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おなじみちを、あゆんでほしくないから。 ~ わたしはぜったいに、あいにいくよ。

作者: だみ

 もう、貴女には会っては行けないの。貴女もついて来るから。

 だから、もし、貴女が私に会いに来たのなら……。

「約束は守るわ」





 私はね、昔から今みたいな夢を見てきたの。日本に来る前から、ずっと。稀だったんだけどね、その頃は。でも、貴女に会う前から、週に五回は見てたわ。

 私の母親は日本人だったから、幼くても、日本語は大体話せたわ。だから、誰かに会ったら、「こんにちは」って言うことができたわ。皆、不思議な顔をしていたのが今でも覚えているわ。

 そして、その夢の世界では飛ぶことができた。何でかは知らなかったわ。

 そして、終いには結界の境界まで見えるようになっていたの。こっちも何でかは知らなかった。

 私は何回も不思議な夢を見続けていたり、境界を見たりしたけど、遂に終わりが近いと思ったわ。

 それに気づいたのは、まだ大学にも入学してなくて、貴女にも会えてなかった頃よ。

 暗い世界。真っ暗で周りは見えないんだけど、何故か自分の姿は見えた。

 私の正面に亀裂が入って、それが大きく広がった。その中から一人の人が出てきた。

「……貴女は?」

「私は八雲紫。貴女を境界を見えるようにしたり、子供の内から幻想郷を見させ、飛べるようにしたのも、全部、私が貴女の運命を導かせるためだったの。全部、幻想郷を知って貰うために……」

「私の運命……?」

 これを聞いて、嫌な予感がした。外れてほしかった。でも、外れなかった。

「貴女は幻想郷の管理者って決まってたの。ずっと、ずっと前から。貴女が管理者になったら、存在は全部消えるわ。それに、あの世界は行ったら最後。戻る事のできない一方通行よ」

 運命。それはあの世界を守る事だった。それが、私の運命だったの……。しかも、その運命から外れることはできない。必ず……行かなきゃならなかったの。

「私は貴女と同じ道を歩んだ。だって、私は貴女なんだもの……」

「私は……あそこの管理者に……」

 私はもっと現の世界で生きたいわ。だから、そんなことを言われても納得がいかなかった。

 だからね、頼んだの。

「あと……あと、私が大学を卒業するまで……それまで待って下さい……」

 紫は予想外の答えに吃驚したのか、目を見開いた。

「……いいわよ。大学を卒業するまでね。約束よ」

 私はここで気を失った。私は、まだあそこで生きれるわ……。

「……気持ちは変わるのね。私の時は引き延ばしたりしなかったのに」




 私は京都大学に留学して、宇佐見蓮子って言う、星の光を見たら時間が分かって、月を見たら今立っている場所が分かっちゃう人に会ったの。そして、秘封倶楽部に誘われて、私の眼を利用してあちこち行ったりしたわ。

 蓮台野の冥界桜の花弁、東京旅行、月面へと通じる境界探し、衛星トリフネの鳥居、善光寺の神の墓場……色々、色々あったわ。でもね、怖かったの。だから、幻想郷に通じる境界は敢えて言わなかった。

 たまに、頻繁に見る幻想郷の夢を貴女に語ったわ。それに出てきた人の名前は出さずにね。そしたらね、貴女はいつも私の夢を現に変える方法を考えたわ。駄目。変えちゃ……駄目よ。私みたいになってほしくない。

