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文鳥を買いに行こう!

 土曜日。僕は朝から釣具屋にアカムシの補充に出かけ、ごきげん取りの意味も込めてダル子を満腹にしてやってから、この辺りでは一番大きいペットショップへと車を走らせた。ここなら鳥類もたくさん扱っているはずだ。

 広い駐車場に車を止め、店内に入ると、休日の昼とあって、小さな子供連れの家族がごった返していた。その日特に子供たちが群がっていたのは、サークルで囲まれた仔ウサギのコーナーだった。店員さんに断れば抱っこさせてもらえるシステムらしいが、大勢の子供たちの間でもおもちゃの取り合いみたいになってしまって、そのシステムも崩壊している様子だった。

 僕に背中を向けてウサギを抱いていた少年の肩越しに、キャラメル色のたれ耳ウサギが助けを求めるかのように真ん丸な瞳で僕を見つめ、

「ウ、ウー、ウーッ」

と鳴いた。ウサギが鳴くという事実を、僕は初めて知った。乱暴に抱きかかえられる仔ウサギが憐れになって、連れて帰ってしまいたくなったが、今日の目的はウサギではない。忘れそうになっていたが、文鳥である。


 店員さんに聞いて2階の鳥類コーナーに入る。すると、今までに嗅いだことのない不思議な臭いを感じた。餌の臭いなのか、フンの臭いなのか……。そうか、鳥というものはこんな臭いがするのか。鳥たちのケージの間を歩くと、度々、大きな声で鳴かれた。一番大きいケージにいたくちばしの黒い鳥は、小馬鹿にしたように首を傾げてこちらを見ていたかと思うと、

「イラッシャイマセ!アリガトウゴザイマシタ!」

と叫びだした。ヨウムというやつだ。毎日聞いている言葉は覚えてしまうんだろう。

 少し奥へと足を進めると、ケージ内の止まり木とブランコの間をぴょんぴょん移動する元気な文鳥たちに出会えた。ネットで見た色とは違うものもいる。小さな頭を左右に振りながら、歩く様子は想像していた以上に可愛らしい。

「チッ、ジッ……チ、チッ」

と、鳴く声は聞こえるが、他の鳥よりは全くうるさい声ではないし、控えめで愛くるしいさえずりだ。僕は早速、店員さんに呼び掛け、文鳥の事を聞いてみた。やはり、文鳥は臭いはきつくはないし、初心者には飼いやすいとのことだった。メモしてきた飼育に必要なものを先に一通り買い揃えると、次は重要な生体選びだ。桜文鳥と白文鳥が多いが、お目当てのシルバー文鳥もいる。そこで僕はふと、シルバー文鳥より少しだけ色が薄い文鳥が1羽だけいるのを見つけた。くちばしの色のピンクも、わずかに薄い。

「これ1羽だけ、薄い色のいますけど、シルバー文鳥とは違うんですか?」

先程とは別の店員さんが振り返った。

「あー。なんだっけか? シルバー……イノ文鳥? 大丈夫ですよ、育て方とか同じですから」

飼育方法まで違うわけはないとは思ったが、口には出さずに続けて聞いた。

「メスですかねぇ?」

「んー、多分メスですね。この子にします?」

1羽だけそこにいる、というプレミア感に弱い僕は、お願いします、と言って、シルバーイノ文鳥とやらを飼うことに決めた。店員さんに乱暴に鷲掴みにされ、小箱に入れられる時には、確かに僕の目見て、

「ギョ、ギョギョ……」

と低く鳴いた。助けを求められたのだろうか? 

 そうだ! 僕が、いい飼い主になってやらなければ! くちばしが桃色だから名前は『モモ』にしよう。


 帰り道はモモがびっくりしないよう、焦る気持ちを抑え安全運転を心掛けた。



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