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そうだ。避暑に行こう

「なに!またしてもても失敗だと!」


大手を振っての進行はまたしても無駄なものとなった。朝方、出掛けたばかりの軍勢が公国に大した打撃も与えられずノコノコと帰ってきたのだ。自国の足元にも及ばない公国を踏みにじることができると思っていたがその反対。これでは我々が公国の土台とされる恐れが生じた。

そしてここは帝国の城の一室。そこにはこの国の高官が集められていた。


「公国め!どこまで忌々しい奴等だ!」


歯軋りしながら机に拳で殴る。

彼はこの国の国王でありながら国教であるイーゲル教の教祖、インケスタシュ・バグラム。彼はかなりの野心家でこの世界を掌握し、神として君臨することが野望だ。しかしこれでは夢は叶わず、ただ夢物語で終わってしまう。


「教祖様、どうなさいますか?」


隣の席の高官が話しかけてくる。落ち着いたバグラムはふぅと息を整え、結論を述べる。


「・・・ヤタガラスを呼べ。奴等に任せる」


高官らが騒ぎ出す。ざわざわと騒ぎ、賛同するものと反対する者の二手に別れる。

すると、一人の高官が抗議してくる。


「奴等に任せるですと!わたしは反対です!あんな外道集団など必要ありません!あんな奴等などこの国の恥です!」


「私に歯向かうのか?」


「あなたは侵略しかしない。この国はそんな軍事国家ではないのですよ!それに・・・」


ブシュ


生々しい音をたてると思えば彼の背中には両刃剣が刺さっている。その両刃剣を持つのは黒いローブの集団。男か女か若年か熟年かさえもわからない者達。そのリーダー格の男が刺さっている剣を抉り、引き裂く


「な・・・んだ・・こ・・れ・・は・・・?」


蚊の鳴くような弱々しい呻き声をあげ、倒れる。


「ふん。すなおに私の言うとおりにしておれば死なずにすんだのにな。」


「はは、それで旦那。仕事ってのはなんだ?」


「公国の密通している貴族からの情報によれば女王が避暑に出掛ける。・・・殺せ。」


「仰せのままに。ですが向かうのは二人にします。」


「大丈夫か?」


「片方はまだ日は浅いですが経験を積ませるためですよ。万が一のために下っ腹も用意します。なに、簡単な任務ですよ。おい」


男に呼ばれた後ろのローブの二人。片方は顔をローブで隠してるもののそのローブの下は苦い顔をしていた。



/※/



「暑いなぁ~。」


「たしかにな。私も少し汗をかいてしまった。」


今日は女王が避暑に出掛ける。俺らはその護衛と普段の功績を称え、一緒に休む。あまり目立たぬように護衛は少なくしてる。そのため、護衛は精鋭の兵士を連れてきた。


「やっぱりHMMMVで来れば良かった。屋根がないからもろに日を浴びるな。」


今回はHMMMVではなく、M151に乗ってきた。ジープの一種だが屋根を外してしまってる。屋根がないのは結構キツイ。


「しかたありません。ここ数日は気温が上昇し、基地でもエアコン取り合いで大変ですしね。」


あまりに暑いので熱中症対策にHMMMVや兵舎にエアコンを取りつけたら兵士達が居座るようになってしまった。エアコンを求めて俺の部屋まで来やがった。下着姿で出歩くなっつーの。


「武蔵はよく平気だな。」


「私は暑さにめっぽう強いので。普段から道場で鍛練してるせいかと。」


「ああ、あそこ熱気がたまりやすいしな」


兵舎の隣に建てた道場では武蔵を中心とした剣術を指南している。しかし、日当たり最良、風通し最悪の道場なので熱気がたまりやすく指南どころではない。エアコン設置案も出たがとてつもなく広いので何台つければいいかわからない。それに電気がかかる。電気は自然発電だからな。


