必ず君を見つけてみせる
途中、話の視点が変わります。
『ドラゴン王子』
むかしむかしあるところに金髪に青い目のかわいい王子がいました。
王子が12歳の時、森で魔女にあいました。
魔女は王子が17歳になるまでに愛しいものからの口づけがないとドラゴンになる呪いをかけてしまいました。
王子は呪いの影響で黒い髪に黒い瞳になってしまい、お城に戻ることもできずに町をさ迷い歩きました。
徐々に時が経つにつれて王子の体はドラゴンに変化していくようになり、王子は森でひっそりとくらすようになりました。
絶望の日々を過ごしてたある日、王子は森で薬草を積みにきてた少女にあいました。
少女は最初は王子の姿に驚きましたが、何度か森で会ううちに友達になりました。
そんな日が続いたある日、少女が白い大きな見たことのない獣に追われているのを王子がすくいましたが、王子は大怪我を負い、少女は必死で看病して祈るように王子の手に口づけをすると王子は元の姿に戻り怪我も治りました。
元に戻った王子はお城に戻り少女と二人仲良くすごしました。
おしまい
◇◆◇◆◇◆◇◆
「グギャーーーーーーーー」
耳をつんざくようなドラゴンの叫び声が静かな森の中に響いてた。
ドラゴンの体にはあちこち傷があり、苦しそうにしてこちらを見ている。
ドラゴンが起き上がれないうちに金髪に青い目の少年がドラゴンに走り寄り、ドラゴンに飛びつくとその顔にキスをする。
その瞬間、ドラゴンから光があふれその体が少女に変わっていくが、ドラゴンの傷がそのまま少女に残っていたので治癒魔法を使える少女が急いで回復魔法をかけてた。
これでエリーゼじゃなくてアンジェリーナの呪が解けて王子とハッピーエンドを迎えるんだろうと俺は満足げに頷く。
俺の今の名前はシルキー。
しゃべることができる黒猫だ。
そして今回の呪騒動で一番役に立ったのが俺様だ。
え?意味が分からない?
まー順を追って話すと
ドラゴンにキスをした少年がヴィルベルトと言ってこの国の王子だそうだ。
その王子が14歳の誕生日の時に魔女が王子の婚約者のアンジェリーナに呪をかけたんだ。
『王子が17歳の誕生日を迎えるまでに王子からのキスをもらわないとこの国を滅ぼすドラゴンになるだろう』
この呪は東の魔女と呼ばれる魔女の呪で、物語で呪をかける魔女として有名だ。
この魔女は気まぐれで色々な国の王子に呪をかける迷惑な魔女としても有名なんだ。
その魔女は今回は婚約者に呪をかけて、自分がその婚約者になりすまして王子に近づこうとしたんだが、王子は個人個人が放つ魔力の色が見えるそうで、それが違うから偽物って気づいて魔女を倒したはいいが、魔女を倒しても呪が解けるわけではない。
しかもアンジェリーナがドラゴンだとはしらなかった王宮騎士団が、王宮に突然現れたドラゴンにかなりのダメージを与えて追い払った後だから、王宮は大騒ぎになったそうな。
大急ぎでドラゴンの捜索隊ができたけどみつけることはできずに2年が経った。
まー怪我を負ったアンジェリーナはなんとか森についたが、傷がひどくて動けなくなったのを助けたのが西の魔女なんだ。
西の魔女は魔女の中では優しいらしいが、東の魔女と姉妹と言うから油断は禁物だろう。
俺様も西の魔女には逆らわないようにしているくらいだ。
で、魔女が助けたといっても呪がかかってる者には何故か魔法が効かないし、薬の効果もいまいちらしいんだが、何故か魔女の呪や祝福は受けることができるらしい。
魔女の決まりはよく分からないことが多すぎると俺様は思う。
それで西の魔女はアンジェリーナの体と魂を分けて体は傷を負った状態のままで眠りにつき、魂は魔女が作った人形に魂を移すことでエリーゼと言う名の少女になった。
エリーゼはしばらく魔女の元で暮らすことになったんだ。
俺様もある目的があって西の魔女の元にいたからその頃からエリーゼとはよく一緒にいたのさ。
西の魔女と言うのはおせっかいな魔女でもあって、アンジェリーナを探す王子達に学園で探し物がみつかると学園にいかせ、エリーゼには魔女のお使いとして学園内の温室の世話をさせ、二人があうように仕向けたんだ。
そんなことさせるなら森に呼べばいいじゃないかと思うんだが、魔女の決まりで駄目らしい。
俺様的には二人を学園であわせるようにするのも、王子がこの森に来るのも変わらないと思うんだが、魔女の決まりで必ず会うようにしてはいけないらしい。
さっきも言ったが魔女の決まりと言うのは本当に面倒なものだと俺様は思う。
学園で半年くらい過ぎたころようやく二人は遭遇するんだが、あっただけどエリーゼは何も言わないし、王子もまさか別の姿の少女になってるとは思ってなくて気づかなかったらしい。
魔力の色がわかるんなら気づくだろうと思うんだが、色がちがってたらしい。
まー確かにエリーゼになってから魔法が使えないと言ってたからその影響なんだろう。
2人が逢ったんだから進展もあると俺様期待したのにエリーゼときたら全く行動をしない。
問い詰めたら
「元に戻っても怪我がひどくいからそのまま死の可能性もあるのよ?
