ダーミン初機乗!
「行くとは言ったが、先ずは説明書きだな。・・・・何々?初めに機体の足元の鍵穴に鍵を差し込みます?・・ほい!差した。・・・で、その状態で少しずつ魔力を流し込み、機体の心臓である魔核にエネルギーである魔力を供給します。・・・こうか?」
キュイィーン・・!!
お、何かモーターっぽい魔力反応がしてるぞ?
「そして、機体の頭部の一か所から光が出てきますので、その中に入ります。・・・お、この光か!」
?どうも・・・!
「おお・・何か知らんがこれは魔力の認識反応か?少し科学も入ってそうだな。・・・お、浮いた!」
おお・・・何も魔法を使ってないのに浮いてるぜ~。
そんで持って機体の中に入って来たよ。
中は凄い事になってるよ。
一言でいえば・・・これは科学と魔道の融合だな・・・。
5メートル四方の空間に立って、そのまんまガン○ム・ファイ○ーみたいなのを手足に付けて動きをトレースする機械があって。前後左右が一度に見渡せるような画面が付いてる。
それから自分の得意な戦闘方法を入力する事で。魔法士みたいな奴なら詠唱を思い浮かべただけで発動してしまうらしい。
頭にヘルメットを付けて、脊髄反射で行動をサポートしてくれることも出来るようだ。
これなら、運動が苦手な俺でも出来そうだ。
そんで、魔道士なら予め登録してある魔道具を手に持つ事で、武器や盾が巨大化するらしい。
そして、俺の場合は・・・
「・・・ふっふっふ・・。これは良い。俺にピッタリの機構だ。・・・?なんだこれ、光ってるぞ?」
ポチッとな?
ポチッ!
『あ、あー。聞こえるかな?イツキ君。』
「ああ、感度良好だ。」
『それは良かった。それでは単刀直入に聞こう。』
?なんだ?
『君は何者だ?あ、今は機体間通信で話しかけているから、外には音声が漏れないから他の人に聞かれる心配はないから安心してくれ?』
ほ~、それはまたハイテクな事で・・
「それは良いけど、俺は一応ソニアには言ったぞ?それ以外の答えは信じられるかどうかはアンタら次第だ。」
『ああ、母さんから少しは聞いてる。・・・が、正直信じられない。記憶喪失の者が製作炉を作れる等という話も聞いたことが無いし、他大陸の者の可能性もある者が、父さんの魔道具を無効に出来る実力があるなんて、今まで聞いたことが無い。』
そんな事言われてもなー?
実際の事を言ったら、更に変に思われそうだし。
「それじゃ~、どうやったら納得すんの?それとも・・」
『それとも?』
「事故に見せかけて、不穏分子を殺しとく?それが一番国にとったら安全な方法だよ?」
『・・・いや、それも考えたが、やめとこう。もうソニアの関心が君に向いてるし、ターニャの宝具を改造出来るなんて言う者は他に居ないだろう。それに・・・』
「それに?」
『もし、君が家の藩で無くても、この国に留まってくれればこの大陸は今よりも、もっと発展しそうだ。ソニアと遺跡なんかの探索にも行って貰えたら、ソニアの成長にも繋がるだろうし、パートナーは何も男女一人ずつだと言う決まりはないしね?』
「そのパートナーってのもよく解らんのだが?」
俺の質問に、ポン!という手を叩く音が聞こえた。
『そう言えば、まだ説明してなかったね。今から少しだけしようか。・・・このダーミンには、対になる女性用の物もあるという事は聞いてるね?』
「ああ、ていうか、そっちの方から話をしてきたよ。ソニアは。」
『まあ、ソニアは女性だから、それは仕方ないよ。・・・でだ、このダーミンと女性用のフリンジは元は雌雄一体だったんだ。それが長い・・・と言ってもこれを開発した人が居なくなってから100年だけどね、その間にそれぞれの機体を整備する人のレベルが下がり続け、片方ずつしか整備できなくなってしまったんだ。・・・ここまで言えば、分かるかい?』
「もしかして、それぞれの機体に合体機能が備わってる?」