「私は暑さに弱い。毎年、夏バテは当たり前になってしまった。」


そうか、この世界にはエアコンどころが扇風機さえもないな。それに熱中症対策などあまり知られていない。


「なら、今度基地に来いよ。冷たい飲み物やかき氷でもだしてやるさ」


「かき氷?」


「氷を砕き、そこへ甘い果汁やシロップをかけて食べるデザートだ。美味しいぞ」


「それは1度食べてみたいな。」


ミンミンとセミの声が森林の奥深くまでこだまする。その茂みに覆われた森のなかを突き進み、大きな宮殿にたどり着く。


「ここが陛下の避暑地だ。ここで数日は過ごすぞ」


「これはまた、すごい豪勢な建物だな。」


これがほんとに個人の避暑地とは思えない。どうみても金持ちの宮殿だな。


門を潜れば辺りに噴水があり、メイドさんがお出迎えしてくれる。


「今日はここでのんびりと過ごしてくれ。いつも世話になっているからな」



/※/



「ふぁ~。もう11時か。」


武器の開発や基地全体をまとめた書類を整理している。この宮殿に着いたときから仕事を始めたが予定より遅くなり11時近くまでかかった。


セニアに用意させてもらった部屋の布団に横になる。天井を見ながらふとあることを考える。


今日(・・)もいるのか?、と。


「おい、半蔵いるか」


「なんで御座るか、カオル殿?」


天井から一人の忍装束に身を包み、黒髪の艶のあるポニーテールの少女が現れる。顔は口あてで隠しているが充分綺麗なことは証明できる。


「武蔵から煎餅をもらったんだがいるか?」


「拙者、そなたを見守るのが務め。申し訳ないがいらぬで御座るよ。」


この少女は服部 半蔵。半蔵っていったら、徳川 家康についていた忍者で有名だ。その忍者も女。かなりの天然で巨乳が目立つ。


「そっか、美味しいのにな~。」


グゥ~。


二人の声ではない別の音がする。どうやら腹の音だ。半蔵を見れば恥ずかしそうに赤くなり俯いてる。


これが天然部分だ。俺がいつ襲われてもいいように警護してくれるのはありがたいが、食事を時たまに忘れがちでよく腹を空かしている。だからこうして餌付けをしておかないと倒れるかもしれん。


「い、いただくで御座る・・・」


「全く。痩せ我慢しても俺が困るだけだ。しっかり栄養をとれ。ケリーと対照的だな。なんでそこまで隠れたがる。」


「せ、拙者は忍者。忍者は影に生きる者。それは業であり、運命で御座る。」


「運命か・・・。ならたまにはこうして対話ぐらいしようぜ。お前の可愛い顔も1度拝んでみたいしな」。


「!!・・・カオル殿は卑怯で御座るな。」


「へ?卑怯?」


「では改めて任務に戻るで御座る。御免!」


パッと消えたかのようにいなくなる。おそらく天井裏でしっかりと守ってくれているかもしれない。


「カオル様?取り込み中ですか?」


「いや、もう終わった」


半蔵と入れ替わりに武蔵が入ってくる。なにか用だろうか?


「なんか用か?」


「いえ、カオル様がまた女性をたぶらかしていると直感が・・!」


「なに言ってるんだ武蔵は。俺が・・ムグッ!」


突然武蔵は手を俺の口を防ぐ。その目は緊迫した目だ。

耳を澄まして集中しているようだ。


「・・・半蔵。」


「はっ!」


再び半蔵が現れる。


「分かりますね?すぐに準備を」


「承知!」


「プハァ・・・いきなりどうしたんだ?」


「口を塞いだのはお許しを。なぜならここに敵が。」


「!。・・・侵入したと?」


「はい。強い殺気が複数。その内の2つが最も強い。こちらに向かってきてるかと」


「なら、全兵士を起こせ。セニアにもな。」


「了解!」



/※/



「ここが女王の邸か。かなりでかいな。」


「へへへ。緊張してるのか?」


「ち、違う!けっして・・・」


「わかったわかった。じゃあさっさと行くか。おい、下っ腹共、雑魚は任せるぞ」


一人の男の命令に後ろのローブの者達が頷いた。



/※/



「カオル!」


「セニアか。悪いなこんな時間に起こして」


「なにをいう。陛下の一大事かもしれんのだぞ。おめおめと寝ていられるか」


セニアの部下の騎士と俺の部隊を呼び寄せる。


「いいか、騎士はあの女王の部屋の前で待機だ。セニアもそこへ。武蔵は何人かで敵の捜索を。半蔵は俺と来い。」


「「「はい!」」」


「わかった」


「よしいくぞ!」


作戦を承ったら皆散り散りに去る。俺は邸内の見廻りだ。蝋燭しか灯りはないので視界がきかない。


「カオル殿、こちらで御座る。」


だが半蔵だけは夜目がきくようだ。どうやらこの戦闘を仕切るのは半蔵だな。








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