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フリーデン

「ふぅ~。これであらかた終わったか」


盗賊を殺したあと、村人の死体を一人一人土葬してやった。結構な数だったが不思議と苦ではなかった。むしろ清々しい気分でいっぱいだった。


「あとはこの焼け跡はどうするかな」


ほとんどの民家が全焼してしまい、盗賊等の酒盛りの場だった民家も俺が吹き飛ばした。二度と使えないからな。


そういえば女神が言ってたな、人間も造れるとな。人間を召喚できるなら拠点を造ろう。俺一人ではどうすることもできないが男手が多数いれば少しは楽に造れるだろう。


「よし!そうと決まればさっそく創るか!」


しかしただ造っても面白くない。ここはなにか趣向を凝らそう。


「ためしに一人、有名人でも創ってみるか。」


どうせなら歴史上の人物にしよう。実際どんな人物だったか見てみたいしな。

頭の中を空っぽにして集中する。造り出したいものをイメージするのだ 。


「えい、いでよ!宮本武蔵!」


ファンタジーらしく叫んでみる。すると、目の前が煙幕に包まれ見えなくなった。中々無難な登場だな。


「武蔵!武蔵!武蔵!」


武蔵コールで待ちわびる。どんな人物なのか?どれぐらい強いのか?そんな期待を抱いていた。


「武蔵!武蔵!む・・さ・・・し?」


コールが止まる。なぜなら、


「おはようございます。カオル様。」


目の前には黒髪美人な撫子がいた。

腰まで届く艶のある長い黒髪に手を加えずストレートヘアのままにしている。女性なのに袴を着ていて凛とした身構えだ。

というより、


「誰?」


「何を言いますか。この宮本武蔵を喚んだのは貴方でしょう?」


えっ?宮本武蔵?

この美人な女性があの最強と詠われた宮本武蔵か?飛んでるハエを箸で捕らえたとか、一生風呂に入らなかったとか噂があるあの宮本武蔵?

たしかに腰に二本の刀を差してるし武蔵っぽいけどこれじゃただの武蔵のコスプレした女だよ。


なんでこうなったのか考えてみると意外なところに直結した。すぐさまポケットからスマホを取りだし連絡先に登録してる人物に電話をかけてみた。


プルルルルルルルルルルルル


『はい、もしもしー?』


「おい女神、てめぇの仕業か?」


『その反応から察するにもしかして偉人でも召喚しましたか?』


「そうだよ!宮本武蔵を喚んだのに女が出てきたよ!一体どうなってんだ!」


『それが付与した能力ですよ。』


「これが?」


『元居た世界では彼女どころが女友達さえ作れなかったんでしょ?だから特別にこれから貴方が創った人間は皆女にしときましたよ。』


「余計なことするな!これじゃ居心地悪いだろうが!


『女だらけの中に男一人とはAVでも人気なシチュエーションでしょ?居心地悪いなんて中々のジョークですね。』


「これのどこがジョークだ!おいどうにかしろ!」


『一度召喚した人間は消すことができないんですよ。だけど誰を召喚しても皆貴方に忠を尽くしますよ。』


「忠義心の問題じゃねえ!」


『とにかく付与したものは仕方ないですから。頑張って異世界で生活してくださいね。もちろん性活のほうも・・・キャー!イヤンイヤン!スケベなひ』


ブツッ


これ以上話しても無駄だと知ったため切ってやる。


今女神が言った通りミリオタだった俺は女友達がいなかった。そのため人生でも女性と接していた機会は極端に低い。

だが女神の配慮で女性との接点も増えるかもしれな・・・って違うわ!