元に戻ってまた別れるならこのまま気づかれない方がいいわ」
とか言うし!!
何故、助かる可能性を信じずに諦めてしまうのか俺様非常に頭に来たので、二人をあわせるように頑張った。
王子が持ってるペンダントを奪って、エリーゼの方に誘導させて俺様ちょー頑張った!!
なのにエリーゼは頑なに必要最低限でしか王子に接しない。
俺様、王子がエリーゼの正体に気付くまでは王子の前ではしゃべることできないからちょーもどかしい日々のだった。
そうこうしてる間に2ヶ月が経ち、王子の誕生日まで残り4ヶ月というところ。
最近は俺様が誘導しなくても王子はエリーゼの側に来るようになった。
後で聞いた話だと、魔力のある猫が何度もエリーゼの方に誘導するから何か手掛かりがあるんじゃないかと考えたらしい。
後はエリーゼだけだと俺様、何度も何度も何度も何度も説得してようやくエリーゼが条件をだした。
エリーゼは見た目かわいいのに頑固すぎると俺様は思う。
「アンジェリーナが好きだった歌を歌ってる時にヴィルを連れてきてくれる?
それでヴィルが気づいたら全て話すわ」
ようやくエリーゼがちょこっと前向きになったんだから学園の端にある池の側で歌ってるエリーゼの元に大至急で王子を連れてこようとした矢先、王子が走ってきた。
エリーゼの声は響くらしくエリーゼを探して歩いてた王子の耳に届いたんだそうだ。
結果は王子は気づいた!!
何で王子が気づいたかと言うとアンジェリーナはその歌をちょっと変わったアクセントで歌うらしい。
元の歌を知らない俺様にはわからないのだがそれと同じアクセントでエリーゼが歌ってたから気付いたんだそうだ。
それから呪解決のために即行動にうつった。
というか王子はエリーゼにすぐにでもキスをしそうになったのでとめるのが大変だった。
全く、エリーゼの事気付いたから王子の前でも俺様喋れるようになってたからよかったものの危うくエリーゼが死ぬとこだった。
俺様の今までの苦労を水の泡にさせてたまるかってんだ!!
そういうわけでドラゴンの時では回復が効かないので呪がとけたらすぐ回復できるように治癒魔法師と薬師の手配をしなくてはいけない。
エリーゼはひとまず森に戻り、王子と治癒魔法師、薬師、護衛2人の案内役として俺様が行くことになった。
それで冒頭の状態になるわけだ。
治癒魔法師と薬師の手当てでアンジェリーナに戻った少女が立ち上がり、王子と抱きしめあっている。
これでハッピーエンドだな!!
このハッピーエンドは俺様のおかげといってもいいはず!!
