第17話The assassin(刺客)
「お、おい、うそ……だろ…」
少しずつ望美に向かって歩く、足の裏に望美の血がつく。望美を抱き上げる。
「嘘なら嘘って言ってくれ!」
望美に口が、耳が、無いのは分かっているのに、聞いてしまう。
俺の問いに答えるのは静寂のみだった。
静香先輩が俺を横目に寮から出て行った。追いかけるべきなのに、追いかけて理由を聞くべきなのに、でも俺は無くなっていく望美の体温を感じていたかった。望美を抱きしめる。俺の服に、俺の顔に望美の血がついていく。
「ごめん、望美。守れなかった、また守れなかった…」
聞こえてくるのは静寂のみ。
「望美…望美、望美望美!望美っ!…」
何度も何度も叫び、何度も何度も泣き、何度も何度も望美の名前を呼んだ。返ってくる答えは分かっているのに。
不安、
驚愕、
困惑、
責任、
恐怖、
後悔、
無念、
嫌悪、
軽蔑、
罪悪感、
怨み、
苦しみ、
悲しみ、
絶望。
色々な感情が俺の頭を行き来する。
最後に到達したのが
怒り。
だった。
「ぜってぇ…許さねぇ…」
静かなる怒り。
俺はゆっくりと望美を座らせ、俺は立ち上がる。
怒りがこみ上げてるのに、足音はいつもより小さく、ドアを開けるのも静かで、閉めるのも静か。
ドアを閉めた瞬間、俺は走りだす。静香先輩の家に向かってだ。
階段をおり、前に通った道を走る。
「誠に申し訳ありませんが、如月陰様。ここで死んでもらいます」
俺の前には三人の黒ずくめの男がいる、身長は全員180cmはあるだろうか体格はとてもいい。すぐさま、三人のうちの二人が襲ってくる。
「覚悟しろ、炎闇極―――」
「邪魔だ…」
何かをつくりだそうとしてる男に顔面に拳をくらわせ、そのまま地面に叩き落とす。地面に当たった衝撃で浮かぶ男の頭を持ち地面に叩き落とす。後頭部から血が大量にでている、瀕死の状態になっているだろう。
俺は隣の男に目をやると、少し男は退いたがすぐ、構えに入る。
「雷拳、炎拳」
男の右手は炎が包まれ、左手は雷を帯びた。
男は右手で俺の顔面を殴ろうとするが、俺は男の腕を掴み、間接の部分を明らかにおかしな方向へと曲げ、そのまま一本背負いを放つ。男は気絶した。
「くそっ…水龍!風龍!」
三人目の男の頭の上に水でできた全長10mはある水龍をつくりだす。風龍は全長5mだが、周りに風でできた刃が浮かんでいる。
「いけ!」
男の合図と共に二匹の龍が襲ってくる。俺の魔術では防ぎきれない。
「あたしと手をつないで」
紅の言うとおり、俺は紅と手をつなぐと手錠が少しずつ赤くなり、鎖が一気に赤く染まる。それと同時に紅が刃が赤く、鍔は金色、柄は赤で鎖が鍔につながっていて長さ2mの真紅の日本刀になっていた。
真紅の日本刀の柄を両手で持ち、脇の横で構える。そして、二匹の龍が口をあけて俺を食い殺そうとする。俺と龍の距離が1m以内に入る。
「「一閃…」」
俺の声が少し重なって聞こえる。俺と紅の声だ。
残ったのは俺と真紅の日本刀と男のみとなった。
真紅の日本刀で二匹の龍は斬っていない、吸ったといったほうが正しい。男は何があったのか把握しきれない様子だ。
真紅の日本刀を両手で持ち、太ももの横に下げながら男に向かって走った。
「よく分からんがっ!闇極壁!」
「「残念だ…」」
真紅の日本刀を振り上げる。闇極壁が無くなり、男は右足の付け根から左肩までに深い傷を負った。男は膝が折れ、地面に倒れこんだ。