表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女ファイナル・インパクト  作者: 四宮銅次郎
第一章 魔法少女
3/56

かつての産物


 季節は7月。いよいよ気温は30度越えが当然になり始め、殺人的な紫外線と太陽光を容赦なく注いでくる。節約のためクーラーはつけずに窓を全開にし、俺はアイスを食べながら寝そべっていた。


「暑い……」


 性別が変わって髪の毛が伸びたせいか、余計に蒸す。とりあえずツインテールのままだが……他の結び方も考えようか。


 ……順応性って大事だな。


 男だったころの手と比べ、随分小さくなった手を伸ばし、ポツリと呟く。魔法少女だとか、悪の組織だとか、性別が変わるだとか……一生分の驚きを経験したかもしれないのに、割と心は落ち着いている。

 今後のことが気になりすぎて、それどころじゃないってのもあるだろうが。


 戦うか、保護されるか。究極の二択。ま……それは追々でいい。今のところは悩んでも答えは出そうにない。

 それよりも魔法を試してみたい。だって魔法少女だぜ? どんなコトができるかワクワクするぞ。


 テーブルの上に置きっぱなしになっている杖を持ってみる。俺の身長よりも長いそれは、確かに玩具っぽいのだが魔法少女風と言うよりは、ゲームやファンタジー系と言った方がいい。


「よっと……」


 持ち直してみると、昨日の夜見た虹の光が杖の結晶から溢れ始める。

 脳内に文字の羅列が自然に浮かび上がってきた。



 Name:時楸ツキハ 極光の魔法少女

 杖:極光の杖(アルコ・イリス)



 これが杖に登録された俺の情報らしい。極光とか、また随分大仰な肩書がついたなぁおい。カッコつけたくなっちゃうだろ。


「極光の魔法少女ツキハ見参! 星に代わってお仕置きだ!」


 ………。

 ………。

 ああ、これはダメだ。俺はクッションに顔を埋め、悶える。

 ややあって落ち着きを取り戻すと、また脳内にまた魔法の名前が浮かび上がってくる。


 ……アイテムボックスとガチャ?


 どこかで聞いたことのあるフレーズだ。効果は、ええと……。

 俺は試しに傍にあった本を取り、アイテムボックスを使ってみる。何もない空間に球体の裂け目のようなものが現れ、そこに吸い込まれていく。定番の便利能力。


 ガチャは何だ?


 名前からして駄菓子屋にあるカプセルトイみたいなものだろうか? あるいは昨今話題になっているスマートフォンゲームの課金要素か。


「ガチャ」


 百聞は一見に如かず。使ってみれば目の前の床に小さな円形の魔法陣が描画され、そこからカプセル自販機が出てくる。

 レバーを回すとガコン、と音がして受取口に落ちてくる入れ物。大きさは市販のものと変わらない。


 早速それを開けてみれば――。


「あん? ……なんだこれ」


 明らかに色んな法則を無視して、一抱えほどの釜が出てくる。


 何故に釜?

 指先で弾いてみたら、カーンと良い音が鳴る。同時にまた頭の中に文字が浮かんだ。



 【ダグザの巨釜】



 何、ダグザ? 神話の? てか、ちょっと待て。

 このデザイン……どこかで……まさか!


 俺は慌ててベッドの下に封印したブリキ缶を引っ張り出す。中にしまってあるのは古ぼけた数冊の大学ノート。表紙にはきったねえ筆跡で『ミドル・クォーターワールド アイテム目録①』と銘打たれている。


 そう……これは俺の中二病集大成(黒歴史ノート)だ。あらゆる神話や自分で考えた設定などをイラスト付きで書きこみ、気づけば軽く数万種類を超えるラインナップになったシロモノ。

 俺は記憶を頼りに古ぼけたページをめくり、やがて目当ての項目を見つけた。


 ……やっぱり。


 そのページにはダグザの巨釜と同じデザインの釜のイラストが描かれ、同じ説明が書かれてある。

 冗談だろ……なんで俺の黒歴史が現実化してるんだよ。

 念の為もう一冊のノートもチェックしてみると案の定、『アイテムボックス』『ガチャ』の項目も。


 これがヴィトーの言ってた、想像力の具現化?

 何だこれ、こんなんでいいのか……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