「あの・・・?。カオル様?」


いきなりあわめいた俺を気遣い、声をかけてくれた。いかん!心配かけないようにしよう。


「だ、大丈夫だ。心配するな」


「そうですか。不安や悩み事があったらいつでも私に甘えてくださいね」


まるで天使の微笑みともいえる満面の笑顔を見せる武蔵。か、可愛い・・・。


そうだ。たとえ女でもいいじゃないか!あの宮本武蔵なのは違いないと思うし。


「よろしくな武蔵。」


「こちらこそよろしくお願いしますカオル様。」










そのあと俺は人手を増やすため、武蔵を召喚したようにバンバン人間を創った。この文、なんかエロいな。バンバン人間を創ったってなんか子作りみたいな卑猥な発言だな。


そんな邪念を振り払うように指示をだす。俺の指示を承けているのは能力で創った女性達。容姿端麗で選り取りみどりな女性達は男に負けずともせっせと働いている。あの武蔵も辺りの木を斬っていく。流石は最強の剣豪。剣の動きが読めない。



東京ドーム20個分の広さに木を斬り倒し開拓していったら基地を創る。いずれ人員は増やすつもりだがまずはこの大人数を入れられるくらいの基地を創る。


荒れていた地面はコンクリートで塗装し、外敵が立ち寄らないように高さ五メートルのフェンスに有刺鉄線と電流が流れるようにした。各所に監視カメラなど設置してより堅固な防衛陣営にする。

建物は兵舎に加え武器や装甲車などのため備品庫や車輌庫を。監視塔や地下の指令部で強固な要塞と化した。さらにはトーチカやヘリポートを設置した。これだけなら立派な軍事施設だな。



基地を造り出した俺は兵士達を集合させ整列させるように武蔵に命じた。女性兵士達は皆きびきびと移動しあっという間に整列完了した。


兵士達の数は800人。1600個の目に見られるのはさすがにキツい。緊張しながらもマイクを片手に演説を始める。


「おはよう諸君!」


「カオル様、今は昼間でございます。」


「・・・」


あまりの緊張感に間違ってしまった。訂正してもう一度演説を始める。


「コホン!失礼。諸君!我らはこの世界に戦争を仕向ける存在となるだろう。」


戦争という言葉に皆の目に決意が顕れた。


「だがしかし、この世界の新たな抑止力となり、秩序を征する存在にもなることを信じている!平和を胸に、大義を心に、我々は動いていく。そして今、ここに我等の国、フリーデンを建国することを宣言す!」


ワアァァァァァ!!


演説を終えると一斉に歓声で埋め尽くされる。よかった。皆建国に賛成のようだ。

ちなみにフリーデンはフランス語で平和って意味だ。平和を願い武器をとる。そういう想いが秘めてある。


「お疲れ様ですカオル様。」


武蔵がコーヒーを出してくれる。ブラックだから苦いがな。


「ありがとう武蔵。」


「いえ、気にせずに。ところで建国して何を為さるつもりで?」


「そうだな。まずはこの世界の国と同盟を結び、他国との争いごとを牽制するんだ。そうすれば迂闊に手が出せないだろう。」


平和を欲するために他国を牽制する。それが目的だ。極力、武力による支配ではなく、思想による調和を計るのも第一だ。


「あと武蔵に副総督を任したい。引き受けてくれるか?」


「えっ?この私にでしょうか?」


「どうだ?お前なら出来ると思うんだが」


「はい、喜んで引き受けさせてもらいます、総督。」


こうして俺はフリーデンの総督、武蔵は副総督となった。





「ではいってらっしゃいませ。」


翌日、俺は40人ほどの第1中隊と共に異世界を探検してみる。見送ってくれるのは武蔵。俺が基地を離れるため、ここの指揮を任せられるのは武蔵だけだ。


ブロロロロロロロロロロロロロロロ


イラク戦争や湾岸戦争などでアメリカ軍の足となった高機動多用途装輪車両 HMMMV(ハンヴィー)がエンジンを鳴らす。キューポラには第二次世界大戦から60年以上愛されてるM2重機関銃を搭載され、車体にはカスタマイズされてる。激戦に備えて装甲車、LAV―25を一台用意しておいた。主武装のM242 25mm砲がその雄々しい姿を物語っている。


