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プロローグ

読まなくても本文に一切の影響のないプロローグですが……


 昔~昔のお話。


 ある国のお城に偉い魔法使いが住んでおりました。


 その魔法使いは古今東西の魔法、そして知識に精通していました。


 魔法使いは知識を乞う者がいれば、懇切丁寧に教え――

 

 仕事を求める者がいれば、その者に適した職を与え――


 傷ついた者には、惜しみなく魔力を使ってその傷を癒し――


 お城の王様には忠誠を誓い、その命には力の限りを尽くし――時には嗜め――


 魔法使いのおかげで国はどんどんと発展していきました。


 人々が明るい笑顔を浮かべながら道を行き来するのを、何よりも嬉しそうに魔法使いはいつも見ていました。


 そんな魔法使いを誰もが尊敬し、敬愛していました。


 しかし、そんな人々の――そして何よりも王様の信頼を一身に受けている魔法使いを妬む者もいました。


 そんな妬む者の中に、お城の大臣がいました。


 大臣は、自分がどんなに素晴らしいことを行っても、王様が魔法使いに意見を求め――そして魔法使いが自分の発案を否定することが憎くて仕方がありませんでした。


 だから大臣は邪魔な魔法使いを排除することにしました。


 そして――


 ある日、国の末のお姫様が亡くなりました。


 突然のことに誰もが驚き、そして嘆き悲しみました。


 そんな中、大臣が言いました。お姫様は殺されたのだと。


 お姫様の部屋に置かれていた、中身の空いた瓶。それはいつも魔法使いが調合した薬を人々に渡す時に使っていた物でした。この瓶に毒が入れられていたのだと。


 誰も言葉を紡げませんでした。冷静になってみれば、可笑しな話でした。しかし、お姫様が亡くなったばかり。誰もが混乱していました。


 そして、誰かが言葉を発するよりも早くに大臣は魔法使いを捕まえ、牢屋に入れてしまいました。


 その後大臣は言いました。魔法使いがお姫様を殺したのだと。それは、魔法の実験のためだと。


 伝え聞いた誰もが信じられませんでした。


 しかし大臣は本を持ってきました。魔法使いの部屋から見つけてきたと言って。


 その本は、禁じられた魔法――不死の研究について書かれたものでした。


 王様はさらなる調査を命じられました。そしてその度に大臣から新たな証拠の品がもたらされました。


 また、お城の中――そして城下の街ではある噂が広まっていました。


 曰く――皆が敬愛していた魔法使いは、禁じられた魔法を得るために演じられていたものだと。王様の信頼を得るため、そして魔法の実験のために人々を利用していたのだと。そして禁じられた魔法を手にすることができたので、その実験にお姫様を殺したのだと。魔法使いは素晴らしくなんてない。邪悪な者なんだと――


 最初は信じていない人々も、何度も、何日も聞くうちにだんだんと噂を信じるようになっていきました。


 魔法使いは何の反論もしませんでした。


 いつしか人々は、魔法使いを処分するように求めるようになりました。


 王様は最後まで魔法使いの無実を信じていました。でも王様以外は魔法使いは邪悪な者と信じるようになっていました。


 誰もが魔法使いの極刑を望みました。しかし、王様はそれを止めました。


 納得しない皆に、今までの功績を考慮にいれて国外追放にすると命令されました。


 こうして魔法使いは国の外――他の国ではなく多くの魔物の住まう大樹海に叩き出されました。人々の呪詛と共に。


 叩き出された魔法使いは何も言葉を発することのないまま、大樹海の中へと消えて行きました。


 そしてその後、魔法使いを見たものは誰もいませんでした――




【~クルンライア王国王家に伝わる童話より抜粋~】

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