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彼女 (side:香織)

「利奈を可愛くしてあげる」


私は利奈の柔らかい髪を手に取った。


この学校で、“松本 利奈” という名前を見た時は驚いた。

まさか、あの彼女が翔慶学院から離れることはないと思っていたから。


彼女は私が憧れていた選手だ。


「利奈、ここのサイドを編み込みにしてもいい?」


「ん」


利奈は眠そうだ。


心地良さそうに目を閉じている。



自分で言うのもおかしいが、世間から私は“生粋のお嬢様“だとか“深窓の令嬢”などと言われている。それは、私の父と母の出自が言わせている事柄で、私自身はあまり関係ないと思っている。

こう見えても運動神経が良い私は、中学2年の時に陸上部の助っ人として競技会の地区予選に出場した。

周囲は、深窓の令嬢であるべき私が競技会に出場することに渋い顔をしていたけれど・・・





競技会の会場に彼女はいた。



『なんて、綺麗に飛ぶ人なんだろう』



高跳びの競技に出た彼女を見てそう思った。



スラリとした体つきの彼女は私の目の前で地面を蹴り、軽やかに飛び上がった。



セミロングの髪が彼女の顔の周りで揺れ、しなやかな体はバーの上を越えてゆっくりとマットに落ちた。



綺麗だった。



周囲から歓声が上がって、彼女はギャラリーに向かって軽く手を上げて答えていた。


力強くて美しいジャンプだった。


一目で私は彼女のファンになった。




去年の秋、利奈が怪我をしたと聞いて驚いた。


中学生活最後の大会を直前にしての“靭帯断裂”という大怪我。

周囲は、松本利奈という選手が終わってしまったと嘆いた。



だから、入学式で彼女を見た時に本当に驚いた。


彼女が本当にあの松本利奈かと目を疑った。




私が知っている彼女は、可愛らしくて、魅力的な笑顔が絶えなくて、いつも周りに仲間がいて・・華やかなオーラが感じられる人だったのに。




今の彼女はあの頃と正反対だ。



彼女は何を思ってあの頃と正反対の自分を演じているのだろう?


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