『大正解だ!流石だね。・・・しかし、今のこの操作性で分かるように、機体と操作者は密接過ぎる関係がある。・・解かり易く言うと、殆ど一体になる感じになるんだ。機体同士が合体すると、操作者同士もね?』
・・!って事は、もしかして。
「なあ、もしかして、パートナー同士は恋人同士に近いって事か?・・しかも、男女一人ずつと言う決まりが無いって言った気がするが?」
『ああ、察しが良くて助かる。俺達の親は一人ずつだが、この藩並びにこの国は一夫多妻、一妻多夫を採用してる。勿論、この事から分かるように、異能者の方でも同じような感じだ。・・しかも。』
「しかも?」
『この機体を開発した者が書き残した書物に由れば、魔道と異能の融合も可能らしいのだ。だから、優秀な者ほど、大勢の操作者を囲っている。しかも、整備士が不足している現在、圧倒的に製作師が人気なのだ。・・・由って、出来ればソニアのパートナーを君に務めて貰いたい。勿論、君が良ければだが。』
ほぅ~、これは俺の機体の能力が便利に見えてくる展開だな。
条件が飲まれれば考えてみよう。
「幾つか条件があるんだが、良いか?」
『なんだい?妹達が悲しまないのなら、俺は別にいいよ?』
「悲しむかどうかは分からんが、条件の一つは俺の事を聞いても他にバラさないことが一つ。先ほど見た俺の機体の能力で、<速攻魔道具製作>って言うのが有ったんだ。これを使えば俺の持つ材料の数が多ければ多い程、その場で人数分の武器防具の換装が可能だ。だから、沢山の相棒を持てるって事になる。・・・もう解かるか?」
『・・・・正に君にとっては最高の機体に成るね。・・しかも、基本はどの機体もその操作者によって能力が違うから、その能力は恐らく君だけの物だ。・・・とにかく、条件は分かった。続きは今度の長期休暇で皆で我が家に行った時にしよう。・・・それでは、模擬戦だ。そうそう、父さんからは遠慮なく中級操作者の実力を見せつけて上げなさいと言われてるから、怪我したらごめんよ?・・・では、いくよ!』
・・っと、イキナリかよ。こっちは碌に取説見てないってのに・・
よく見たらもう手に巨大化した魔道剣持ってるし。・・あの剣の威力はどうなってんだ?
翼竜の炎剣 中2等級
天空の塔のワイバーンの骨を加工した剣
斬りつけた物を炎に包む効果がある。
・・・スゲエェ~、ブレインワールドってこんな材料も手に入るのか。
ホントに先が楽しみに成ってくるな・・。
おっと、イカンイカン。今は模擬戦の最中だった。
「さあ、よそ見をしてたら稽古に成らないよ?」
ズバッ!
ガンッ!
くそっ!イキナリか!容赦なく良質の剣で攻撃しやがって。
こうなったら、特殊魔法の単発壁の重ね掛けで押し潰したる。
「(空壁!5重層)」
俺の特殊魔法発動と共に、カイルの機体の周りに空気圧を最大限に高めた圧迫壁が聳え立ち、一瞬にしてカイルの機体を足止めした。
「・・?何をしたんだい?恐らくとしか分からないが、空気の壁を建てたって所だろうが。・・・今の魔力を抑えてある君の魔力ではMAKの性能を使っても、俺の足を止めるのは難しいと?俺のダーミンの固有の特性は魔道具の性質変換。この剣の魔道具は今は斬りつけた物を燃やすだけだが、俺のダーミンに掛かれば・・・こうなる!」
言ってから、普通に空気の壁を凍らせやがった・・
そして、自然と氷が水に変わって行く・・・
っくぅ・・・!こんなとこで魔道具の性能が仇となってるのか。
・・・ってか、何も分からん初心者にエゲツネェぞ?
けど、俺の手札をこんな事で見せてたら、後が大変だし、色々実験してから素直に負けるのも手だな。
よし!そうと決まれば、俺の機体の性能を限界まで見極めようじゃないか!
「(補助魔道具一割放出。種別空気圧縮魔法拳銃2丁、脳内操作型浮遊コア5基、魔力使用後収納。)」
ヴーン!! ジャキーン!!
よし、これで勝てなかったら負けでいいさ!
「コア、敵機の動きに合わせて自動追尾!」
そんでもって・・・
「これで、どうだ!!」
その掛け声で、俺は二丁の魔導拳銃を発動させた。
「いけーー!!」
ダダダダ!!!
