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3人の声  作者: カトーSOS


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3/4

りく

夕暮れの帰り道。

今日も、いつも通り三人で歩いている。


みおが真ん中で、右にゆう、左に俺。

この並びが一番落ち着く。

誰が決めたわけでもないのに、気づけばそうなっていた。


「今日どうする?」

「コンビニ寄る?」

「また?」


同じ会話。

同じテンポ。

赤信号で、三人同時に足を止める。


楽だ。

考えなくていい。

三人でいれば、それだけで関係は完成している。


交差点の少し手前で、俺は足を止める。

ポケットの中を探って、スマホがないことに気づく。


――あ、忘れた。


でも、焦りはない。

ただの置き忘れだ。


「先、行ってて」


二人が同時に振り返る。


「え、なんで?」

「ちょっと用事」


そう言って軽く手を振る。

二人きりにすることに、何の不安もない。


三人の時間は、まだ続く。

そう信じて疑っていない。


俺は学校へ引き返す。

走るほどでもない距離を、少し早足で戻る。


教室の机の上に、スマホはちゃんと置いてあった。

それを掴んで、椅子に腰を下ろす。


――今頃、何話してるかな。


どうでもいい冗談。

いつもの軽い会話。

少ししたら三人に戻る。


それだけのはずだった。


スマホが鳴る。


画面に表示された名前を見て、

一瞬、思考が止まる。


ゆう、からだ。


通話に出ると、間があった。

向こうも、言葉を選んでいるのが分かる。


「……俺さ」


低い声で、ゆうが言う。


「みおに、告った」


一瞬、音が消える。


風の音も、遠くのチャイムも、

全部が一拍遅れる。


「……そうか」


自分の声が、思ったより落ち着いていて驚く。


「ごめん」

「我慢できんかった」


電話越しの沈黙が、重い。


――ああ、そういうことか。


今日、俺が二人を残した理由。

夕暮れ。

帰り道。


全部、あとから繋がる。


「……わかってるって」


言いながら、息を整える。


「じゃあ、俺も告るな」


自分でも、強がりだと分かる。

でも、逃げる気はなかった。


少し間があって、ゆうが笑う。


「頑張れよ」


その言い方が、あまりにもゆうで、

思わず俺も笑ってしまう。


「なんだそれ」


「いや、でもさ……」

「サンキュー」


それ以上は、何も言わない。

言えない。


電話を切って、スマホを膝の上に置く。


三人でいる時間が、

今この瞬間に、静かに終わった気がした。




その夜。

ベッドに寝転んで、天井を見ていると、

スマホが震える。


みおからのLINEだ。


「ちょっと、相談があるんだけど」


胸が、小さく鳴る。


「何?」


「相談乗ってほしいの」


「悩み事?」


少し間が空いて、

文字が打たれては消えるのが見える。


「んー、というか、困ったかな」


……ああ。


分かってしまう自分が、少し嫌だ。


「じゃあ、帰りにスタバ?」


「スタバ高いよ。ファミレスのドリンクバーでいい」


「わかった。ガストな」


それだけで、約束は決まる。


ガストに着くと、俺の方が先だった。

ドリンクバーでコーラを取って、席に戻る。


みおが来る。


「待った?」


「待ったけど、待ってない」


「どっちだよ」


いつものやり取り。

でも、空気はどこか違う。


グラスの氷が溶け始めた頃、

みおが小さく息を吸う。


「あのさ。たぶん、ゆうに告られた」


「たぶん?」


「モテるんだから彼女作ったら?って言ったら、

誰でもいいわけじゃないって言われて。

私も誰でもいいわけじゃないしって返したら、

俺じゃダメか?って」


一気に話してから、みおは俺を見る。


「これって、告白だよね」


小さく、ため息が出る。


「……はぁ。その確認から?」


みおが真顔になる。


「そうだよ……」


少し沈黙が落ちる。


「どうしようか。困った」


「困ってるのか?」


みおは、うなずく。


「そんなふうに思ってなかった。

ずっと、友だちだと思ってたから……」


俺は少し黙ってから、言う。


「そうか。ごめん、先に謝っておく」


「なんで、りくが謝るの?」


逃げずに、言う。


「俺も、お前を困らせる」


「えっ?」


視線を逸らさずに続ける。


「俺も、お前のこと好きだ。」

「付き合ってほしい」


言葉が落ちる。

もう、戻れない。


その瞬間、

三人で守ってきた均衡が、音もなく崩れる。


翌日。


放課後。

校門の前で、みおを見かける。


今日は、一人だ。


声をかける理由は、もうある。

でも、足が止まる。


みおは、誰とも並ばずに歩き出す。


夕暮れの帰り道。

影は、一つだけ。


三人で歩いた道なのに、

もう並ぶ場所はない。


それでも俺は、

あの時間が楽しかったことだけは、

嘘にしない。


夜だけが、静かに全部を知っている。

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