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その一は甘く。その二は酸っぱく。三度目は禁忌的に。

作者: あるふぁ

 ひたすらに溶かした。

 何を?

 コンビニのレジ横によくある小さいチョコレートを、二十個ほど。

 意味はないが、無性にやりたくなってしまったから仕方がない。別にこのロングセラーなチョコレートに恨みがあるわけでもない。決して、そんなことはない。

 鍋に水を入れた。その上にボウルを乗せた。火にかけた。ボウルの中でかつて二十個の台形だったものはドロドロな液状に変化していた。

 それをしばらく見つめる。スプーンでゆっくりと混ぜながら、その手ごたえを感じる。妙に重い。

 水で濯いだスプーンに口元を引きつらせ笑う俺が逆さまに映る。

 「お兄ちゃん、またなの?」

 妹が呆れたという雰囲気でため息をつく。

 中学一年生。セーラー服姿。ツインテール。低身長。絶賛成長中。何がって? 皆まで言うまい。

 「今日は理奈の日だ。これ以外にないだろう」

 如月理奈(きさらぎりな)。中学一年から三年時代の恋人。卒業間近なチョコの日に言われた言葉。

 『ごめん、今年から義理だから』

 以降、毎月十四日にはチョコレートをひたすら溶かす。別にチョコに恨みは微塵もない。絶対に。

 「俺らもこれくらいドロドロと混ざりあいたかったなぁ」

 気味悪く逆さに映る自分を見ながら、おもむろに左手を液状と化したチョコレートに沈める。既に熱湯から引き揚げたチョコはまだ熱く、へばり付いたそれを舐めとり露出した肌は赤くなっていた。

 俺の気味悪い笑みと妹の冷たい視線がスプーンの中で交錯した。

 「そういえば今年は成功したあれとコラボさせよう」

 そう、苺。去年はなぜか実ができなかった苺。今年は満を持して成功した。

 「……。その苺、私が世話したやつ」

 苺栽培。計画俺、育成妹。この役割分担こそ成功の秘訣に違いない。

 「ああ。感謝してる。でもこれも俺の愛なんだよ」

 「沙耶さん、苺好きだったもんね」

 「そう。沙耶、可愛いよ沙耶」

 鹿嶋沙耶(かしまさや)。高校入学で出会い、一目惚れ。俺の告白。

 『可愛いです付き合ってください』

 思えばあれで、いいですよと言ってくれた彼女は女神だ。可愛い。

 「すぐ別れたし、好きなものくらいしか知らないんでしょ?」

 ああ妹よ。その通りだ。

 さて、それはもう過去のこと。

 目の前には溶かしたチョコレートと愛をこめて育てた苺がある。

 若干固まり始めたチョコで苺を包む。

 「あぁ。これが愛の全てだよ」

 さり気なく妹が愛の片鱗(苺)を食べているが、少しくらいは目を瞑ろう。

 「理奈も沙耶も俺の心の中で永遠に……」

 愛の結晶(チョコ苺)を口に入れて転がす。甘酸っぱい。まさに恋。

 「思ったより美味しいね。他にも家庭菜園始めてみよっかなー」

 容赦なく苺を頬張る妹が、その美味しさに笑みを浮かべている。

 愛を喰らい、笑っている。

 「なに? 始めたら今度はお兄ちゃんも世話してよ」

 ああ勿論。

 チョコだろうが苺だろうが育ててやろう。

 二度失恋し、甘いも酸っぱいも理解した。この兄が、育てて見せよう。

 ああ。我が愛しの妹よ。

 

 はて。この三度目が失恋したら、次から誰が慰めてくれるんだ?

 

 

今回もお題から作成。

「チョコレート」「いちご」「三度目の恋」

というお題でした。

主人公をひたすら変に書いてみた(笑

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