俺様あってこそのハッピーエンドだと思ってると俺様の体も光りはじめた。
ああ、ようやく俺様の夢がかなうか・・・・。
◇◆◇◆◇◆◇◆
私、アンジェリーナはようやく呪が解けて、王子に抱きしめられたまま今までの事を思い浮かべました。
呪いをかけられた日は王宮の庭で散策をしている時でした。
突然の事態に何が何だかわからずに森に逃げ、西の魔女と名乗る老婆に助けてもらいました。
この世界に魔女はけっこういるそうで、その中でも高位の魔女4人を北の魔女、南の魔女、東の魔女、西の魔女と呼ぶそうです。
東の魔女と名乗る魔女は今はいないそうです。
東の魔女は大昔に魔女だからと言う理由で王子にふられた腹いせに無関係な王子達に呪をかけまくってましたが、魔女にはそれぞれのテリトリー内では何をしようが他の魔女は手出しをできないので今までは東の魔女を咎めることを他の魔女はしませんでした。
ですが、今回東の魔女は西の魔女のテリトリー内で呪を行ったため、西の魔女は手をかしてくれました。
ヴィル達が魔女を倒すことができたのも西の魔女がこっそり支援したためだそうです。
東の魔女が今回、テリトリー外で呪を行ったのは、ヴィルが魔女をふった王子にそっくりだったからだと西の魔女は言いました。
だから今回は王子に呪ではなく、私に呪をかけることで私の姿になって近づけは王子はうけいれてくれるのではないかと思ったそうです。
東の魔女が倒れても私の呪が解けるという事はなく、私は西の魔女の元でしばらくお世話になることになりました。
この時、西の魔女の元にいた黒猫のシルキーと友達になりました。
シルキーは魔女の使い魔ではないそうですが、どうして西の魔女のところにいるのかは何度聞いても
「目的のためにいるだけだ」
としか教えてくれませんでした。
そんなある日、西の魔女にとある場所で温室の世話をしばらくしてほしいと頼まれ向かった場所は、貴族たちの通う学園でした。
ここにはヴィル達も通ってるはずで、西の魔女がここに私をよこしたのは遭遇させるためかしらと思いましたが、私はヴィル達には会うのをためらっていました。
既に私の事を忘れていたら?
それを考えると会うのが怖く、そして元に戻れてもひどいけがの状態ではそのまま永遠の眠りにつくだけなら逢わない方がいいはずと思ったのです。
そんな感じで半年がたったある日、偶然にもヴィルと兄のジークが温室にやってきました。
私は2人が探している薬草を渡すのみで、そのまま別れました。
一目見れたし、私はこれで十分と思ってたのですが、シルキーは納得しなかったようでヴィルと私を遭遇させたり、何度も私に諦めるなと言ってくれました。
シルキーが必死に説得する理由、私は知っていました。
シルキーも東の魔女の呪を受けて期限までにキスをもらうことができずに長い時を猫で過ごしているという事を西の魔女が以前教えてくれたのです。
だからこそチャンスがある私が諦めてるのが許せなかったのでしょう。
私は思い切って賭けに出ることにしました。
ヴィルと一緒にいるときによく歌っていた歌に気付いてくれたらうちあけるとシルキーに言ったら喜んでヴィルを呼びに行ってくれました。
歌いだしてしばらくしたらヴィルがやってきました。
「アンジェリーナ!!その音のはずし方はアンジェリーナだよね!!」
・・・・・。
ちょっと失礼ですわヴィル!!と思いましたが、飛びついてくるヴィルに圧倒され文句を言う暇がありませんでした。
今すぐにでも呪を解こうとするヴィルに
「何しやがる!!」
とシルキーがヴィルにキックをしてきたのには驚きました。
猫のキックなんて滅多に見れないから貴重な体験でしたわ。
何はともあれ落ち着かせたヴィルに事情を説明し、私は魔女の元に戻りました。
西の魔女はわかっていたようで既に準備が整っていました。
西の魔女はこれでようやく東の魔女の尻拭いが終わるとわらっておりましたわ。
しばらくするとヴィル達がやってきて、わたしはようやく元の体に戻ることができました。
体はまだあちこち痛いですが、何とか体を起こすとヴィルが抱きしめてくれました。
諦めないで良かったと思った時、突然光があふれだすのが見えました。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「シルキー?!」
アンジェリーナが僕の方に近寄ろうとするけども、まだうまく歩けないらしくヴィルに支えられながらこちらに近づいてきた。
僕の体は猫の体から元の人間としての姿に戻り始めていた。
といっても呪を受けたのは100年以上も前だから体は透けているけど・・・・。
『君のおかげで僕も戻ることができたよ、ありがとう』
「シルキー?」
アンジェリーナに僕は笑顔を向ける。
最後はやっぱり笑顔でお別れが一番だ。
『17までにキスをもらえなかった僕が元に戻れるもう1つの方法。
同じ魔女に呪をかけられた者を助けて呪を解くことなんだ。
おかげで僕も新しい命に生まれ変わることができる』
僕がアンジェリーナに元に戻って欲しかった理由は実は自分の為だったとなればがっかりするだろうか?
