したの」

「いやまだですけど」

「じゃ、これも聞いてないのね」

「なんにも」

「しかりさなさいよ」

「いやもとにかく載せてあげるのに精いっぱいで」

「じゃあなたも」

「返してくれるんでしようね」

私は伊之助に尋ねた。

「もちろん、時空便で」

「そんなのもあるの」

「あるんですっ」


そんなやり取りをしていたが、次に乗る列車の時刻が近づいてきたようだ。


「さて、これがここで使う二人のきっぷと行動費」

いくらかのお金が入った袋があった。

「お金はこれを使ってね、時空が違うから」

「はぁ・・・」

「あと、きっぷは二人大切にしまって他人に見せないこと」


「あとこれは指示になかったけど」

私たちに、おにぎりと缶のお茶を手渡してくれた。

「適当に朝食にしてね、じゃいってらっしゃい」


「お約束、しないとね」

「それなに」

「まずは三角形に円陣、手を出して」

私と彼とおばさんは右手を腰の高さに手を合わせた。

「一緒に言うよ続けてね」


「カシオペアの導きに幸多からん事を続けて」

「カシオペアの導きに幸多からん事を」


ちょっと恥ずかしいようなことがしたが

「コレって何」

「星の民のおまじない」

おばさんはそう言って笑った


駅に着くと暗がりで気が付かなかった2両の気動車がいた。

一つは柿色というかオレンジ色、もう一つはクリーム色に窓周りが濃い赤い色。


[カキュン]


なにかのスイッチがはいった

[カロカロカロカロ]


そのあと目覚めて伸びをするように、

[ガガガガガガガガガガ]

音が大きくなった


そして

[カロカロカロカロカロカロ]

また軽い音にもどった。


 これから、再び伊之助と過ごすのだ。最初のころのように威勢の良い彼ではなくなったが。はたして私の時空に戻れるのだろうか。


 まだ、鳥たちのさえずりは騒がしかった。

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