第14話Before Christmas(クリスマスの前に)
金髪の男は俺の茶封筒をとり、中身を見た。そして、俺の足元に投げた。
「それで?俺ももらってるし、それが特待生の最高なんだよ」
すると金髪の男は俺と同じ茶封筒をカバンから取り出して、俺に見せつける。うぜぇ。
「あぁ、はいはい分かりましたよ」
俺は茶封筒を取り上げ席に座った。
「やあやあ、どうしたの?陰君に秀君、険悪なムードが漂ってるけど」
望美が教室に入ってくるなり俺たちに話しかけた。
「別になんでもないよ」
金髪の男が前に見せた笑顔を望美に見せながら言った。
「そうなんだ、私の早とちりだったみたい。ごめんね~」
そう言いながら望美は俺が座ってる列の一番前の席に座った。その後からどんどんと生徒が入ってきた。
新しい高校生活なので、知らない人ばっかいた。教室はやけに静かであったが、この静けさをある女がやぶった。
「生徒諸君!私はこのクラスの担任になった荒田実神だ。よろしくな」
元気活発と思うのが普通だが、俺にはただの馬鹿に見えた。
「なんだ、なんだこんなしけた雰囲気じゃ、高校生活は楽しめないぞ~」
訂正をする、俺に似ている。
この実神先生の問いかけに一部の人は首を縦に振ったり、少し苦笑いをする人もいた。
「先生、何もしないのなら帰らせてください」
金髪の男…たしか秀って言ってたか。秀はめんどくさそうに言った。
「だめだよ、これから自己紹介をするんだから」
秀は一つため息をして席に座った。
「さあ、自己紹介といこう!」
実神先生が片手を挙げて言った。
出席番号が若い順から自己紹介をしていき、なにも起きずに全員が終わった。
秀の本名は花道秀という名前だった。
そのまま、実神先生の面白おかしな出生を喋りだし、クラスの雰囲気がなんとなくよくなった気がしたが
秀だけは無関心のようで無表情だった。
その後は連絡事項を聞かされ、寮の鍵をもらい解散となった。
寮に入り、眺めた後荷物を片付け始める。普通の家にある個室をひとまわり大きくしたぐらいの広さで、
台所、便所、風呂までもがついている。
少し浮かれ気味で荷物を片付けていると寮のチャイムが鳴った。こんなときに誰だろう?と思いながら扉
をあけると秀がいた。
「お前も特待生っていうことは強いんだよな?」
「まぁな、俺は強いぞ」
あぁ、嘘ついちゃった。いや~秀があまりにもうざかったもんで。少し反省。
「じゃあ俺と戦ってみろよ」
うわー、こいつ不良なんじゃね?古い時代のなんか俺がテッペンになるとか言ってそうじゃね。
「いやに決まってんだろ」
無駄な体力は使いたくないし、喧嘩をして得するものは無い。
「負けるのが恐いのか」
これもこれで古い挑発だな~、少し可愛く見えてきてしまった。
「お前、話しきいてんのか?」
かなりご立腹の様子だ。
「得する事がねぇからやらん」
「そんじゃあ、俺がまけたらこれからお前に敬語で様付けで名前を言ってやる」
まぁ、いっか。勝ったらこれからの高校生活が楽しくなりそうだ。
「のってやる」
▽▲▽▲▽
「それで、どうなったの?」
目を輝かせながら紅が俺に言ってくる。
「あれから、裏庭に行ったんだけど途中までは秀の方が圧倒的だったんだが、俺は急に意識が無くなって
気がついたら秀が傷だらけになっていたんだ。まぁ最後は俺が負けたんだけど、あれから俺のことを面白い奴と認識して話しかけてきたんだ。それから友達になったというわけだ」
「へ~面白いね~」
いつから、紅に教えてたんだっけ?
「手錠の事を忘れないでね~」
そうか、心の中を見られていたのか。もうなんなんだよ、この手錠。
一つため息をした後、時計を見ると午後一時だった。秀は彼女とだし、静香先輩はきっと龍刃先輩とだし
、望実はなにやってんだろ?
電話を掛けてみると三回目のコールででてくれた。
『陰君、どうかしたの?』
「今、お前は何してんのかな~?とか思って」
『はっはっは…むなしく寮で一人ですよ。いっそのこと一緒に出かけちゃう?』
「おお!いいなそれ!一緒に行くか!」
『………うえっ!?え!?本当に?』
「お前から言い出してきたんだろ。一人でなんて悲しいからよ」
『わ、分かった。す、すぐ準備するから駅前にしゅ、集合ということで』
「おう、またな」