『おい、そこの王子?アンジェリーナを泣かせたら化けて出るからな!!
アンジェリーナ幸せになれよ』
その言葉と共に俺の体は消えた。
15の時に呪にかけられ、側にいた双子の弟は僕を隠し、皆には僕がいなくなったと伝えた。
そこまでして王位が欲しいのかと最初は思ったが、弟は僕より先を見る目を持っていた。
猫の姿になって数カ月たったある日、隣国が攻めてきた。
そしてどうあがいてもそれは勝ち目のない戦でしかなかった。
その時、弟は乳兄弟のカインに俺を託し逃げろといってきた。
弟はこの時のために猫になってしまった僕を隠していたのだとその時、初めて気づいて抗議したが俺の意見も聞かずにカインは俺を連れて城を出た。
だけど、弟も予想しなかった展開がその時起きた。
隣国は禁呪と言われる部類の攻撃魔法を僕達の国に放ったのだ。
小国だった僕達の国はあっという間に焼け野原になり、お城も跡形もなくなり、カインも動かなくなっていた。
呪いのかかってる僕には魔法は効かないから、誰もいないただの焼け野原になった国をただみつめるしかなかった。
隣国は僕達の国が欲しいから戦を仕掛けたのではなく、他国にこのようになりたくなければ我が国に従えという脅しの材料にする為だけに僕達の国を焼け野原にし、そのまま放置した。
何もできなかった自分が悔しくて、見てるだけしかできない自分が情けなくて、僕はひたすらに走った。
正直この時の記憶はいまいち覚えてなくて気が付いたら西の魔女に拾われていた。
西の魔女は東の魔女の尻拭いをしているらしく、その関係で僕を拾ったと言っていたが、僕にはどうでもいいことだった。
無気力に魔女の側で過ごしたある日、魔女が教えてくれた。
僕の故郷はきれいな花々が咲き乱れていると。
あの後、僕達の故郷に人は住むことはなかったけど、花たちは自然に咲いたらしい。
そして魔女は告げた。
『元の姿に戻すことはできないけども、
東の魔女の呪にかかった者を助ければ新しい命として生まれ変わることができる』
それを聞いて僕は決めた。
何もなくなってしまった故郷でも力強く生き返ってるのなら僕ももう一度やり直そう。
今度は守りたいものがちゃんと守れるように生きよう。
アンジェリーナ、君を助けることができて本当に良かった。
さようなら
◇◆◇◆◇◆◇◆
アンジェリーナの呪が解けて5年が経つ。
あの時は陛下にさえ何も言わずに決行したから、戻るなり色々文句を言われたが結果よければすべてよしだ。
俺達は学園生活に戻り、体調もよくなったアンジェリーナも学園に通うようになった。
アンジェリーナは前と変わらず、音の外れた歌を歌ったり、薬草の世話をしたり平穏に暮らしている。
あの日、消えた黒猫がつけてたリボンをアンジェリーナは今でもお守り代わりに持ち歩いている。
あの黒猫は俺にとっても恩人だ。
いなかったらきっとアンジェリーナに会えずに嘆くばかりの日々だったろう。
ただ、話題によく「シルキーが・・・」って出るのは面白くない。
だから俺はアンジェリーナには教えてないことがある。
最近生まれた俺達の子供があの時、人の姿に戻った少年と同じ魔力の色をしているってことを・・・・。
最後まで読んでくれてありがとうございます。