分厚い鉄の扉を開閉し、いざ異世界の地に足もとい、車輪を踏みしめる。









車輌を走りはじめて30分。

木ばっかりの森から乾燥した砂漠地帯に脱け出した。砂だけの砂漠ではなく辺り一帯が乾燥した世界だ。おかげで砂に車輪をとられる心配もない。


「地平線しかないな」


「そうですね。」


対話してるのは第1中隊の豊田 五月中尉。五月中尉は俺と同席しており、この第1中隊を束ねる女性だ。


「ですけどこのまま何も出くわさないでほしいですね。


「そうなればいいんだがな。」


「まあ、魔物に遭遇しても我々なら容易く討てますよ。」


「ほう、大した自信だな」


「それが私のチャームポイントですから」


「隊長!第四車輌から通信が!」


突然助手席に座っていた兵士が声をあらげる。


「貸せ!」


さっきまでの和やかな五月中尉は別人のようになり強引に兵士から無線機をとる。


「応答しろ!何があった!」


『こちら第四車輌。前方に魔物を発見!現在、二台の馬車を襲撃している模様。どうしますか?』


「総督、ご指示を。」


「襲われているのか。なら助けない訳にはいかない。今から第四車輌と合流する。第四車輌はそのまま追跡してくれ。馬車が危なかったら発砲を認める。」


「はっ!第四車輌、総督直々のご命令だ!お前らはそのまま追跡しろ!状況次第では発砲を許可する!」


『了解!通信をきる!』


通信が切られた。

俺の命令を承り、HMMMVは一段とのスピードが上がった。それに伴い揺れが激しく車輌を襲い、おもわず舌を噛みそうになる。


「いたぞ!あそこだ!」


キューポラでM2重機関銃を携える兵士が指を差す。その先、砂ほこりをあげてひたすら一路を目指す影があった。


二台の馬車と巨大な蠍のような魔物。全速力で走ってる馬に鼻差で追い付きそうな蠍は8本の脚を器用に使い追跡し続ける。


「無線機を貸してくれ!」


助手席の兵士から無線機を借り、電源をオンにして叫ぶ。


「全車両に告ぐ!直ちに迎撃せよ!あのバケモノに目にものを言わせてやれ!」


『ラジャー!』


ダダダダダダダダダダダダダダダッ


すべてのHMMMVのキューポラに搭載されてるM2重機関銃が火を吹く。ベルトマガジンが勢いよく吸い込まれ反対側からは薬莢が撒き散らされ地に落ちる。

全車両からの一斉射撃は巨大な蠍の甲殻を突き破り肉片を散り撒く。


キシャャアァァァァァァァ!?


蠍は走行を止め激しく悶絶している。今が好機!


「全車両の兵士に告ぐ!あの蠍にありったけの弾丸をぶちこめ!」


停車したHMMMVから次々と兵士が降り各々が銃を構える。


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!


様々な発砲音がする。

キューポラのM2重機関銃に加えて兵士のHK416も怒涛の銃撃を繰り広げる。特にLAV―25のM242 25mm砲が猛攻なる射撃を魅せる。すべての兵士が一心同体となり銃の引き金を引き続けた。


キシャャアァァ!!


負けずと蠍も鋏や尾の毒針で対抗する。しかし全方位からの弾丸の雨になす術もなく混乱し始め、苦悶に平伏すだけだった。


「五月中尉!アレを使ってとどめをさせ!」


「了解!」


HK416をしまい、HMMMVの車内から大きなケースを取りだす。開けると分離された弾頭と筒状の本体部分であるRPGを手にした。


鮮やかな手口で二つを合わせてスコープを覗き標準を調整した。


「離れてください!こいつをぶっぱなしますよ!」


五月中尉は肩にRPGー7を背負って構える。


バシュッ!