 親しい友人だったからこそ言えない事実を知らない貴女は、いつも先々と進んで夢を現に変えようと努力をした。私は何とか取り抑えたけど。

 そして、留学から五年後の冬。無事に卒業式を終えることができたわ。さぁ、約束を果す時よ。

「事情は分かっているわね?いくわよ?」

「約束は守るわ。後悔なんてしません」

 覚悟はした。あとは、幻想郷を築いて、育てるだけ。

「じゃあ、通りなさい」

 私は過去へと通じる境界を通った。もう後戻りはできない。一方通行なんだから……。




 むしゃくしゃする。何だろう、この気持ち。感じたことのない気持ち。

 何かが欠けている。大学を卒業してから三年後の今、まだ続いているこの倶楽部には私だけの筈なのに、誰かが居ない。私は大学時代、誰かと話した筈……。

 でも、誰かだなんて思い付くわけがなかった。

「あー!何なの!?この気持ち……」

 私は何故そう思ったかは知らなかった。誰かと一緒に行って、鳥居を潜らず引き返して来た覚えのある、あの神の影も消えていた博麗神社に行ったことを。

 私は鳥居の前で立ち竦んだ。何故入れないの?入るくらい簡単よ。そう思い、足を一歩、踏み出した。

 鳥居を潜り抜けたらぼろぼろな神社に見えたのが嘘のように、綺麗な世界が広がっていた。

 神様の道の途中、誰かが後ろ向きに立っていた。

「来ちゃ……駄目よ。ここに来れば後戻りなんて、できないのだから。でも、大丈夫。私が戻してあげるわ。そして、一生来れなくしてあげるわ」

 この声を聞いて、私は消えていた記憶を全て悟った。メリー。メリーなのね!

「メリー!何で……何で……何で何で何で!!…………何でいなくなったの!!何で……私を……置いていったの……」

 涙が堪えられない。急に消えたメリーは不思議な格好をしていた。

「来ないで。私を、知らないで。理解(わか)らないで。今はメリーなんかじゃないわ。八雲……紫よ。そう、八雲紫よ!そして、ここが今の私の生きる場所なのよ!!」

「何を言っているのよ!メリーは……メリーなんだよ!?」

 堪えきれない涙は、溢れて頬を伝った。

 今になって思い出したメリーとの思い出。

 冥界、旅行、月面、衛星、墓場。色々あった。色々冒険をした。怪我もした。いつも、冒険の最後には笑い合った。

「教えてあげるわ。私は前からこの運命になる羽目だったの。私はここをずっと前から知っていたの……。そして、私はある人と出会って━━」

 メリーは私の知らないことを全部語った。

 この世界に慣れるために、小さい頃からここの夢を見たり、その夢の世界の常識を知るために飛べるようになったり、管理者になるために必要な能力を授かったり……。

 悔しかった。全部知らなかった。知っていることが一つもなかった。

「もう、帰りなさい。貴女は現の世界で生きなきゃいけないの。一方通行の幻想郷(この世界)に入ってはいけないわ。お願い、同じ道を、歩んでほしくないから。さようなら、もう、二度と会えない相棒、宇佐見、蓮子……」

 メリーの姿は消えた。いや、メリーだけじゃないわ。鳥居も、神社も……全部。

「あんなこと……もっと早く知ってれば。早く知ってればよかったのに!……」

 知らなかったことをひどく後悔した。そして、声と呼べない声をここに、あの空に、私の世界に、メリーの世界に……響かせた。

 家に帰ったあと、何処へ行ったか覚えていない。ただひたすら、メリーにもう一度会うためだった。会って、二度と戻れない道から外させて、私の世界、現の世界に連れ戻すためだった。

「メリーと私がまた、この世界に戻れるなら、どんなに後戻りのできない一方通行の道だって……通って、戻ってきてみせるわ。私の一生の相棒、マエリベリー・ハーンと一緒に……」

 メリーの名前を初めてつまずかずに言えた。

「……これで大丈夫ね。待ってて、メリー。今、私が、メリーが帰れない場所に帰らせてあげるから。常識を逆らってでも……私は絶対に、会いに行くよ。運命を切り開いて…………」

 私はずっと除けていた帽子を取り上げ、出掛けた。

    すぺしゃるさんくす!


この短編を作るきっかけを作った動画様

  またここで、もういちど PV様



 この短編を呼んでくださった皆様……




      作者:極楽鳳凰












一応、書いた方が良いと思いまして……。

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