57日目~ 火が灯り、燃え上がりました。
9/3 初投稿
9/4 三山様ご指摘箇所修正
【57日目】
実験を続けているが、それとは別に新しく訓練場横に掘っていた部屋が完成した。
作成理由を皆に説明したら、それだったら階段も付けたほうがいいだろうということになって、書斎のオレのすぐ側に通路と階段が作成されることになった。ついでにその部屋にちょっとした縦穴も。
内装もほぼ終わり。俺としては完成したと思うのに、ゲン爺は未完成だ、と言い張ってる。ホネ兄達は苦笑していた。何故だろう?
上の階層の最後の部屋も部屋も掘り終わった。
これで最初の予定していた拡張は終了した。
後はどうしようか――となり、さらに掘り進めようという結論になった。
まぁ奥に部屋を作っていったのは冒険者対策だから深すぎて困ることはないし、それでいいか。
話を実験に戻すと、念じ方を変えてもダメだった。あと試しに死体を動かそうともしたが、こちらもダメ。動かすことはまあ出来るのだけど、腕を上げるだけで相当時間がかかるし疲れる。
みんなに相談しても、今のところいいアイデアは出てこない。
まぁ色々とやってみよっと。
ちなみに今は夜。
いつものメンバーが出かけると思ったが、今日はゲン爺が洞窟に残っていた。完成しているはずの鍛冶場で何かしている。
クロはゲン爺と一緒にいる。何か最近クロはゲン爺に懐いている気がする。別に気にすることではないけどね。
ユウ姉は完成した厨房で料理を作っている。誰が食べるんだ? ――と思ったが、アオ姉やゲン爺は食べられたし、何故かホネ兄も食べていた。味も分かるらしい。
分からない――というか食べられないのはオレとユウ姉ということになる。
オレの分もそうだが、ユウ姉の分の体も作らないと――
流石にゴブリンに入るのは嫌みたいだし。
――まぁもっとも。本人は、ウマいウマいと言いながら食べている3人を見ているだけで満足そうにているんだけどね……
【58日目】
ついに――!
ついに鍛冶場に火が点った!
いよいよ剣とかの製造開始か! ――と、思ってました。
鍛冶道具一式――ハンマーや掴むための道具――金箸というらしい――やハンマーを打ち付けるための台――金床。本来はその名の通り金属製のモノを使うらしいが、ないので硬い岩を加工して代用するらしい――等々を並べ、火床に火を入れる。
――普通は鍛冶開始だと思うだろ! 期待するでしょ!?
オレの期待、トキメキを返せ!
しかしながらゲン爺は、いつの間にやら作っていた壺や小皿といったものをを火床に並べていた。
そして炎が燃え盛る火床をじっと眺めていた。
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ゲン爺はただ炎を眺めているだけなのに、物凄く声を掛けれない雰囲気を醸し出していた。
その空気に耐え切れなくなって黙ったまま場所を移した。
移動した先――厨房ではユウ姉が鍋をかき回していた。
そしてその奥には隣の部屋――作業場が見え、ホネ兄とアオ姉がなにやら作業していた。
料理の方は、香りはわかるのに食べられない――別に食欲は無いのだけど、それでもただ眺めているだけっていうのはちょっと精神的にキツイので、2人の作業を眺めるようにしよう。
――ユウ姉、よく料理なんて出来るよな……
本当に好きなのか、それとも強いのか。
多分、その両方。
それはともかく、2人の作業はと言うと。
2人共木を掘っている。ただ掘る場所には細かく印が入れられている。
何を作っているのか――
聞いてみたら、出来てからのお楽しみ――とかえされた。
――また、オレだけ除け者かぁ……
呟いてはいないけど、雰囲気は伝わったらしい。
慌てた様子で――主にアオ姉に引き止められ、作成中のモノは機織り機だと教えてくれた。
何でも、クーちゃんに出してもらって紡いだ糸が溜まったので、布を作ることにしたらしい。
で、そのためにゲン爺が図面を引いて、木材に印をつけてくれたのだとか。
――ホント、色々とやってるよ……あの爺様。
内装作って鍛冶場作成し、陶芸やって大工やって。
モノ作りが趣味だとも言ってたけど、趣味の幅広すぎ!
――ん?
そういえば、こうゆう木工に使う木材って年単位で乾燥させないと使えないって聞いたことがあるような……
そのあたりは――と聞いて見たら、ゲン爺がクロに木材を体で包んで水分だけを抜くように指示したとのこと。
できるのか、そんなこと?