引き金を引いた瞬間、ロケット弾である弾頭がミサイルのように宙を滑空して飛んでいく。弾頭は蠍の右腹部に当たると轟音と共に凄まじい爆発が起きた。


爆煙に包まれ、はれると無惨に散った蠍の死体があった。赤褐色の甲殻には無数の風穴が空き、RPGの弾頭によって体の半分が吹き飛んでいだ。


「ターゲット、反応なし。死んだ模様です。」


「よし、武器を片付けろ。」


「総督、あの馬車から誰かが来ます!」


兵士に言われるがままに振り向けば馬車から何人かの騎士が降りて駆け寄ってくる。


「銃を下ろせ。彼らに敵意はないようだ。」


「はい。」


騎士達の中から数人前に出てくる。その先頭を指揮するは女性のようだ。金髪の女性、華やかさと逞しさを兼ね備えたような女性だ。


「我々を助けてくれたのは君たちか。この者達を代表して礼が言いたい。」


「いや、気にすんな。当たり前のことをしただけだ。俺はこのフリーデンを率いてる大場 カオルだ。」


「私はセニア・アーマライトだ。時にカオル。お前達は一体何者だ?あの砂漠地帯の主であるレッドスコーピオンを簡単に倒すとは。とくにあの摩訶不思議な道具だ。連続して撃てる銃や馬を使わずとも走る車、そんなもの聞いたことも見たこともないぞ。」


「悪いがそれに関しては教えることができない。これは俺たちだけの秘匿品だ。」


「そうか・・・。それは残念だ。」


「すまないな。」


「頭を上げてくれ。そなたらは命の恩人だ。そんなことを聞いた私に非がある。もしよければ・・・」


「セニア様、少し・・」


「ん?なんだ?」


一騎士に連れられなにやら耳打ちしている。なにかの秘め事だろうか?話が終わったらしく、こちらに戻ってきた。


「どうかしたのか?」


「いや、どうやら部下のミスで我々の荷車を引く馬が逃げてしまったようだ。これではペースが遅れ、今日中に帰れなくなってしまった。」


「なら、俺たちが手伝おうか?」


「いいのか?しかしどうやって?」


「なに、簡単だ。」










「おおー!スゴいぞ!こんなに速くはしるとはな!」


「しっかり捕まってろ!舌を噛んでも知らないぞ!」


HMMMVに荷車をくくりつけて走行してる。サスペンションがないため、荷車はガタガタ揺れるがそんなのお構い無しにスピードを緩めることはない。

セニアは俺と同じ車両に乗って、この世界にはない乗り物を楽しんでいた。


「カオル、ところでこの黒いのはなんだ?石ころぐらいの大きさだが」


「待て。それは手榴弾だ。頼むから何も弄るなよ。」


好奇心旺盛なのか、車内の銃や設備に興味深々だ。手榴弾は危険だが銃はセーフティーをかけてるし安全だ。セニアが外すことがなければな。


「この車は何で走ってる?馬もなければ人力でもないな。」


「これはガソリンで動いてる。知ってるか?」


「ガソリン?うーん・・・聞いたことないな。」


質問しまくるセニアとは対称的に彼女の部下は怯えるばかりだ。不思議な格好の兵士に警戒心を抱き、ブルブルと震えている。


「カオル、その変わった形のものはなんだ?」


「これはHK416だ。一言でいうならば銃っていう武器だ。」


「銃?マスケット銃と同じだな。」


「マスケット銃?すでに存在してるのか?」


「えっ、知ってるのか?」


「知ってるというよりも聞いたことあるな。単発式の長銃だろ?」


「・・・ああ。そうだ。」


マスケット銃のことになるとセニアの顔が暗くなる。聞いちゃいけないことだったか?


「セニア?」


「なんでもない。」


なにごともなかったように話をかえる。

すると運転中の兵士が会話に入ってくる。


「カオル様、まもなくドレイク公国です。」


その先に見えたのはセニア達の母国であるドレイク公国。その街門を目指してHMMMVは土煙を立ち上げていった。







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