戦士達の安息日 ~sabbath of Warriors~
チュンチュン
薄暗い部屋にカーテンからわずかに日の光が射し込む。スズメの鳴き声が目覚ましがわりとなって彼女の寝覚めを良くする。
「朝か・・・」
薄いシーツを払い、起き上がる。少しまぶたが開かないが気にすることではなかった。
強く目を擦った内、室内にある時計を見てみる。まだ7時だ。いつも起きる時間と同じ時間帯だな。
ベッドに腰掛け背筋をピーンと伸ばす。熟睡してたからか、昨日の戦闘の疲労はなく、筋肉痛もなかった。
だが夜中は暑かったために汗をかいてしまった。
「少し、散歩するか・・・」
寝間着のまま部屋を出て辺りを歩く。まだほとんどが寝ているのか、長い廊下は静かで閑散としていた。
「ふぁ~。」
ここで下着姿で歩くミハエルを発見。まだ起きたばかりなのか、フラフラと千鳥足だ。
「セニアか・・・、」
「大丈夫か?ほとんど目が開いてないぞ」
「あ~。大丈夫大丈夫。ここで寝れば・・・」
そう言うと壁越しに座り込んで頭を下げる。まさかここで寝るつもりか、
「おい」
「・・・ぐぅ~」
反応なし。それどころがすでに寝てしまってる。なかなか寝つきが早いな。
「風呂でも入るか」
汗でベトベトな身体を浄めるために風呂へと向かう。ここの風呂場は見慣れない装置がついてるが1週間もここで過ごしていれば慣れてきた。あのシャワーというものは実にいい。
ここの風呂場は基本的にいつ、何時も入れるように湧いてある。いまのセニアにとって嬉しい限りだ。
ガラガラ
「ん?」
扉を開けてまず目に飛び込んだのは裸体。先客かと思えばすぐさま否定する。女性の身体とは別物。根本的に構造が違う生物だ。
引き締まって痩せている筋肉の中肉中背の優男。腰にタオルを巻いてるものの、そこから覗く太ももは充分に鍛えられている。
「ふぅ~、さっぱりした~」
カオルはタオルでゴシゴシとして、頭の髪に付着した水分を摂る。
「カ、カオル?」
「へ? ・・・セニア?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
基地の風呂場にセニアの悲鳴がこだまする。これが兵士たちの目覚まし時計がわりになったのは余談であった。
/※/
「まったく!いるならいると言ってくれ!」
「いや、俺が先に入ってたから悪いのはセニアだと思うんだが・・・」
風呂騒動から15分後。ようやく落ち着いたセニアを交えて謝罪会見が開かれた。
「そもそもあそこは女子風呂だ!そこへ入ってたのはカオルだろ?」
「ち、違う!風呂は一つしかないから時間帯で使ってる!しかも、この時間帯は男だろ!」
「あっ・・・」
たしかにそうだ。女子が多いこの基地には風呂は一つしかないため、時間を決めて入るようにしてる。カオルが入れるのは女子の寝てる間、つまりは夜中から朝方にかけてだ。
それを忘れて入浴しようとしたこちらに責があるだろう。
「ごめん」
「いいさ、今度から気をつけろよな。」
「うん・・・」
頭に手を乗せられただけなのになんだか温かく感じる。心なしか頬も少し紅潮してるではないか。
「カ~~オ~~ル~~様?」
「うわぁ!」
ドアから半身だけ覗かせる武蔵がいた。かなり不気味だ。
「なにしてるのですか?朝からイチャイチャしてるんですか?セニアと?」
「いや!違うから!」
「そもそも私という女が居りながら他の女を抱こうとは・・・」
「話を聞いてくれ!」
「うぅ・・・早く朝飯を食いたい」
今日もこの基地はいつも変わりないほど賑やかだった。
/※/
「平和だな~。」
「そうで御座るな」
武蔵からの尋問から抜け出し、今は基地内を半蔵と一緒に散歩中。今日はなんの仕事もないため、兵士は訓練などに明け暮れてる。
「どうぞで御座る」
「これは?」
「宇治茶で御座る。拙者が真心込めて淹れたで御座るよ」
「そうか、ありがとな」
うん。うまい。
このお茶独特の苦味が引き締まって風味を漂わせる。なかなかいいお茶だな。
「美味しいよ」
「ほんとで御座るか!」
「もちろんだ。」
半蔵は意外と家事が出来る。料理を除けばの話だがな。
「あとカオル殿」
「ん?」
「先日の防衛戦前日の夜、武蔵殿とナニをなさっておられたのですか」
「・・・」
なぜだろう。反論しようにも何と言えばいいのかわからない。まさかバレたのか?いや、そんなはずはない。あの時は偶々テントの周りを人払いさせておいたからな。
・・・まてよ?
「な、なあ。お前ってそれ、見てたのか?」
「応。お互いベッド上で裸で揉み合ってたのが気になったが拙者はそのような行為は知らぬで御座るな。もしご存知ならば教えていただきたいで御座る。」
「・・・」
これって教えたほうがいいのかな?。好奇心旺盛なのはいいけれど世の中には知らないほうがいいのもあると教えたほうがいいのかな?
とある夫婦が夜、ベッドで男女の営みをしてる途中に子供が「なにしてるの?」と聞かれて答えられないのと同じだよ。
とにかくここは、
「お、お前が知るには少し早いな。」
「なぜで御座るか!拙者が未熟者と言いたいで御座るか!」
ダメだ。教えてたまるもんか。ここで教えたら幼女に性行を教えた変態のようだ。
「そういうのは武蔵に聞くといいよ。あいつそういうのは詳しいから」
「なるほど!武蔵殿で御座るか!では早速!」
風が過ぎ去ったかのように半蔵の姿が消えた。さすがは忍者だ。もっとも、食生活をちゃんとしてればな。
/※/
「すっかり夜だな」
あれから数時間。特になんもないまま時間が流れて日が沈んだ。今日も平和だったな
「ん?、あれは?」
俺の部屋の前に誰かがいる。よく見ればそいつは、
「なにしてんだ?半蔵。」
半蔵だった。いつものように忍装束を纏っている。昼間も同じ服装だったな。
「カオル殿・・・。貴殿の申した通り、武蔵殿に聞いてきたで御座る。」
「え?あれマジで聞いたの?」
「応。そしたら武蔵殿は『半蔵もヤってみればいいわ。すぐに快楽へと堕ちちゃうから。ただしこんなことは1度だけよ。』と申していたで御座った。」
「なにしてんだーー!!!」
武蔵め。なに面白がってんだ。セニアとイチャイチャするなと言っておいて半蔵に教えるとは矛盾してるだろ!
「それでこうしてカオル殿が戻ってくるのを待ってたで御座る。カオル殿、どうか拙者とSexして欲しいで御座る」
「ぶぅーーー!!」
おもわず口吹いてしまった。
しかもその男女の営みの総称たる単語さえも知ってしまったか。てんねんは末恐ろしい娘だ。
「ダメだダメだ!また今度だ!」
「ほんとで御座るな!今度で御座るな!」
「ああ!わかったらさっさと寝させてくれ!」
「御意!」
なんとか退却させて寝ることには成功した。しかし後日から大変だった。
どこにいても『sexして欲しいで御座る!』とか『今日はsexしないで御座るか?』とか周りに誰がいてもそんな危ない発言してくるようになった。
その際、兵士達から『なにがあったのか?』と質問攻めされて大変だった。
早く手を打たなければ・・・