できたらしいです。はい。
ついでにクロに新しいスキル、『水分吸収』が増えていた。
――ホント、知らないところで色々起こってるなあぁ~
【59日目】
実験の方は進展があった。
今まで人型――【ゴブリン】と【ゴブリン・ロード】ばかりを使っていたのを変えてみた。そうしたら蟲系や【ハウンド・ドッグ】は同じ結果になったが、【スライム】だけは結果が違った。
痛みを感じないらしく憑依しても死ぬことはなく、また疲れることなく思い通りに動かすこともできた。ただし、動きは鈍いし、四肢じゃないのはスゴく違和感がある。
でも、大きな一歩だ。
次は何を――と思っていたら、ゲン爺に呼ばれた。
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鍛冶場に入ったら、いきなり、ワシのキズは治せるか? との一言。
いきなりすぎて意味分かんねぇ。
――いや、意味は分かるよ。ただ、質問の意図がさっぱり。
まぁ確かにホネ兄のケガは直したけど。
アオ姉は時にケガらしいケガは……
だったらって――
――え?
いきなりだった。
ゲン爺が懐からよく切れそうなナイフを取り出したかと思うと――いきなり己の腕を切り裂いていた。
勢い良く流れ出る血!
――ちょ!?
え……あ、ちょ、何やってるんだよ、ジイさん!?
――誰か!?
いや、それよか治癒!?
慌ててMP――魔力を流し込む。
効果を発揮して逆再生を見ているかの如くキズは癒えていった。
――よかった……じゃ、ねぇ!
何考えているんだよ、ホント!?
ドウドウじゃない!
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どれだけ時間がたったか?
騒げは当然ながら人は集まる。
バラバラにやって来るそれぞれに事情を説明し――
その度に説教人員は増えていった。当然ながら。
その原因はというと、特に堪えた様子もなく、道具の確認をしている――って、コラ!
いい加減に理由ぐらい――っ!?
目の前に突然、ハンマーが突き付けられた。
ただそれだけなんだけど、ハンマーから今までなかった妙な気配を感じる。
それを感じたらしく、ホネ兄達も動きを止めた。
で――そのままハンマーを下ろすと、沈黙を保っていたゲン爺が話出した。
長くなるけど――
鍛冶場の火床の熱源はゲン爺が持っていた“ 火現符石 ”という魔導具らしい。ちなみにホネ兄とアオ姉がスゴく驚いていた。後で事情を聞いて見たら、魔導具自体がかなり高額なモノだから、らしい。
どのくらい――かはモノによるけど、ゲン爺の持ってたモノは街での一般男性の労働賃金1年分に匹敵する位――はするかもしれないとのこと。ゲン爺曰く。
正確な値段は、旅の魔道士からポーカーで巻き上げたから分からないとも。
――おいおい……どんだけ勝ったんだよ……
話をちょっと聞いただけだけど、ちょっとした財産になるものだよね、これ。
目を逸らされたので話を戻すとして――
今までもその炎で剣を鍛えたことは何度もあるそうだが、今回は今までと違って炎を勢いが強く、また炎自身にも多くの魔力を含んでいるらしい。
――それの何が悪いの?
魔力が多い炎は魔導具の作成にも使われるが、対処していない道具を通常よりも痛めるらしい。試しに火箸を一本入れてみたら、すぐにダメになったらしい。
ただしゲン爺自身は魔導具作成は行ったことないし、“ 火現符石 ”で魔力を多く含む炎が出てきたことも今までなかったらしい。これは場所的な要因なんだろうなぁ――
まぁ、そんな訳で道具がダメになるのだったら鍛冶作業はできない。
昨日色々考え、試行してみた結果、ホネ兄の『黒霧刃』の真似事が出来るようになったらしい。
――あ、本当だ。『魔包刃』って新しいスキルが増えてる。
さっき感じた妙な気配はこれか。
ただこのスキル、同時掛けはできないらしい。
ハンマーはなんとかなったが、火箸はどうするか――?
そして1つ方法を思いついたので、オレを呼び出し、実験の為自分の腕を切ったらしい。その結果、痛みはあるけど弱く、キズも癒せることが判明した――と。
そして――コレならいける! らしい。
何が――とは聞かないけどさぁ……
――どう考えても、いい予感がしない……
これはホネ兄達も一緒らしい。
ジト目でゲン爺を見てるし。
そんなオレ達の反応を一切気にすることなく、ゲン爺は、ダメになった剣――元ホネ兄の愛剣を手にしたかと思うと――
そのまま腕ごと炎の中に突っ込んだ!
――ナニやってるんだよ、ジジイ!?
嫌な予感、大・的・中!
全然嬉しくねぇ!
あまりのことに誰も反応出来なかった。
ゲン爺も自分でやらかした事とは言え、顔を顰めている。これで無表情だったら正気を――そもそも正気だったら炎に腕を突っ込まないか!
数秒後――
炎から手を抜くと、そのまま岩の上に赤く染まった剣を乗せハンマーで叩き始めた。
炎に突っ込んだ左腕の肉は酷く焼け焦げている。当然ながら。
――ちょ、いや、ああ、もう!
