死後
「ん?・・・ここは?」
目が覚めると辺りに何もないただ真っ白な空間が広がる。
そして俺の顔を覗く女性。
「あっ!やっと起きましたか」
「あの・・・」
「まあまあ。そこの菓子でも食べなさいな。」
女の指差す先、そこにはちゃぶ台があり、卓上にはお茶とせんべいが。
「えっと・・・。じゃあ1枚だけ・・。」
「遠慮せず、バリッ!・・バリッバリッ。どんどん、バリッバリッ!。食べなさい。」
食べながら話さないでくれ。せんべいのカスがけっこう飛ぶから。
「ゴクゴク・・・プハー。やっぱりお茶はいいねぇ。」
年寄りじみた感想だな。
「つーかあんた誰?」
「おっと、これは失敬。・・・こほん!わたしはこの世界の神であーる!。えへん!」
「・・・へぇ。そーすか」
「あっ!絶対信じてないよね!でもホントなんだから!ホントに神様なんだからーー!」
腕をブンブン振り回し抗議してくる。幼女が手を降る姿はなんか和むな。
「わかったわかった。で、その神様が俺になんの用。」
「ぐすん・・・。あなたをここに呼んだのはわたしです。」
「それでなんのために?」
「ねえねえ。異世界に興味はない?」
「異世界?」
まあ・・・興味あるけど。
「その顔だとあるようね。はいペケと・・・。」
どこから取り出した紙に羽ペンで何やら書いていく。
「え~と、履歴書によれば・・・。」
「履歴書!?そんなのかいた覚えないけど!」
「この履歴書を書くのは閻魔のじいさんなのです。たくっ、あのじいさんは悪筆だから汚くて字が読めないんだよね~」
閻魔に対して愚痴る女神。
愚痴が終わると今度は履歴書に目を通す。
「履歴書によれば・・・。名前は大場 郁。職業はフリーターで二十歳。相違ない?」
「ああフリーターは余計だがな。」
「両親は事故死。それから元軍人で一人暮らしの祖父に預けられ一緒に暮らす。」
「そうだ。」
「幼い頃より、祖父の戦時中の自慢話を聞かされ、すっかりミリオタになってクラスメイトにひかれる。」
「人の過去まるわかりだな。」
「それが規則ですからね。え~と、最終的に本屋へ軍事関係の書籍を買いに行く途中で飲酒運転の車から子供を守り、轢かれて死亡。」
「そもそもこの履歴書、意味あるの?」
「ふむふむ、カッコいいとこあるじゃんか~!」
「う、うるさい!」
「赤くなっちゃって~!。よっ、イケメン~!。抱いて~!。ちょ~クー・・・ゴメン!ごめんなさい!謝るからその拳をおろして!すいませんすいませんすいま・・イヤァァァァァァァ!!」
「反省したか?」
「ハイ。ニドトハムカイマセン。」
「よし」
「よし、じゃないわよ!。乙女を鉄拳制裁するなんて男失格よ!」
「人の死後を勝手に弄くるのは神様失格なのでは?」
「・・・・・いや~。いい天気ですな~。」
ゴッ
女神の頭頂部に拳骨を落とすカオル。
文句をいう癖に自分のことは棚にあげやがって。しかも「いい天気ですな~」ってこんな真っ白な空間で天気がわかるのか?。雲も太陽さえもないのに。
「ぐぬぬ・・・。恨めしい。」
メソメソと半分涙目になって頭を抑える女神。見た目が幼女なので一つ一つの動作が可愛らしい。
「それで俺をどうしたいんだ?」
「おっと忘れるところでした。ではでは、早速逝ってもらいましょう。」
「おい、字が違うぞ。」
「こまけぇことぁいいんですよ!どっち道死んでるんですから」
「どつきまわしたろうか。」
「まあまあ。代わりといっちゃなんですが。」
「またなんかあるのか?」
「くっくっく。お主に極上ものを与えようではないか。」
「なにに酔いしれんだ。勿体ぶらずに教えろ。」
「わかりましたよ。はい。」
「?。なにもないぞ」
「渡すんじゃありません。あなたの体のなかに宿したのです。」
「宿した?」
「ふっふっふ。聞いて驚け。それは・・・特別な魔法、いや能力だ。」
どこかの悪代官みたいな台詞だな。
「特別な能力?。どんなのだそれは?」
「創造能力。創造能力とは読んで字の如く、なにもかも創造し、物質を作り出すことのできる能力です。あなたの好きな銃を初め、レトルトカレーから好みのエロ本まで、それはそれは便利な能力ですよ。」
「エロ本なんて誰が造り出すか」
「まあ、持って損はないですから。」
「・・・そうだな。有り難く貰っとくよ」
「では頑張ってくださいね~。」
「なんだ、もう行くのか?」
「時間がないんですよ。もうすぐ天界の特撮ヒーロー番組の『天界戦隊ゴッド5』が始まるんですから。」
「・・・なんだそれは?」
「おっ!もしかして気になりますか?。ここにも同士が!」
「同士じゃねーよ。異世界はどうなるんだ?」
「あっ!そうでしたね。それでは・・・。」
パカッ
突然床がなくなる。
床下に穴が空いたようだ。
「えっ・・・?」
「さいなら~。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・!!」
カオルは闇に溶け見えなくなった。
「ふぅ~。これで一仕事終わりましたね。さてと、わたしはゴッド5でも鑑賞しますか。」