しかし・・・。
「甘いな!確かにその量の攻撃回数は驚愕に値するが・・・」
ササッ!
ドンドン!!
「君の脳の処理速度が伴ってないから、先読みは可能に成るから・・・」
・・・おいおい、マジですか?
あれだけの浮遊コアの攻撃と俺の魔弾の弾丸の嵐を普通に避けてるよ・・・
この人の反射神経ってどんだけ?!
そして、とうとう俺の懐に入ってきた・・
「こんな風に、俺くらいの操作者に成れば、簡単に避けられて、懐に入ってジ・エンドだ。」
・・・っていうか、扱い方を殆ど知れない俺にそんなに本気で来て、恥ずかしくないのか?
少しは初心者に花持たせろよ・・・
そんなことを考えてると、不意に先ほどまで魔力の吸収で唸っていたMAKが急に静かに成った。
多分、説明書にある通り、外部接続コアを切り離したのだろう。
まあ、色々とわかったから、ダーミンはこれでいいか。
後は製作過程の現場で直接聞かないと無理だろう。
ソニアのセリフからしたら、恐らくこれを作っているのは製造師の部類に入る筈だ。
どんな奴が後を継いでるのか分からんが、設計図くらいは有るだろうから、それを見せて貰えれば、想像は付くだろう。
・・くっくっく。・・・またしても知りたい物が増えた。
やはり、自動で成長する世界は面白い。
長年研究して作った甲斐があったと言うもんだ。
「・・ふぅ~終わったか・・」
俺はそう言いながら、皆の元へ戻るが・・・
途中近寄ってきたカイルが耳元で・・・・
「イツキ君?先ほど通信で言った事で、嘘が所々混じってある。冷静に成れば分かる事だから、ソニアにでも確認してくれ?その際に怒られるかも知れんから、その覚悟をしてからね?」
・・・なんて言ってきやがった・・・
どれが嘘かなんて、俺が解かる訳ないじゃんか?
くそぅ~、また殴られるしかないのか・・・
「イツキ・・アンタ、イキナリのダーミン試乗であそこまで扱えるってちょっと狂しいわよ?それに、固有能力まで使えちゃってるし・・・。私らが学生の間で習う内容、今アンタが実践した奴までなんだけど?アンタってホントにこれが初めて?他に何処かでって言っても、まだこの機体を置いてる藩も殆どないから、分かんないわね。・・・もしかして!」
?なんか思い当たる可能性があるのか?
「他大陸でこの機体と同じ機構の物を見たり乗ったりしたとか?形違いで、機構だけ同じって言うなら、可能性もない事はないわ!」
そうソニアがいうのだが、カイルが否定した。
「それは無いよ、ソニア。これが他大陸にあれば、その国は間違いなく他の国より一歩先を行く技術力と言えるはずだ。機械だけ、魔道だけ、科学だけなら分かる。実際、我が藩の間諜部隊が他大陸にも足を運んだことが有って、技術を見てるからね?我が藩より先を行く科学力を持った国もそれはあったし、魔法や魔道だけなら上かも知れないという報告は来ているが、全てを兼ね備えた物を持つ国は報告に上がっていない。なら、無いと考える方が自然だ。・・・だから。」
「だから?」
「イツキ君の理解力が我々より遥に高いという事だ。・・・だから、ソニア?」
「?何よ?」
「イツキ君をパートナーにすれば如何だい?どうせ、学生の間の試合はブレインワールドでのシミュレーションだけなんだから、恥ずかしがる必要もないだろう?それに、本来のフリンジやダーミンの試験演習でさえ、ブレインワールドの演習が殆どなんだから。誰が成っても同じだよ?」
「・・・まあ、後は整備を出来るかどうかね?それが高いレベルなら、私の機体の整備と併せてやって貰えたら嬉しいし、聖闘衣の事も任せられるから、ちょっとお得かも?」
・・・そういや、MAK搭載のはクロスとかいうのも有ったんだっけ?