あまりのことにフリーズしてしまっていたが、傷を見て戻って来れた。
さっきと同様に魔力をゲン爺の傷口の注ぎ込み、傷を癒す。
その状況にホネ兄達もようやく再起動できたみたいだ。
言葉で止めようとしているが、ゲン爺が全身から発している狂気じみたオーラに気圧されている。
実際オレも、治癒を続けているがへっぴり腰になっているし――
ただ――ずっと治癒を続けている。つまりは魔力を消費し続けているということ。
当然ながら疲労は溜まっていくわけで――
――も、無理――
何度ゲン爺が炎に腕を突っ込んだかなんて数えていないけど――
取り敢えずそう呟くのと限界が訪れるのはほぼ同時だった。
【60日目】
目が覚めると、書斎だった。
時間は分からないけど、全員揃っていた。
――えっと、確かあの時……
ゲン爺!
昨日の狂気を帯びた姿ではなく、いつも通りの豪快なジイ様も姿がそこにあった。
腕にはこれでもかって位包帯が巻かれているけど。
取り敢えず、治癒、治癒、と。
何やらホネ兄とアオ姉で話しをしていたみただけど、痛みが引いたためかオレが目を覚ましたことに気がついたみたいだ。
ただ――目を覚ましたか――じゃねぇよ!
今回の件はゲン爺が原因だろうが!
もっと自分の体を大事にしてくれ、頼むから!
何が、ワシの鍛冶魂の赴くままにだ! マッドぶりも大概にしろ!
何でホネ兄とアオ姉も談笑していているんだよ!?
怒れよ!
――って、あれ?
何で2人共目を外らす? アオ姉ナニ苦笑しているの!?
――そういえば――ユウ姉は?
その質問をした瞬間。ゲン爺の体が一瞬、ビクッと震えた。
――え……と……どうゆうこと?
・
ちなみに後でアオ姉がこっそりと教えてくれたのだが――
オレが気絶した後のユウ姉は凄かったらしい。
火傷を負ったゲン爺の腕に薬草と包帯を巻き治療した後。
ニッコリと――それでいて目は一切笑っていないという器用な微笑みを浮かべ、全身から怒りのオーラを発して説教を始めたらしい。
ゲン爺は反射的に正座姿となり、アオ姉はその背後に荒ぶる鬼の姿が見えたらしい――
――ホントかよ?
けど――本当なんだろなぁ……
あんまり想像できないけど。
・
場所を鍛冶場に移して。
何故かホネ兄も一緒についてきていた。
理由を聞こうかとした思っていると、おもむろに――何の前触れもなくホネ兄が自分の腕を斬った! ――って、ゲン爺に続いてホネ兄も!?
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悲鳴を上げかけたのを、腕を斬った本人に止められて――
治癒して、はい。説明タイム突入――
【グレイ・スケルトン】の骨は武具の材料に使えるので、斬り分けた。
――って、説明終わり? それで!?
って、言ってるソバからまた斬らないで!
材料なら【土喰い】が――って、え? 関係無しに喰い散らかしてるから、鉱石取れてないの? いや、でも……
いや、治すけど、治すけどさぁ。この前手に入れた剣で――え? 魔力を帯びた原料は普通よりも強くなるの? まぁ確かにありがちな設定だけど。
そう言いながらも腕を斬り、治し、休憩してまた斬るの繰り返し。
――いや、その為に自分の腕を斬らなくても――って、強い剣はオトコのロマンって!? ホネ兄キャラ変わってない!?
いや、ロマンもいいけど、自分の体も大事にしろよ、あんたら!
ユウ姉に言いつけ――知ってるの!?
いきなり自分の腕を斬ったことより驚いた。女性陣も知ってるんだ……
――止めてくれよ……頼むから……
熱意を込めて説得した――って、あぁ。何となく分かった。
2人ともご愁傷様です。オタクの熱意を一身に受けたんだろうなぁ……
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疲れた。
治癒の繰り返し。
斬って、治して、休憩して、炎に腕突っ込んで、治して、休憩して――
勘弁してくれ。
最後には2人とも『高速自己再生』を習得していた。ついでにゲン爺は『火属性耐性』も――
結果、オレがいる必要はなくなった。
だから書斎に戻って――
――疲れたから、寝よ……
祝・お気に入り100件突破!
ありがとうございます。
作中でも色々と燃え上がっていますが――やはり初期設定や考えていた通りに行けたことも、キャラが勝手に動いたものとか色々とありますが。
矛盾が出そうで怖いですが、続けていきたいと思います。
次回には新しく作成した部屋とか剣とか出てくるかと。
では61日~でもよろしくお願いします。