すっかり忘れてたわ。
「そのクロスってどんなのだ?ソニアの話では遺跡でも使えるらしいから、少し小さめの奴っぽいが?」
「ああ、クロスは言うなれば、魔力が少ない人用の戦闘衣だね。着れば、周りの魔力を自動で吸収してくれる衣装だよ。ここには無いけど、学園の資材館に予備はあるし、クロス安置所にクラス別に保管してあるから、明日にでも案内して上げるよ。・・・ソニアが。」
「・・・まあ、良いけどね?・・それより、連絡した人が来たみたいよ?」
「おお、ホントだ。おおーい!こっちだー!態々スマン!」
ダリアさんが向いた方を見ると・・・。
これまた可愛い人が居たもんだ。
髪も目(ゴーグルしてるけど綺麗な色だから分かった)も銀色で、背は155位のホントにソニアより年上なのか疑問に思う位の童顔の可愛い子だ。
・・・しかし、実力はそれなりにあるようで、今こちらに来る時も、スケボーの様な板に長い筒を立てたハンドルの様な物を握っており、どうやらそれに魔力を流して板を浮かせているようだ。
更に、耳元にイヤホンが添えられているから、あれも何かしらの魔道具なのだろう。
そして、ダリアさんの声に反応した様にみえるのだが、何故か勢いが止まらない処か、方向からしてソニアの所へ突っ込む様子なのだが・・・。
「おーい!ソラ君?止まって止まって!ぶつか・・・」
「あれっ!ワザとぶつかる気じゃない?」
・・・ダリアさんが注意してる傍でソニアが言うが・・・
確かに、顔がにやけてる・・・。
「・・くっ!イツキ!何とかしなさい!アンタの用件で呼んだんだから・・って、うわ!」
・・もう、真っ直ぐにソニアに目掛けて方向転換してるよ・・・。
あ、もう一回ターンした。
「ああ!もう!イツキ!どうにかして!」
そうは言ってもなぁ~
・・!そうだ、あの魔法発生機構を狙い撃ちしてみよう・・・けど、俺がやって当たるかな?
ソニアにやらすか・・?
「なあ、ソニア?拳銃型魔道具の使用経験ある?」
「あるけど?・・あ、また来た!」
なら、問題ないな。
・・・特殊空間を開いてっと、あった。
「ほい!ソニア。それに空圧の魔法が入ってるから。あの板についてる魔法発生機構を狙ってみて?当たればあの機構の特性上、魔法陣の噛み合い悪くなって、そのまま下に落ちる筈だから。」
「!OK!任せといて!」
ソニアがそんなことを言ってくる一方で。
「よく、視ただけで機構が分かるね?君の知ってる物に近いのかい?」
そう、カイルが聞いてくるので
「ああ、あれは結構メジャーな機構だから、使われやすいんだよ。使われやすいって事は、皆が良く知ってるって事だから、俺も知ってるわけ。」
「・・・へ~、俺はそんなに詳しくは知らなかったけどな~。やっぱり、何処か違う処の出身なのかもしれないね。イツキ君は」
そんな風にカイルと話をしていると、ターニャが・・
「そんな事、どうでも良いです。ほら、そろそろお姉さまが撃ちますよ?」
と言って来た。
そして、その言葉通り、ソニアが魔道拳銃を放つ
「いい加減、止まりな・・・さい!」
バシュッ! ドン! ガラララ・・・・
「ふう、どんなもんよ!」
何故かやり遂げたと言った顔に成っているソニアに、ソラと呼ばれていた人が
「今のは何をしたのですか?ソニアちゃん?リーナの妹だからって、あたしの魔道具を壊して良い事には成らないのですよ?直すか弁償をして貰うのですよ?結構この魔道具の機構を付けるのに整備士の方にお願いしたポイントは多かったのです。あたしの遺跡に一日籠るくらいのポイントが消えたのですよ?」
なんて言って来たもんだから。
「そんな大事な物なら、最初からぶつかるような運転してこないで下さるかしら?ソラ先輩?私たちの誰かが怪我すれば、その程度のポイントが吹き飛ぶくらいの慰謝料が発生したはずですよ?ねえ・・お父様?」
「ああ、もう少し時と場所を考えて運転してくれよ、ソラ君。君は優秀なんだから、簡単に止れるはずだろ?」
「ええ、だから寸前で止まる予定でしたのです。それを何処かの誰かさんが無理矢理止めてしまっただけなのですよ?困った者なのです。」
「・・・この人は・・・」
何か知らんが、凄い人の様だ。
この人が模擬戦の相手で大丈夫か?